毎試合激闘を繰り広げ、銀メダルを掴んだU-21代表。真剣勝負の場で多くの経験値を得た。写真:早草紀子

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 アジア競技大会の男子サッカーは銀メダルという結果に終わった。
 
 大会の年齢制限であるU-23ではなくU-21の代表を送り込み、3人まで起用できるオーバーエイジ選手も不在。この点から言えば、経験を重視しての参加であることは間違いない。大会前に森保一監督が「4強」を目指すべき目標に掲げたのも「(決勝か3位決定戦を含めて)最大の7試合できるから」という、まさに経験値を求めて臨むが故のものだ。
 
 ただ、実際に集まってきた選手の話を聞き、森保監督は大胆に軌道を修正する。明快に「優勝」という目標を口にするようになったのだ。
 
「(目標は)僕らスタッフが押し付けるものじゃない」
 
 選手が「欲しいのは金メダル」と言うなら、「その背中を押してサポートするのがスタッフの仕事だ」というのが森保監督の取ったスタンスである。その後の態度も思うと、もしかするとわざと低めの目標設定を口にした上で、選手に「これでいいか?」とぶつけたのではないかとも思うが、いずれにせよチームとしてのベクトルは大会直前に定まった。
 
 --つまり、決勝で韓国に敗れて金メダルを獲れなかった以上、今大会は失敗だったのか?
 
 いや、それこそ短絡というものだ。確かに監督も選手も勝ちにいった大会だ。いろいろな意味で“ガチ”だった韓国を相手に回した決勝でも同じことで、終了後の選手たちの絶望に満ちた表情は、彼らの勝利への純粋な渇望を証明するものでもあった。「年上の韓国が相手なら負けても仕方ない」と思っていた選手は皆無。だからこそ収穫もあった。

 本気で勝ちにいくことで東京五輪自体へのシミュレーション大会になったことが大きかった。連戦を重ねながらの消耗戦は、酷暑の下で中2日の試合が続く五輪でも想定されること。これを最後まで体感できたのは、選手はもちろん、スタッフの経験値という意味でも大きい。
 
 そして、決勝の韓国戦は戦力に差のある相手に対し、防戦メインの戦いを強いられたが、これも五輪では十分にあり得ること。メダルを狙うなら、特に一番良い色のメダルを狙うなら、確実に1回はジャイアントキリングを達成する必要が出てくる。そうした手応えも掴みつつ、同時にチーム・個人ともに課題が見えたのは好材料だろう。
 
 本気で森保監督が勝ちにいくなかで選手たちに対する要求のハードルを引き上げていく流れにあって選手たちが必死に食らい付いていき、チーム力が押し上げられた感触もある。個人として意識が変わった選手がどのくらいいるかを問われるのはこれからだが、準A代表級の韓国との決勝戦を通じて、日本のA代表へ入るために必要なレベルを個々の選手が体感できたのもポジティブだった。
 
 チームはここから新たなステージへ踏み込んでいく。来年は今回選外となっていたU-19年代の選手たちも本格的に合流してくるだろうし、A代表へ引き上げられる選手はさらに増えるだろう。コパ・アメリカ(南米選手権)などの機会ではオーバーエイジ枠を活用したような“A五輪代表”とでも呼ぶべき編成で試合をこなすこともあり得る。
 
「東京五輪に向けてふたつの代表をやらせてもらえるのは、五輪への強化に向けて最高のポジションをいただけたと思っていますし、そういうメッセージがあるとも考えています」(森保監督)
 
 あくまで「U-21」という枠組みの中だった強化は終わり、新たなステージが始まる。オーバーエイジ枠で起用する選手選考を含め、A代表の強化スケジュールとミックスしつつ、五輪、そしてその先まで見据えて個人とチームを強化していく。過去の五輪代表とは明らかに違う、そんな旅路になるはずだ。
 
取材・文●川端暁彦(フリーライター)