ー女の市場価値は27歳がピーク、クリスマスケーキの如く30歳以上は需要ゼロなんて、昭和の話でしょ?ー

20代の女なんてまだまだヒヨッコ。真の“イイ女”も“モテ”も、30代で決まるのだ。

超リア充生活を送る理恵子・35歳は、若いだけの女には絶対に負けないと信じている。

周りを見渡せばハイスペ男ばかり、デート相手は後を絶たず、週10日あっても足りないかも?

しかし、お気に入りのデート相手・敦史が26歳のCA女を妊娠させたことをきっかけに災難が続く。

そんな中、7歳年下の美青年・光一にアプローチを受け、ついに交際をスタートさせた理恵子。しかし、光一のヤバい一面が徐々に明らかになっていく...。




-今から迎えに行きます-

深夜2時。問答無用でそう言い放った光一は、彼の自宅がある神泉から理恵子のいる青山まで、わずか20分程度で駆けつけた。

「えぇっ!?光一くん、迎えに来ちゃったんですか?やだぁ、理恵子さん愛されすぎ〜!」

一緒にいた後輩の麻美は楽しそうに悶えたが、ラフな部屋着のまま無表情で暗い道路に立ち尽くす光一を見た瞬間、彼女も只ならぬ気配を察し、理恵子と共に押し黙る。

「...理恵子さんは、僕が送ります。麻美さんのタクシーも捕まえますね」

28歳の美青年の冷たい表情と硬い声は、30越えの女たちの酔いを一気に冷ます。

「え...どしたの?光一くん、マジギレ...?」

麻美は気まずい空気を和ませようと、あえて冗談めいた言葉を口にしたようだ。だがその一言は、光一の怒りをさらに刺激してしまった。

「...女性が平日のこんな真夜中まで飲んで酔ってるなんて、正直驚きました。二人ともイイ大人なのに、健康のこととか、もう少し考えた方がいいんじゃないですか?」

年下男の思わぬ説教に、二人の女は叱られた子どものように小さくなるしか術がなかった。


徐々に明らかになる光一のヤバい本性。しかし、麻美の見解は...!?


バチ当たりな三十路超えの女たち


「麻美...、昨日は本当にごめんね」

翌日の仕事終わり、理恵子は昨晩の光一の非礼を詫びるため、麻布十番の『ピアットスズキ』に麻美を誘った。

ここは昔から、理恵子のお気に入りのイタリアンだ。




「気にしないでください〜!きっと光一くん、理恵子さんを心配してるだけですし...」

麻美は笑ってフォローしてくれるが、理恵子は内心、光一への不信感が育ちつつある。

昨晩はすっかり夜も更けていたため、とうとう光一を部屋に泊めることになった。

しかし、彼は不機嫌な表情を崩さぬまま気まずい状態でベッドインすることになり、理恵子は始終ビクビクしながら、ハッキリ言って散々な初夜になったのだ。

「そういう...問題なのかしら。何だか私、光一くんとはだんだん価値観が合わない気がして...」

「理恵子さんっ!!!」

本心を打ち明けようとすると、麻美は突然険しい顔で理恵子を制した。

「言いたいことは何となく分かりますが、それ以上は言っちゃダメです」

「え...?」

「三十路超えの女って理想が高くなるし、男性への許容範囲が狭くなるんです。恋人や結婚ができにくくなるのは年齢云々よりも、そういう柔軟性のなさ、頭の硬さの問題です」

麻美は理恵子を諭すように、真剣な口調で続ける。

「光一くんレベルのイケメンなんて滅多にお目にかかれないし、しかも広告マンで、理恵子さんにあんなにベタ惚れなんですよ?ちょっとくらい激しい面があってもいいじゃないですか。贅沢言ったらバチが当たりますっ!」

その熱い討論に、理恵子は何も言えなくなる。

けれど、たしかに麻美の言う通りかもしれないし、そういえば茜も同じようなことを言っていた。

自分も完璧ではないのに、相手の欠点を気にし過ぎたり、多くを求めてはいけない云々。

それに、光一とはまだ知り合って日も浅い。もちろん良い面もたくさんあるワケで、ネガティブな判断を下すのは気が早すぎるだろう。

「そう...ね。ありがとう、麻美。もう少し様子を見てみるわ」

そうして二人はいつも通り女子会を楽しんだが、理恵子が近くのワインバーへと二次会に誘うと、「まだ原稿が残ってるので」と、麻美にやんわり断わられてしまった。

何となく寂しい気持ちでスマホを手に取ると、代わりにそこには、今夜も理恵子の部屋に来たいという光一からのLINEが届いていた。


自由を謳歌する理恵子に、ついに光一が“同棲”を持ち掛けるが...!?


自由を愛する独身女と、保守的な若い男


それから光一は、少なくとも週の半分は理恵子の家に泊まりに来るようになった。

彼の家にも誘われるのだが、美容オタクの理恵子は如何せん荷物が多いし、シーツや枕などの寝具にも拘りがある。

さらに、朝は美容効果満点の手作りスムージーで目覚めたいため、わざわざ若い男の不便な家に赴くよりは、招いてしまった方が格段に楽なのだ。

そして光一も理恵子の上質な部屋に居心地の良さを感じているようで、二人はいつの間にか半同棲状態になっていた。

「俺、女の人とこんなに長くいるのは初めてかもしれない。でも、理恵子さんといるとすごく癒されるし、何の違和感もないよ。思い切って同棲してもいいかもね」

「えっ!?」

理恵子は思わず声が裏返る。

これほどベッタリ光一と過ごすのは、むしろ付き合いたての“ラブラブ期”特有のモノだと思っていた。よって、そろそろお泊まりも週1程度にしようと言うつもりだったのだ。




たしかに光一の言う通り、二人で過ごす時間は比較的平和だ。彼は男性にしては清潔感もあり、家を汚すこともなく、理恵子を気遣って家事や料理なども率先して手伝ってくれる。

だが本心を言うと、それはむしろ自分の城が侵食されていくような感覚があり、これまで散々自由に生きてきた理恵子は、一人の時間も恋しくなっていた。

それに、あれだけ毎晩のように飲み歩いていたにも関わらず、最近は仕事すら早く切り上げ、光一のために急いで帰宅している。

これが日常になろうものなら、さすがに身が持たない。

「同棲は...さすがに少し早いんじゃないかしら...」

理恵子はなるべく自然な微笑みを意識する。

「それに、私は締切前は残業も多くなるし、光一くんも、接待とか色々あるでしょう?お泊まりはゆっくり週末にした方が...」

「そうやって、俺がいないと新太郎さんとお鮨を食べに行ったり、朝まで呑んだくれたりするんですよね。理恵子さんは」

光一は突然低い声で、吐き捨てるように言った。

理恵子が驚いて顔を上げると、彼は苦しそうに顔を歪ませている。

「ちょ、ちょっと...誤解しないで。新太郎とは何でもないのよ。それに麻美と私はイイ飲み友達なだけで...」

「でも、俺は心配なんです。自分の彼女が他の男と二人きりで食事に行ったり、連絡も取れずに真夜中に酔っ払ってるなんて」

「...ごめん...なさい」

もちろん光一の気持ちは分かるし、疑われるような行動をしたのは理恵子自身だ。

だが理恵子は自分が悪いとは思いながらも、彼の発言にどうも納得がいかず、頭の中には妙な警戒音が響く。

「それに...理恵子さん。俺は大人の理恵子さんを素敵だと思ってるし尊敬してます。でも...もう35歳ですよ?仕事や飲みより、もっと考えるべきことがありませんか?」

「え...」

「...せっかくの機会なので、ハッキリ言いますね。理恵子さん、子ども産む気、ありますか?」

-こ...ども...?

理恵子はこれまで、35歳の独身であることで散々な目に遭い、また幾度も嫌味を投げられてきた。よってある程度のダメージには、すでに慣れているはずだった。

しかし、どうしてだろう。

自分を愛する恋人が発したこの現実的な問いは、今まで経験したどんなトラブルよりも理恵子の心を深くエグったのだった。

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