第1ターミナル4階国際線チェックイン(香港エクスプレス)(筆者撮影)

9月4日に近畿地方を襲った超大型の台風21号。その直撃により大きなダメージを受けた関西国際空港(大阪府泉佐野市)の復旧が、ようやく本格化してきた。

南海電鉄とJR西日本は9月18日、台風21号の影響を受けて運休していた「りんくうタウン―関西空港」駅の区間で鉄道の運転を全面再開した。強烈な風によって連絡橋にぶつかったタンカーによって損傷していた線路の修理には、当初は1カ月程度を要するというような見方も一部であったが、2週間で復旧にこぎつけたのは、関係各所の多大な努力があったに違いない。

ここまでの状況と今後の見通し

関空をめぐるここまでの状況と今後の見通しを以下に整理してみよう。

9月4日(火):台風21号が直撃。滑走路や第1ターミナル、貨物エリアなどが浸水し、ターミナル内が停電。タンカーが連絡橋に衝突したことで台風通過後も関空島は孤立状態に

5日(水):約7000人の空港滞留者の脱出が始まる。交互通行の形で損傷のなかった連絡橋の片側を使い、連絡橋の走行を緊急車両などに限って再開。神戸空港への高速船および南海電鉄泉佐野駅へのシャトルバスは大混雑で10時間以上待たされたケースもあった。深夜に脱出希望者全員が島外へ出た

7日(金):第2ターミナルとB滑走路を使ってピーチ・アビエーションとJAL(日本航空)が一部便で運航を再開(翌日より全日本空輸<ANA>も運航再開)

14日(金):第1ターミナルが部分再開し、A滑走路も使用可能に。国内航空会社に加えて、海外の航空会社の運航も徐々に再開した

18日(火):南海電鉄・JR西日本が運休していたりんくうタウン駅と関空駅の区間で運転を再開。定期便の運航も通常の50%までに回復

21日(金):第1ターミナルの全面復旧により、定期便全便の運航を受け入れられる状態に戻る予定

来年のゴールデンウィーク前後:連絡橋完全復旧を予定。ただし、対岸から関空までは2車線化になる予定で走行車両の緩和が検討される

筆者は、台風で関空の空港機能が麻痺したのち、9月9日、15日、18日と3回にわたって現地で取材を続けてきた。日を追うごとに関空の機能は着実に回復してきている。

21日には、関空の航空便は台風前の水準に戻る

18日は筆者も難波駅から南海電鉄を使って関空へ向かった。連絡橋の橋げたが取り外されている区間で徐行運転がなされたが、ほぼダイヤ通りに関西空港駅に到着できた。スーツケースを持った多くの旅行者が、関西空港駅の改札口から第1ターミナル、第2ターミナルへのシャトルバスに向かう姿が見られた。

関空到着後に第1ターミナルへ向かった。9日時点では停電が続き、空調も使えず、蒸し風呂状態。第1ターミナルからの運航が再開された翌日の15日時点では、大部分の停電が解消されていたものの、店舗の営業は半分程度で欠航便も多かったことから利用者は少なかった。

18日は、152店舗中128店舗(約84%)が営業を再開。損傷を受けて最後まで停電が続いていた第1ターミナルの北側の電気(配電機)も18日夕方より復電を始め、停電が続いている第1ターミナル2階のマクドナルドとTSUTAYA付近も早急に電気が入る見通しを明らかにするなど再開へ向けた準備が進む。21日には、ほとんどの店舗が営業を再開する見込みだ。

第1ターミナルが完全閉鎖されていた9日は、日中でも人はまばらでゴーストタウンのようだったが、18日にはずいぶんと活気が戻っている印象だった。

9月9日、15日、18日の3回ともに、筆者は取材後に羽田行きの飛行機で東京へ戻った。9日の羽田行きはJAL便のみのうえ、通常と異なる第2ターミナルからの出発でいつもとは違う導線だった。その後、15・18日は便数が限られる中でも、ANA便で飛行機に乗れた。

定期便の運航も徐々に戻っており、9月19日は定期便全体の56%にあたる266便(発着)まで回復し、損傷が激しかった第1ターミナル北側についても21日(金)より再開する。

運営する関西エアポートは18日時点で、全便の受け入れ体制が整ったことを明らかにしている。海外航空会社の一部で欠航を決めている便もあるものの、ANAやJAL、ピーチは21日以降、全便での運航体制に戻る。

連絡橋の道路を管理するNEXCO西日本は18日、タンカー衝突で損傷し、橋げたが撤去された連絡橋の完全修復が、来年(2019年)のゴールデンウィークあたりになると見通しと発表した。

現在は損傷しなかった片側3車線の道路を使っての対面通行となっている。関西エアポートの西尾裕専務執行役員は「段階的に入場できる車両制限の緩和も交通状況の確認を踏まえ、NEXCO西日本や警察の判断も含めて検討していきたい」と話している。

18日に鉄道が再開し、21日には第1ターミナルも全面的に使えるようになることで、関空の航空便は台風前の水準に戻る。

今後、影響が出るのは?

飛行機利用者で今後影響が出るのは、連絡橋の走行が禁止されているタクシー(公共交通機関を利用することが著しく困難な場合は乗り入れ可)・ハイヤー・レンタカー・自家用車で関空を訪れる人になる。ただ、関西エアポートによると「鉄道・空港リムジンバスで旅客の8〜9割の人を運べており、車などで空港に来られる人は1割以下」。関空はほかの空港に比べると公共交通機関を利用する比率が圧倒的に高いため、空港の利用者が大きく減るような事態にはならないだろう。

台風直撃前の状態に戻りつつある関空だが、利用者数が台風前の水準まですぐに戻るかどうかは予断を許さない。関西エアポートの西尾専務執行役員によれば「(関空では)これまで80%近い搭乗率を保っていたが、運航再開後の搭乗率はそれを下回っている」。ノーショー(予約をしているけど空港に来ない人)も多く発生しているとのことだ。

関空には復旧状況を正確に外部へ発信し、外国人旅行客への認知を進めていくことが求められると言えそうだ。