コンタクト洗浄液で血液汚れが落とせる?

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「衣類に付いた血液の汚れをコンタクトレンズの洗浄液で洗ったらきれいに落ちた」という体験談が、SNS上で注目を集めています。

「これは画期的」「本当に落ちるの?」「試してみたい」「靴にも使えるかな」など、さまざまな声が上がっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。東京・旗の台にある三共クリーニングの田村嘉浩社長に聞きました。

タンパク質のバリアーを酵素が分解

Q.そもそも、衣類(布製品)に付着した血液汚れはなぜ落ちにくいのでしょうか。

田村さん「実は、血液は付着したばかり(1日程度)で少量なら、水で簡単に落ちます。乾燥したり、時間がたったりすると落ちにくくなるのです。

血液は、赤血球・白血球・血小板などの血球成分と、タンパク質や電解質などを含んだ液体の血しょう成分でできています。このタンパク質が乾燥や熱で固まると、ゆで卵の白身(タンパク質)のようになり、汚れの表面に水を浸透させないバリアーを張ります。こうして、水や洗剤、漂白剤などが浸透しなくなり、落ちにくくなるのです」

Q.「コンタクトレンズの洗浄液で血液汚れが落ちる」のは事実でしょうか。

田村さん「私は実際に行ったことはありませんが、事実だと思います。保存液ではなく洗浄液には、タンパク質の分解酵素が主成分に含まれているからです。家庭にある身近なもので、そのような成分が含まれているのが洗浄液であるということでしょう。

コンタクトに付着する汚れ(目やになど)の多くはタンパク質です。洗浄液は、これを水に溶かして洗浄するために使用します。人間から出る体液や涙、鼻水、血液、尿などは、色や成分は多少違えどタンパク質が含まれています。タンパク分解酵素で『汚れの固まったタンパク質のバリアー』を分解し、水に溶けやすい状態にすることで、水と洗剤、漂白剤が効果を発揮できるという仕組みです。

ただし、コンタクトの洗浄に使用されるタンパク分解酵素は、分解力が強いものではありません。そのため、血液が付着して時間がたったものには効かない場合があります」

Q.血液以外に、コンタクトレンズの洗浄液で落とせる汚れはありますか。

田村さん「人間の体から出る分泌物や汗、尿にも効果があります。ただし、タンパク質だけではなくさまざまな成分が混じっているため、洗剤や漂白剤、台所用中性洗剤なども併用してください。タンパク質を含んだ食べ物汚れにも効果がありますが、多くは油も含まれているので、まずは台所用中性洗剤を使用し、その後、落ちないようであれば洗浄液を使用してください」

シルクやウールには不向き

Q.洗浄液を使って汚れを落とすための具体的な方法や、注意点について教えてください。

田村さん「一度に多くの量を使用することはありません。汚れを湿らせる程度の量を使用し、30分程度放置してから部分すすぎをします。酵素は分解するのに時間がかかるため、汚れ具合にもよりますが、塗布したら、酵素が働くまでしばらく放置する必要があります。塗布後すぐにすすいでしまうと、効果を発揮しないうちに水ですすぎ取ってしまうことになります。

落ちなければ、タンパク質のバリアーは何層にもなっている可能性があるため、落ちるまで2〜3回繰り返しましょう。それでも落ちない場合、液体酸素系漂白剤を原液で塗布し、10分程度放置してすすぐと効果が上がります。

なお、シルクやウールなどの衣類は、糸自体がタンパク質の塊です。使用方法を誤ると損傷・劣化してしまうので注意してください」

Q.その他、血液汚れを効果的に落とせる方法やアイテムはありますか。

田村さん「付着したばかりの血液汚れは、まず冷水で洗い流してみましょう。または、30度程度のぬるま湯も効果的です。この時、温度が40度を超えると、逆に血液中タンパク成分が固まってしまう可能性があるので注意してください。時間がたった血液汚れは、先述の通り、液体酸素系漂白剤を使用しましょう」

記者が実際に試してみた

 オトナンサー編集部の記者が、数カ月前に白いベッドカバーについてしまった血液の汚れをコンタクトレンズ洗浄液で落とせるのか、試してみました。

 今回使ったのは、保存液と一体になったタイプの洗浄液です。汚れ部分に液を垂らして、放置。15分程で染みがぼんやりとしてきました。洗い流して、もう一度同じ行程を繰り返しましたが、2度目はそれほど変化が見られなかったため、軽くすすいで洗濯機へ。あえて漂白剤は入れず、通常の洗剤のみで洗濯しました。

 乾かすと、どこに汚れがあったのかわからないほど真っ白に! 数カ月たった血液汚れでも効果を実感できました。方法や効果は汚れ具合によって変わるようですが、お手元に血液が付いてしまった衣類や布製品、そして、コンタクトレンズ洗浄液がある方は、ぜひ一度お試しください。