時々できるあのしこり…「ガングリオン」ってなんだろう?

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執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


手首などにできる不思議なしこり

「ガングリオン」

名前は聞いたことがあっても、具体的に何なのか説明できる人は少ないのではないでしょうか。

健康に悪い兆候じゃないの? 放っておいても大丈夫?

そんな気になる方のためにも、今回はこの「ガングリオン」についてご説明していきましょう。

「ガングリオン」とは

日本整形外科学会のホームページ(※)によると、ガングリオンは“ゼリー状の物質が詰まった腫瘤”と解説されています。

腫瘤(しゅりゅう)とは一般的に、腫れ物やしこりのことを指します。

ガングリオンができやすい部位は手首の甲側です。

その他にも手首の手のひら側の親指側にある関節、手のひら側の指の付け根あたりにできるケースもあります。

しかしながら、ガングリオンができる部位は手に限りません。

実は身体のさまざまな場所にできる可能性があり、なかには神経や筋肉、骨などに生じることもあるといいます。

また、ガングリオンの大きさは米粒ほどのものからピンポン玉ほどのものまで、感触は軟らかいものから硬いものまでさまざまです。

※日本整形外科学会『ガングリオン』(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ganglion.html)

ガングリオンはなぜできる?

ガングリオンは主に、関節包(かんせつほう)という関節を包むふくろや、腱鞘(けんしょう)という腱を包んでいるふくろの部分にできます。

腱とは筋肉と骨を結びつけるスジのようなものです。

関節包や腱鞘には潤滑液となる滑液が入っていて、私たちの手や足などの関節がスムーズに動くようになっています。

関節や腱のあたりにできるガングリオンは、この関節包や腱鞘のふくろにつながっていて、潤滑液がガングリオンに送られ濃縮することで、ゼリーのような物質ができるのです。


しかしながら、ガングリオンができる明確な理由はまだわかっていません。

一般的に若い女性に多く発症する傾向が見られますが、手をよく使う人にできやすい、というわけではないようです。

ガングリオンの症状

ガングリオンは良性の腫瘤で、無症状のことが多いようです。

ただし、できた場所によっては神経を圧迫してしまい、その結果として痛みやしびれ、麻痺のような症状を伴うことがあります。

また、ガングリオンは皮膚にくっついているわけではありませんので、触ると皮膚の下をツルツルと動くような感触になります。

ニキビなどのように自分で潰すことはできませんが、気にし過ぎて頻繁に触ったり手を酷使したりすると、腫瘤が大きくなる可能性がありますので、注意が必要です。

ガングリオンの診断と治療

前述のとおりガングリオンは良性のしこりなので、とくだんの症状がなければそのまま様子を見ていても大丈夫です。

自然に消滅することもありますし、良性ですからがん化するような心配もないと見られています。

ただし、痛みがある、徐々に大きくなっている、というような場合は看過しないで整形外科などを受診しましょう。

なかには

「オカルトガングリオン」

と呼ばれる、外側から触れない小さなガングリオンが原因で、手の関節などに痛みが生じているケースもあります。

病院では医師の触診の他、必要に応じて超音波検査やMRI検査などにより診断します。

腫瘤部分を針で刺してゼリーのような中身が吸引されると、ガングリオンであることが判明します。

痛みなど症状が出ている、日常生活に支障があるときは、ゼリー状の中身を注射器で吸引する方法や、押しつぶすような方法で治療します。

何回か行ううちに治ることもありますが、繰り返しガングリオンができてしまう場合は、ふくろごと摘出する手術も検討されます。

ただし、手術をしても再発するケースがありますので、ガングリオンの元となる予備軍の存在にも留意しなくてはなりません。


ガングリオンは、基本的に症状がなければ放っておいても問題はありません。

とは言え、気になる症状が出ている場合は、専門の整形外科を受診してまずは相談をしてみましょう。

周囲の神経や筋肉、骨などに悪影響がないか詳しい検査を受け、適切な治療を受けることをおすすめします。


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供