「語彙力がない…」と悩んでいる方、「この3冊」を試してみてはいかがでしょうか(画像:tomorca / iStock)

「勉強しているはずなのに、成績が上がらない」「どれだけ本を読んでも身に付かない」。受験生に限らず、勉強熱心なビジネスパーソンでも、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
「かつての僕は、まさにそうでした」。2浪、偏差値35という崖っぷちから1年で奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏は、自らの経験を振り返って言います。「でも、ちょっとした工夫で、劇的に改善したんです」。
教科書、参考書だけでなく、あらゆる本の読み方を根本から変えた結果たどり着いた、「知識を増やすだけでなく『地頭力』も高められる」「速く読めて、内容も忘れず、かつ応用できる」という読書法を、新刊『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』にまとめた西岡氏に、「語彙力」を高める3冊とその使い方を解説してもらいました。

東大合格には、「語彙力」が必要不可欠――。


その事実に気が付いたのは、僕が2浪しているときでした。東大受験に2回失敗して、「自分には何が欠けているのだろう?」と考えたときに思い至ったのが「語彙力」だったのです。

前回の「語彙力がない子は『全教科の成績』が伸びない」でもお話しさせていただきましたが、語彙力がないと成績はなかなか上がりません。国語だけでなく、英語でも社会でも数学でも、語彙力は成績向上のボトルネックになりがちなのです。

そして、東大入試はある意味、自分の語彙力との戦いです。9割以上の問題が論述問題。その中身も400words近い英語の文章を日本語でコンパクトにまとめる要約問題、世界史の大きな流れを600字程度で論じなければならない論述問題、複雑な事柄を数式を用いて解き明かしたり証明したりしなければならない数学の問題など、語彙力がないと手も足も出ないものばかりなのです。

そこで僕は、自分の語彙力を磨くためにある「3冊の本」を読みました。3冊の本をフル活用して、語彙力のない自分とおさらばしたのです。

今回は、どんな人でも語彙力を鍛えられる3冊の本と、その読み方を紹介させてください。

1冊目は、「漢字力」から語彙力を鍛える本です。

『生きる漢字・語彙力』

漢字力と語彙力はセットで鍛える

まず僕がお薦めしたいのは、『生きる漢字・語彙力』(霜栄著、駿台文庫)です。


これは意見が分かれるのかもしれませんが、僕は日本語の語彙力は漢字とセットだと思います。

たとえば人と話しているときに、聞き慣れない言葉だな、と思ったものって、十中八九、漢字変換できないものだと思いませんか? 「難しいな」「わからないな」と思う言葉って、その多くは「漢字で理解できないもの」だと思うのです。逆に、難しい言葉・聞きなれない語彙でも、漢字さえわかればなんとなく意味がわかるということは多いですよね。

「徒労」と聞いてパッと意味が思い浮かばない場合でも、「徒労の『労』って、苦労の『労』と同じ漢字だな」と思ったら「なんか大変で苦労している感じなんじゃないか?」とぼんやり理解できますよね? つまり、語彙力って漢字力とイコールになる部分が多いのです。

この『生きる漢字・語彙力』はそれを体現しています。この本は漢字ドリルの側面を持ちながらも、ちゃんとすべての漢字にその意味やポイントが載っているんです。「徒労」であれば、「むだな骨折り。(同じ漢字を使う言葉は)「徒歩」「徒党」「労働」」としっかり書いているのです。

『生きる漢字・語彙力』は「英語単語ドリル」と併用する

僕はこの本を、英単語ドリルと一緒に使っていました。たとえば「徒労」という漢字を覚えるときに、「じゃあ、『徒労』って英語でなんて言うんだろう?」と検索して、漢字の下に英語を書き込んだのです。

これは、一緒に英語を覚えるためではありません。語彙力をつけるには、これがとても有効なのです。

たとえば「徒労」を英語で言うと「waste」となります。これは、「浪費」とか「無駄な」とか、そういう意味のある英単語です。これをセットで覚えておくと、「徒労」のイメージがより深く、具体的に理解できるようになります。「徒労」「浪費」「無駄」……そんな語彙の持つイメージを、「waste」という言葉を媒介にして理解できるわけです。

翻訳がいちばん、語彙力を問われる作業だと言われています。日本語から英語に翻訳しよう、英語を日本語に翻訳しよう、この言葉にぴったり対応する言葉はあるかな――。そうやって思い悩む作業の中でこそ、いちばん語彙力が磨かれていくのだと。

しかし、翻訳ってなかなかハードルが高いですよね。「よっしゃ! この英文を全部日本語にするぞ!」とか、なかなか難しいと思います。だからこそ、こういう「漢字」からスタートするのです。単語を翻訳するのなら、そこまで大変ではありません。スマホや電子辞書で検索すれば一発、ラクに翻訳家の気分が味わえます。

漢字ドリルに載っている「ちょっと難しい言葉」を、英語では何というのか考えてみる。そういう訓練をすると、語彙力を磨くことができます。そのときに、「言葉の意味」もセットで載っているこの『生きる漢字・語彙力』は非常に使い勝手がいいのです。

『新明解類語辞典』

普段使わない「類語辞典」は語彙力アップの最強兵器

2冊目は「類語辞典」です。僕は『新明解類語辞典』(中村明編、三省堂)を使っていました。


みなさんは、類語辞典って使ったことありますか? 僕は2浪して語彙力の必要性を意識するまで、正直使ったことがありませんでした

だって、類語辞典って使いどころが難しいと思いませんか? 普通の辞典なら「この言葉の意味ってなんだろう?」と思ったらすぐ引けばいいわけですが、しかし「この言葉の類義語はなんだろう?」と考えることって少ないですよね。というか、そんなことを思ったことのある人のほうがまれだと思います。だからこそ、類語辞典は使いどころが難しい辞書です。

しかし実は、類語辞典を使って類義語を調べるのは、手っ取り早く語彙力を身に付ける最適な方法なんです。どれとどれが同じ言葉で、どういうふうに使い分けられているのかを理解できます。

たとえば「日和見主義」の類義語はなんだろうと調べて「事大主義」「御都合主義」などの類義語を理解し、その使い分け方も同時に調べる。「この言葉とこの言葉は一緒なんだ!」と言葉同士のつながりを理解し、言葉のネットワークを作っていくと、多くの語彙をいっぺんに身に付けることができるようになるのです。

類語辞典は、違う言葉にジャンプするために使う

僕は類語辞典を、「その言葉の類義語」を調べ、さらにその類義語を他の辞書で調べるために使っていました。「え!? 類義語なのに、わざわざもう1回調べる必要あるの?」と思う人もいるかもしれませんが、これが意外と有効です。言葉が変わると、たとえ類義語でも説明が結構変わったりするのです。

たとえば日和見主義は「自分の都合のいいほうにつく態度」といった説明がなされていますが、その類義語の事大主義は「勢力の強いほうに付き従う態度」とった説明になっています。微妙に意味が違いますね。

また、意味が1つだけという言葉は、あまり多くはありません。むしろ2つか3つの意味があるほうが多く、そしてその意味の中の1つが類義語となっていることが多いんです。

この「日和見主義」にも2つほどの意味が存在し、そしてその中の1つが「事大主義」と類義語になっているのです。だからこそ「日和見主義」と「事大主義」は同じ部分もあれば違う部分もあり、双方を調べる価値があるわけです。

そしてこの「類語辞典」というのは、そうした「意味の分類」がきちんとされています。「日和見主義には2つの意味があり、……」としっかり分けて説明されているので、意味のつながりや語彙の類似性・差別化するポイントも理解しやすくなっているのです。

『日本語チェック2000辞典』

語彙力アップには「テスト」が不可欠

さて、今の2冊の本で「語彙の増やし方」はお話しできたと思うのですが、本当に語彙力を身に付けるためにはあとひとつ、必要なことがあります。

それは、チェックです。本当に自分が正しい語彙を身に付けているのか、間違って言葉を使っていないかどうか、把握する必要があるのです。

たとえば、「姑息」ってみなさんはどういう意味か知っていますか? 「卑怯」と答えた方、多いと思うのですが、実は本当の意味は違います。

「姑息」とは、実は「その場しのぎの」という意味です。一時的にその場を逃れたりすることを指して「姑息」というのであって、「正々堂々としていないこと」を指す「卑怯」という意味ではありません。

こんなふうに、「正しいと思い込んでいるが、実は間違っている語彙」は、実は結構多いです。

『日本語チェック2000辞典』は、「問題集」として使う

そんな「間違った語彙を正す」のに最適なのがこの『日本語チェック2000辞典』(樺島忠夫他著、京都書房)なのです。


この本は、その名のとおり2000題の「日本語にまつわる問題」が載っています。それも、「あ〜わ」までの50音順で、間違いやすい日本語・できない人が多い日本語の問題が載っているのです。

僕はこれを、問題集のように一問一問解いていきました。そうすると、自分が何をわかっていて、どんな語彙が欠けているのかが理解できるようになります。そしてできなかった問題に丸をつけてチェックし、解説を読みます

この本の解説はしっかり丁寧に書いているので、これだけでも語彙力が付くのですが、解説を読んだうえでもう一度違う辞書でも調べてみて、先ほど紹介した類語辞典でも調べてみましょう

「姑息には、『一時しのぎ』『その場しのぎ』『当座逃れ』などの類義語があるみたいだ」と調べて、それを可能であればメモして後から復習するのです。そうやって、チェックもしながら自分の語彙力を着実に伸ばしていく勉強をすれば、語彙力がぐんぐん身に付くこと間違いなしです!

面倒くさい……と思われた方、以前「東大生絶賛!『電子辞書』は最強学習ツールだ」で紹介したとおり、電子辞書を使えばそれほど手間はかかりません。ぜひ、活用してみてください。