長短スプレッドの縮小傾向続く―年内に逆イールド発生か

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米国景気の先行きを占う指標として長期金利と短期金利の差、いわゆる「長短スプレッド」が注目されています。長期金利は短期金利を上回るのが一般的ですが、短期金利が長期金利を上回る、いわゆる「逆イールド」の状況になると注意が必要です。米国では過去に「逆イールド」の状況が発生し、その後に株価がピークをつけるということが発生していました。

図1は米国のイールドカーブ(年限の異なる国債の利回りを線で結んだもの)の変化を、直近、1ヵ月前、3ヵ月前、6ヵ月前の時点で並べて比較したものです。通常、イールドカーブは右肩上がりの形状をしています。国債は残存期間が長くなるほど利回りが高くなるのが一般的だからです。また、イールドカーブの形状は経済動向に応じて変化します。一般的に景気拡大が期待される時期においては、長期金利が短期金利に比べて高くなり、イールドカーブの傾きが急となります(スティープ化)。逆に景気の先行きが怪しくなると長期金利が低下して長短スプレッドが縮小し、イールドカーブの傾きは緩やかになります(フラット化)。また、ごく稀に短期金利が長期金利を上回り、右肩下がりのイールドカーブとなることもあります。これが「逆イールド」と呼ばれる現象です。

図1で米国のイールドカーブの形状を見ると、残存2年未満の短期ゾーンでは6ヵ月前から徐々に上昇していることが分かる一方で、残存10年の長期ゾーンではほぼ変化しておらず、結果として「長短スプレッド」の縮小が進んでいます。

「長短スプレッド」と株価の関係を調べるため、図2では米国の長短スプレッドを見ています。長期金利として米国10年国債利回り、短期金利として米国2年国債利回りを用いており、利回りの差を長短スプレッドとして表示しています。利回りの水準は趨勢的に低下傾向を示していますが、「長短スプレッド」はおよそ0%から3%の範囲に収まっています。しかし、「長短スプレッド」がマイナスとなっている時期もあることが分かります。いわゆる「逆イールド」が発生していた時期です。図2中の「長短スプレッド」が赤い部分が「逆イールド」発生の時期です。

図3は「長短スプレッド」とNYダウ平均株価の関係を見たものです。興味深いことに、「逆イールド」が発生した数カ月後には株価がピークを迎えていることが分かります。金融引き締めにより短期金利が上昇した一方で、景気の拡大期待に冷や水をかける金融引き締めは長期金利の低下をもたらし、長短スプレッドがマイナスとなったわけです。どうやら長短スプレッドは株式相場のピークを見るための先行指標として利用できるかもしれません。

今後を考える上で、FRBは9月も追加利上げを実施することが予想されており、短期金利には上昇圧力がかかるでしょう。一方で長期金利は短期金利ほど上昇はしておらず、「長短スプレッド」は8月末で約0.21%にまで縮小しています。このペースでいくと年内には「逆イールド」が発生するかもしれません。「逆イールド」が発生した場合は株式を売却する、あるいは株価の下落によって収益の獲得を期待できるNYダウ平均株価を対象とするプット型eワラントや日経平均株価を対象とするプット型eワラントを購入して株価の下落に備えます。ただし、「逆イールド」が発生してもすぐに株価の暴落があるとは限りませんので、長期的な視点で下落シナリオを考える場合は、日経平均株価を対象とするマイナス3倍トラッカー型eワラントを購入しておくのも一案です。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。