福田正博フォーメーション進化論

 森保一監督の代表監督としての初陣だった9月のコスタリカ戦は、新しい選手たちが溌剌としたプレーを見せ、前途の明るさを感じさせてくれた。森保ジャパンは10月12日にパナマと、同16日にはウルグアイとの国際親善試合に臨むが、この2試合でどういうステップを踏むのかに注目している。


森保監督が10月の2試合にどんなメンバーを招集するのか注目が集まる日本代表

 コスタリカ戦では、3-0での勝利という最高のスタートを切れたわけだが、結果以上に選手の組み合わせの基準を手にできたことは、森保監督にとっては意味があったのではないかと思う。準備期間が十分ではなくても、連動性やコンビネーションの高さを発揮した。これが今後、「各世代の融合」を進めていくなかで、基準になってくる。

 はっきりした基準があれば、新たな選手を起用する時、個の能力が高い選手を加えようとしても、チームとして機能しなくなるのなら、その選手の起用が難しいことを示すことができるだろう。

 単純にうまい選手を順番に11人起用したら、チーム力が向上するのなら話は早いが、サッカーというスポーツは、必ずしもそうではない。選手の組み合わせが重要であり、選手の側からすれば、日本代表での生き残りを目指すうえで、森保監督の求める基準に照らし合わせて自身のプレーを見つめ直し、必要ならば変えなくてはならないと認識することができる。

 森保監督が、10月、11月にどういった選手を招集し、前回の試合からどれだけチーム力を高められるのか。プレーの特長だけではなく、選手のメンタリティやパーソナリティといったものも、選手の組み合わせには影響をもたらす。そのことを考えると、W杯ロシア大会の主力をつとめた海外組を、どれくらい招集するのかに注目している。

 W杯ロシアの主力を招集するには、彼らの所属チームで置かれている状況によるところが大きい。大迫勇也(ブレーメン)のように監督からの信頼が厚く、代表戦でチームを離れたとしてもポジションを失う不安がない選手は呼んでもらいたいと思う。

 大迫は前線でボールを収められるし、スペースへの動き出しも秀でている。自らシュートに行くだけではなく、まわりの選手を使うこともうまい。その大迫が若い世代の選手たちとどういうプレーを見せてくれるのか楽しみで、大迫を追いかける選手たちへの刺激という意味でも、ぜひ招集してもらいたい。

 今季からベティスでプレーしている乾貴士は、危機感を覚えているのではないかと思う。W杯ロシア後に「次のW杯もメンバー入りして出場したい」と発言をしていたが、森保ジャパンの初戦での攻撃的な選手たちの活躍を見たら、悠長なことを言っていられない気持ちになっているはずだ。

 乾が得意にする左サイドでは中島翔哉(ポルティモネンセ)が存在感を示しているほか、原口元気(ハノーファー)、宇佐美貴史(デュッセルドルフ)らもいる。今季の彼らは所属チームでの存在感を確固たるものにして、日本代表での左サイドの争いを高いレベルに押し上げてくれることを期待している。

 攻撃的なポジションの選手は中島や、堂安律(フローニンゲン)、南野拓実(ザルツブルク)など、若い世代が台頭して活性化しているが、中盤でも同じことが言える。

 守備的MFでは、コスタリカ戦で先発した遠藤航(シント・トロイデン)のほか、ここには大島僚太(川崎フロンターレ)を筆頭に、山口蛍(セレッソ大阪)や三竿健斗(鹿島アントラーズ)がいて、井手口陽介(グロイター・フュルト)もいる。とくに井手口は、今季からブンデスリーガ2部のグロイター・フュルトでプレーしているが、もう一度代表に戻ってきてもらいたい選手だ。

 ただ、気がかりもある。DFはW杯ロシア組の力がまだまだ必要なことは明らかで、とくに4バックの場合、現状ではディフェンスラインには物足りなさがあるということだ。コスタリカ戦では右SBに室屋成(FC東京)、左SBに佐々木翔(サンフレッチェ広島)が起用されたが、彼らは代表経験が浅いことで慎重になったということを差し引いても、もっとアグレッシブさを見せてもらいたかった。

 現状では日本代表の右SBのファーストチョイスは酒井宏樹(マルセイユ)だが、その座を争うのは室屋が最有力候補だ。今季の室屋はW杯前から調子がよく、そのパフォーマンスは日本代表入りしても不思議ではないほどだった。これはFC東京を長谷川健太監督が指揮するようになり、両サイドバックにアップダウンを求めるため、彼のよさである運動量が生きたからだ。

 ただし、現状のままでは酒井宏樹を上回るのは厳しい。守備でのたくましさや激しさは、まだまだ酒井の域にはないからだ。室屋には、国際試合を経験しながら、粘り強い守備や、守備時の空中戦での強さを身に着けて、2段も3段もステップアップしてもらいたい。

 一方、左サイドバックは現状では長友佑都(ガラタサライ)以外に目ぼしい人材がいない。「いい選手だ」と思う選手はいるが、やはり左利きがほしい。4バックの左SBは左利きでなければ、攻守に幅をつくりにくいからだ。そうしたなか、私が代表に推したいのが横浜F・マリノスの山中亮輔だ。守備面の課題はあるが、彼の左足は特別な力がある。左SBながら前線に絡んだり、中盤でボールを捌いたりと能力は高い。長友佑都も若い頃は守備と攻撃のバランスがいまひとつの頃があり、代表で多くの場数を踏んで成長した。それだけに、山中の抜擢を期待している。

 センターバックは、現時点では吉田麻也(サウサンプトン)と昌子源(鹿島)の組み合わせがベストな選択になる。ただ、このポジションは攻撃陣とは異なり、相手へのリアクションでの対応力が求められる。W杯ロシア大会のベルギー戦がそうだったように、相手は日本の弱みを突いてくる。そのため、相手が高さを生かして攻撃してくれば、高さで跳ね返さなければならないし、パワーで押し込んでくれば、パワーで押し返さなければいけない。

 それができるCBを育てることが日本代表の長年のテーマでもあるが、現在の日本サッカーには188cmの冨安健洋(シント・トロイデン)、186cmの板倉滉(ベガルタ仙台)、189cmの立田悠悟(清水エスパルス)、186cmの植田直通(サークル・ブルッヘ)といった素材が揃っている。彼らが経験を積んで成長していくことに期待したい。

 森保監督のなかでは、10月や11月の親善試合も若手を登用しながら、チームづくりを進めていくと思うが、来年1月にはアジアカップが控えている。それだけに、私は若い選手たちでチームをつくりながら、少しずつ世代の融合を試みてもいいと思う。

 そこでのトライアル&エラーから得られる情報は、その先にあるW杯予選に向けたチームづくりに役立つのは間違いない。現役時代から気遣いや心配りができ、バランス感覚にすぐれた森保監督が、どういった戦略で代表を強化していくのかをしっかり見届けたい。