ロシアW杯でメンバー入りを果たせなかった南野は、大阪の地で出色の出来を披露。前線の新レギュラーに一気に台頭した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 どんな賛辞を贈ればいいだろう。適切な言葉が思い浮かばないほど、森保ジャパンは素晴らしいスタートを切った。
 
 火曜日に大阪で行なわれたコスタリカ戦で、日本は3-0の快勝を飾った。選手個々の積極性、観る者に娯楽を運ぶ技巧、さらには正確で素早いパスワーク、そしてなによりゴールを目ざす姿勢が格別だった。試合後、新生・日本代表の旗頭となった中島翔哉が「これからも楽しいサッカーを見せたい」と話していたのが印象的だ。サムライブルーは華々しく、新時代への扉を開いたのである。
 
 中島のほかにも堂安律、南野拓実、両サイドのバックの室屋成と佐々木翔、さらには途中出場からゴールを決めた伊東純也と、誰も彼もが緊張などとは無縁で、「ここはひとつ目立ってやろう」と貪欲にプレーした。ロシア・ワールドカップを戦った先輩たち──名手たちが不在で、気兼ねもしなかったのだろう。森保一監督が彼ら新参者たちの背中を上手く押していたし、練習中から良い意味でリラックスして笑顔が絶えなかった。モチベーションはどんどん高くなり、展開したサッカーは実にコレクティブで、フィニッシュの精度も申し分ない。ベテランの青山敏弘と槙野智章がしっかりと後方支援し、渋い役割を演じていたのも見落とせないはずだ。

 
 効率良く3得点を奪い、見事なクリーンシート達成である。Jリーグや昨今の日本代表ではすっかり見慣れている消極的な横パスはほぼ皆無で、90分間を通して縦へ、前へと突き進んでいた。これほど攻撃的で楽しそうな日本代表を観た記憶はあまりない。溌溂として、スピリットが感じられ、伸び伸びとプレーした。急務である世代交代への足掛かりを、願ってもない形で掴んだと言えるだろう。
 
 試合中に書いたメモを読み返すと、ネガティブな記述はいっさいない。彼らは本当にクレバーに振る舞い、ドリブルで何度も局面を打開しようと試み、高い連動性を見せて、臆することなくゴールを目ざした。最後までハイペースで走り抜き、ボールを支配し続け、守備は終始安定感があり、カウンターの糸口も与えなかった。森保監督の表情は、まるで悦に入った仏様のよう。どうすればあれだけの短期間で、選手たちに確固たる自信を植え付けられるのか。モチベーターとしての才を再確認した。
 
 戦前の予想をはるかに超える出来だったコスタリカ戦をどう評価すべきか、むしろこちらが困ってしまうほどだ。
 
 ワールドカップ戦士がことごとく招集を見送られ、あまりにもメンバーが変わり過ぎていたし、連携やコンビプレーにはまるで期待していなかった。それがどうだ。個人の“品評会”としては最高の競争になっていたし、組織的な側面から見ても、評価できるポイントが少なくなかった。もう何年も一緒にやっているチームのように同じ絵を描けていたように思う。シンプルだ。「楽しく、攻撃的に、観客をわくわくさせるフットボールをしよう」が、合言葉のようだった。
 
 今回招集を見送られた乾貴士や柴崎岳、昌子源といえども、すんなり新チームに入って活躍できないかもしれない。そう思わせるほど、コスタリカ戦に出場した若きサムライたちのパフォーマンスはエネルギッシュだった。10月の2連戦(パナマ、ウルグアイと対戦)では、あらゆるポジションで高次元のバトルが繰り広げられるだろう。最高のシチュエーションではないか。乾vs中島、長友佑都vs佐々木、香川真司vs南野、原口元気vs堂安……ファンのみなさんも楽しみでしょうがないはずだ。

 
 北海道地震の影響でチリ戦が中止となった。森保監督と選手たちはこのコスタリカ戦一本に絞り込んで、長い時間をトレーニングに費やすことができたのだ。とはいえ、短期間は短期間。よくぞここまで磨いたものだと、感心させられる。
 
 正直言ってコスタリカは強い相手ではなかったし、日本の守備を窮地に追い込むようなビッグタレントもいなかった。しかしながらその事実を差し引いても、森保ジャパンの魅力的な攻撃的フットボールを目の当たりにし、私の胸は熱くなったのである。これからどれだけ連携が練磨されていくのか楽しみだし、間違いなくアジアカップでも質の高いフットボールを見せてくれそうだ。
 
 これほどの理想的なスタートを切るとは……。出来過ぎではないだろうか。
 
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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日。91年に英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。