もはや"官製通販"ふるさと納税で損する人

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■2008年に制度が始まったとき、返礼品はなかった

ふるさと納税が人気だ。納税総額は2015年度が約1653億円、16年度は約2844億円とうなぎのぼりに上昇。そのブームを牽引するのが、豪華な返礼品である。最近では地方自治体間で競争が過熱し、特産品ではない金券、タブレット端末、ドローンまで送られるようになった。公共経済学が専門の一橋大学・佐藤主光教授は、次のように解説する。

「そもそも08年に制度が始まったときには、返礼品はありませんでした。ところが5〜6年前に自治体が特産物を送るようになり、一気に火がついた。本来、ふるさと納税は地域や自治体に共感し、応援する目的で行う寄付。それが好みの特産品や返礼率の高さで選ぶようになり、もはや『官製通販』の様相を呈しています。ただでさえ寄付文化があまりない日本で、『見返りのない寄付はしない』という意識が醸成される恐れもあります」

また、ふるさと納税は、2000円を超える分の寄付金額が所得税や住民税から控除できる制度であり、中・高所得者層が得をするという不公平性もある。高所得であるほど特例控除の上限が大きくなり、減税額が増えるのだ。

本来の目的を失いかけた状況を受け、総務省も動いた。17年4月、返礼率の上限を3割にとどめ、家電など換金性の高いものを返礼品から除外するように、さらに18年4月、返礼品を地場産品に限るように各自治体へ通知を出したのだ。一部では8〜9割にも達した返礼率が下がっていくと、制度を活用していた富裕層ほど、節税効果を期待できなくなる可能性は高い。

佐藤氏は、返礼品ブームは収束に向かうと予測する。

「寄付を集めているのはごく一部の地方自治体だけ。自治体間に納税格差が広がっており、返礼品合戦に疲れてくるはずです。そして返礼率3割という縛りを受けて、返礼品のバリエーションも減るうちに、納税者の関心も落ちていくのではないでしょうか。制度を利用する人の『なるべく得したい』という気持ちもわかります。しかし、他の地域へ税金を納める分、自分が住んでいる地域の行政サービスが損なわれている可能性があることは理解しておくべきです」

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佐藤主光(さとう・もとひろ)
一橋大学国際・公共政策大学院教授
1969年生まれ。著書『地方税改革の経済学』(日本経済新聞出版社)でエコノミスト賞を受賞。専門は財政学、公共経済学。
 

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(ライター 吉田 彩乃)