乳幼児に多い「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)」は早期治療を!

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執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


お出かけが増える季節。

お子さんを公園やプールに連れて行って、楽しく遊ぶ姿を微笑ましく眺める一方で、感染症が気になる親御さんも多いのではないでしょうか。

今回お伝えする

「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」

(ぶどうきゅうきんせいねっしょうようひふしょうこうぐん:

SSSS

)は、聞き慣れない名前ですが、乳幼児に好発する恐ろしい皮膚病です。

原因や症状、対応について知っておきましょう。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)とは

この病気はその名前の通り、「ブドウ球菌」の皮膚への感染をきっかけとして、やけどをした時のように皮膚に水ぶくれができ、さらに剥がれてしまう皮膚病です。

「常在菌」である「ブドウ球菌」は多種多様で、普段から私たちの鼻や喉の粘膜などに棲みついています。

健康なときは全く問題ないのですが、免疫力の低下やケガによる傷、風邪などの症状が引き金となり身体の中で悪さをすることがあります。

ブドウ球菌に属する細菌のうち、特に皮膚の一番外側にある角層を剥がしてしまう毒素を分泌するタイプのものが存在します。

その毒素が何らかのきっかけで血管に入り、血液の流れに乗って身体中に広がると、全身の皮膚にやけどのような症状がでてしまうのです。

これを

「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)」

と呼んでいます。

まれに大人でも発症しますが、6歳以下の子ども、なかでも3歳以下の乳幼児に発症するケースがほとんどです。

初期症状から注意が必要

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)は、一般的に熱や寒気といった風邪のような症状からはじまります。

子どもはこうした症状をうまく説明することができないため、初期症状として不機嫌になってグズッたり、食欲が落ちたりします。

また、皮膚が赤くなったり、発疹ができたりして、触ると痛みを伴うため、抱っこを嫌がる場合もあります。

皮膚症状の経過は、まず目や鼻、口の周りが赤くなり、水ぶくれやかさぶたで覆われたようなタダレができます。

新生児では、オムツがあたる場所やおへそ周りにできることもあります。

水ぶくれやタダレはやがて全身に広がり、少し触れただけで皮膚が剥がれてしまうようになります。

早期に適切な治療を受ければ、たいてい1〜2週間ほどで落ち着くのですが、病気の進行が早く放っておくと重症化するケースもあります。

皮膚がむけた状態が広範囲になると、バリア機能が低下して他の病気にかかりやすくなったり、全身に感染が広がる敗血症や肺炎、脱水症状に陥ったりする可能性も考えられます。

「風邪かな?」と思っても、皮膚の赤みやいつもと違う様子に気づいたときは速やかに病院を受診しましょう。

めずらしくない病気が引き金になることも

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)は感染症ですから、他の人にうつる病気です。

咳やくしゃみなどの飛沫感染のほか、SSSSにかかっている人の皮膚や粘膜、病原体が付着している物に触れた手で、自分の目や鼻、口などを触って接触感染することもあります。

特に触れ合う機会の多い子ども同士や、SSSSにかかった子どもの世話をした親の手を介して、兄弟など別の子どもにうつることも考えられますので注意が必要です。

また、俗に「とびひ」と言われる「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」も、傷口などから黄色ブドウ球菌が入って水ぶくれができ、それが破れて皮膚がただれたようになる病気です。

とびひは悪化すると全身に広がり、SSSSに移行してしまう危険があるため早めの対処が重要です。

さらに、風邪やインフルエンザも引き金になります。

いずれにしても

SSSSは子どもがかかりやすい病気で早期治療が重要

であると認識して、周りの大人は常に体調の変化に気をつけてあげましょう。

適切な治療と予防法を知ろう

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)の治療には、基本的に入院をして抗生物質の点滴や内服などを行います。

また、広い範囲でやけどをしたような状態になりますので、症状の程度に合わせて保湿剤などを使用し皮膚を保護します。

ただし、近年抗生物質が十分に効かないタイプの細菌も増えており、ときには患部を切り取って顕微鏡などで詳しく調べる「生検」などを経て正しく診断してもらうことが重要です。

むやみに手持ちの薬を塗って様子を見るなど自己判断をすると、症状が悪化してかえって診断に時間を要することになりかねません。

必ず病院を受診しましょう。

SSSSを予防するためにまず一番大切なのは、手洗い・うがいといった日ごろの習慣です。

また、擦り傷やあせもなど皮膚のトラブルは、細菌が入るきっかけになりますからきちんと治しましょう。

子どもは目や鼻をよくこすりますし、かさぶたなどもすぐに引っ掻いてしまうものです。

手洗いうがい、爪を短く切るなど、細かいことですが日常的に注意を払うことが予防の近道です。


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供