ボランチとして攻守両面で機能した遠藤。今後は代表の主軸として成長を見せるか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真)

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 コスタリカ戦の主役を挙げるなら、ロシア行きを逸した前線の若いタレントになる。それぞれポルトガルとオランダでブレイクした中島翔哉、堂安律はもちろん、南野拓実も、欧州のピッチでもまれ、その自信に裏付けされた逞しさを十分に見せつけた。
 
 だがそれ以上に、今後の森保体制でキーマンとして定着していく可能性を示したのは、ようやく適役を与えられた遠藤航だったかもしれない。178センチというサイズは、どこを目指して育てていくかで起用法が変わってくる。
 
 遠藤がMFでも十分に通用するテクニックと視野、判断力を備えていることは、早い段階から明らかだった。しかし国内では、サイズとフィード能力を兼備したDFが少ないので、どうしてもセンターバック(CB)で起用される傾向が強まる。例えばFC東京の森重真人なども同様だが、特に3バックが増えるほど170センチ台でも最終ラインに組み込まれがちになり、今回のコスタリカ戦で代表にデビューした佐々木翔(176センチ)も経験者のひとりだ。むしろ長身FWが少なくて俊敏なアタッカーが優勢で、後方からのビルドアップを大事にするJリーグの傾向を考えれば、サイズは必ずしも最終ラインの優先資質には入らない。
 
 ところが国際試合を重ねる日本代表の事情は、完全にJリーグとは相反する。遠藤は代表監督の目には留まるが、CBでの起用は想定し難い。実際に183センチの森重でも、ハビエル・アギーレ元監督などはボランチで抜擢している。遠藤も代表に来れば、サイドバック(SB)かボランチのバックアッパーが立ち位置になり、どうしても出場機会は限られた。
 
 だが現状の日本では、むしろCB以上にセントラルMFが手薄だ。日本代表で明確に柴崎岳をボランチに起用したのは西野朗監督が初めてだったし、おそらく大島僚太も欧州に出ればボランチではなく2列目になる。実際に長谷部誠も、ドイツに渡って初期の頃はSBやトップ下などを試された。こうした流れを見ても、遠藤のベルギー移籍は重要な転機になったはずだ。欧州基準の視点に晒せば明らかに適性はボランチになり、また遠藤はハイレベルなボランチの資質を備えた稀有な存在だからだ。そして自身も語るように、短い期間でも適性ポジションでプレーし続けたことで長所を照らし出された。
 
 最終ラインでは表現が難しかったが、コスタリカ戦ではゴールにつながるチャンスの起点となり続けた。前半には小林悠への縦パスが南野の決定機を導いたし、その数分前にもやはり小林にワンタッチでスルーパスを送っている(オフサイド)。後半2点目のアシストをしたシーンでは、懐の深いダブルタッチでひとり剥がすと、そのままゴール前に走り込み、中島のパスを受けている。また技術と視野の確保の水準が高いので、厳しく寄せられてもハイテンポのつなぎに一切ミスがない。空中戦が強くダイナミックな攻撃性を備えたという点では、稲本潤一以来のボランチと言えそうだ。
 
 一方で森保監督の使い方にも期待が滲む。もちろんボランチ歴の浅い遠藤には、寄せの厳しさ、展開の読み、ボールの引き出し方など、課題(伸びしろとも言える)も見える。そこで指揮官は、隣に青山敏弘を配した。遠藤にとって青山は、ライバルであり、超えていかなければいけない格好の見本なのだろう。
 
 たぶんJリーグでCBを続けていたら、遠藤が日本代表のキーマンになるのは難しかった。しかしシント=トロイデンでボランチとしてプレーするようになり、大化けの兆しも見えた。
 
 前線のタレントは、まだまだこれからワールドカップを戦ったタレントとポジションを争っていくことになる。だが遠藤は、この一戦で替えの利かない存在としての最初の一歩を刻んだのかもしれない。これからの4年間で、パートナーは青山から柴崎、あるいは井手口陽介らに代わっていくかもしれないが、ピッチの中央では6番が無二の存在感を増していく予感がする。

文●加部 究(スポーツライター)