あなたは覚えているだろうか。

有り余る承認欲求のせいで、ただの主婦ではいられない二子玉川妻たちの戦いを。

「サロネーゼ」と呼ばれる、自宅で優雅に“サロン”を開く妻たち。空前の習い事ブームにより脚光を浴びた彼女たちだが、それも数年前までの話。

東京では早くも旬を過ぎ、サロネーゼたちの存在感は急速に薄まっている。

それでも未だ “何者か”になることを求めてもがき続ける妻たちの近況を覗いてみよう。

前回、怪しげなカウンセリングとオイルにハマるバツイチ子持ち主婦・松浦梨沙を紹介した。

そんな彼女が傾倒しているのは、プリンセスLOVEアカデミーという謎のオンラインサロンを主宰するセイラという女である。

彼女は一体、何者なのか?




皆さんが私のことをどう思っているか。

そんなこと、私だって知っていますよ。

どうせ、「怪しい」とか「詐欺だ」とか仰っているんでしょう?

…まあ、理解していただかなくても構いません。そういう方々とはきっと一生わかり合えないと思いますし、お互いに交じり合う必要のない人生だったということです。

けれどうちに来ているプリンセスたちは…あ、“プリンセスLOVEアカデミー”の会員たちは、私のことを心の底から必要としています。

そして私も、心の底から彼女たちの力になりたいと願っている。

プリンセスたちには、ぜひ“愛され体質”になって幸せな結婚を手に入れて欲しいんです。

一部のフェミニストたちは、女という性が男性に“選ばれる”存在であることを否定したり、自立することこそが女の幸福に繋がる、などと声高に叫んでいますけど…それって結局、理想論でしょう?

仕事ができて、男性以上に稼ぐ力のある女性は話が別ですが、実際はほとんどの女が男性より収入が低いわけで。

まだまだ男社会の日本で生涯独身を貫き、それでも不自由なく人生を送れる女なんて、やはり少数派なんですよ。

それなら“愛され体質”を手に入れ、経済力のある男性に守られて生きていった方が絶対にいい。

そうそう、思い出したわ。

私がこのような信念を持つに至るには、ある“きっかけ”があったんです。

それは、ある女のブログを見つけたことでした。


セイラが見つけたのは誰のブログ?そして、プリンセスLOVEアカデミーを設立するに至った経緯とは


“結婚”で人生を変えた女


あれは確か…3年前だったかしら。

当時、私はまだ30歳手前の独身で、地元・川崎の小さな法律事務所で事務の仕事をしていました。

ある日、お昼休みにネットサーフィンをしていて…そしたらとあるブログで、永井由美の名前を見つけたんです。

永井由美と私は、小・中学校の同級生。中学時代は同じクラスになったこともある、よく遊ぶ仲間の一人でした。

勉強は由美の方ができたけど、当時、男子から人気があったのは私のほう。

由美も可愛らしい顔立ちではあったと思うけど…大人しいっていうか、地味で。…対する私は、10代の頃から妙な色気があるってよく言われていて。仲間内で最初に彼氏ができたのも、私。

高校生になり由美が進学校に進んでからはずっと疎遠だったし、私自身も事務員時代はSNSもほとんどしていなかったから、彼女の近況について、何も知らなかった。

だから驚いたんです。

ブログに登場する由美が、記憶の中の彼女とまるで違っていたから。それはもう、別人にでもなったんじゃないかってくらい。

由美って、主役になれない側の女だったはず。それなのにブログの中で彼女はサロネーゼを名乗り、たくさんの生徒に囲まれてポーセラーツ?とかいうお遊びのようなお稽古を教えている。

さらには自らが主役となり、二子玉川のレストランを貸し切って、周年パーティーを開催していたりもする。

彼女はどうやって変わったの...?

気づけば私は由美のブログを、過去に遡って隅々まで読んでいました。お昼休みはとっくに終わっていたけど、その日は先生が裁判所で不在でしたから、おそらく全ての記事を読んだんじゃないかしら。

それで、気づいたんです。

由美が変わったのは間違いなく、商社マンらしい夫と結婚した時からだってことに。

なぜなら結婚するまでは彼女、ただの損保OLだったわけでしょう。川崎の実家から丸の内まで通勤していたってブログにも書いてあったわ。

それが、商社マンの夫と結婚し、二子玉川のタワマン妻となり、脱OLをして…あれよあれよという間にサロネーゼへと転身した。

それらは全部、彼女が稼ぎのある夫と結婚したからできたこと。

彼女のブログを読み終えた私は、川崎にある小さな法律事務所の小さなデスクで、ある決意を固めていました。

ずるずると関係を続けていた若い美容師とは、すぐに別れる。…そして、ちょうど事務所に入所してきたばかりの新米弁護士(28歳)と結婚するって。

新米弁護士の彼…現在の夫ですが、勉強しかしてこなかったんだろうなぁっていう、明らかに女性にモテなさそうな人で。

女性に免疫がないからでしょうけど、アシスタントの私のことを明らかに意識しているのがバレバレだったんです。

だから私の方から、誘ってあげました。

結婚を仄めかした時も「弁護士の僕とアシスタントの君となら、公私ともに助け合っていけるに違いない」ってものすごい前のめりで(笑)。

そう、結婚なんて「する」と決めればいつでもできるんです。

このことは私、プリンセスLOVEアカデミーの講演でもいつもお話しています。

だけど私の真意を理解してくれるのはいつも、多くて2割って感じですね。あとの8割はおそらく…都合のいい解釈をして、自分の聞きたい話だけを聞いているのでしょう。

…まあ、そういう女性が多いからこそ、私のビジネスが成立しているわけですが。


由美のブログをきっかけに、新米弁護士と結婚を決めたセイラ。そして始まった結婚生活が、彼女の承認欲求を爆発させることになる…。


カウンセラー・セイラの誕生


夫と結婚してから、私の生活はガラリと変わりました。

これは付き合った後に知ったんですが、彼の父親も弁護士で、虎ノ門にそこそこ大きな事務所を構えていたんです。

彼は所長と知り合いだったとかで、イソ弁として川崎の事務所に来たわけですが、2年が経てば、父親が経営する事務所に戻りいずれ跡取りとなることが決まっていた。

私は運が良かったんですね。

けれど私の考えでは、運を引き寄せるのも実力のうち。

“こういう自分になりたい”という明確なイメージがあったからこそ、夫のような優良物件にアンテナが向いたわけですから。

結婚を機に、私は専業主婦になりましたが、ある時思いついたんです。

私も自分で何かやってみたい。そうだ、永井由美のようにブログを始めてみようって。

それで、自分自身が今のような幸せを手にするまでの経緯を、ブログに書き溜めていったんです。言ってみれば、自叙伝のようなものですね。

そうしたらいつの間にか、読者の方から「相談に乗って欲しい」「婚活のアドバイスが欲しい」と言われるようになって。

それが、カウンセラー・セイラ誕生のきっかけ。

…あ、セイラというのは本名ではありませんよ。ハンドルネームなんです。本名は、秘密。どこにも載せていません。

カウンセラーの仕事って、ただ話を聞いてあげる、前向きにさせてあげる、あるいは背中を押してあげる。こうして文字にしてしまうと、誰にでもできることのように思われるかもしれませんが、実際は違います。

深い悩みや不安を抱えている女性は、とても繊細で不安定。

ほんの小さな失言にも過敏に反応して心を閉ざしてしまうので、カウンセラーはどんな時も穏やかなオーラを放ち、柔らかな笑顔と言葉をかけ続けることが必要です。

そして、言葉や表情の端々から相談者の心の内を的確に察知し、さりげなく慰め、ポジティブな言葉をかけてあげる。

こういうことができるのは、卓越したコミュニケーション力と慈愛に満ちた精神を持つ者だけ。決して、誰にもできることなんかではないのです。

…これだけ説明してもまだ、私のビジネスを胡散臭いなどと仰るかしら?

まあ、それならそれでも構いません。

私は、私を頼ってくるプリンセスたちが一人でも存在する限り、カウンセリングやプリンセスLOVEアカデミーを続けていくつもり。

誰が何と言おうと、 女は“結婚”で人生を変えることができると信じているから。

永井由美や、私のように。

▶NEXT:10月8日 月曜更新予定
最終回:表でも裏でも様々な女の人生に影響を与えた女・永井由美。カメレオンのように変化し続ける彼女の現状とは?