2大会ぶりの金メダルを獲得したなでしこジャパン。苦しい戦いの連続だったが、粘り強く勝ち上がった。写真:早草紀子

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 なでしこジャパンが2大会ぶりのアジア大会優勝を手にした。が、メダルセレモニーでの笑顔も取材エリアに入るころには引き締め直し、それぞれに修正と課題を口にした。
 
 それもそのはず。決勝では中国に主導権を握られ、日本らしさを完全に封じられてしまったのだ。にも拘わらず、沈黙したままのスコアを動かしたのは日本だった。終了間際、岩渕真奈(INAC神戸)から右サイドの中島依美(INAC神戸)に展開。その折り返しに準決勝でも先制点を決めた菅澤優衣香(浦和レッズL)が気迫のダイビングヘッドで決勝弾を叩き込んだ。これだからサッカーは分からない。
 
 国内組で臨んだ今大会をギリギリのところで勝利をもぎ取るように勝ち進んだ。グループリーグこそ1チーム少ないグループCに入ったが、相手はアジアの強豪入りを目指す成長著しいタイ、ベトナム。油断ならない相手にも順調に白星を重ねた。1位で通過したはずが、準々決勝はディフェンディングチャンピオンの北朝鮮、準決勝は比較的緩い組から日本に照準を合わせてきた韓国、決勝は今大会の成長株でもある中国と、どんなに劣勢であろうとも、アジアの強豪すべてと対戦して打ち破った優勝だ。
 
 高倉麻子監督は全招集メンバーを使いながら、いかに厳しい戦いになろうともチャレンジを欠かさなかった。準決勝ではさすがに決勝進出を第一に考えて、メンバーを固めてきたが、國武愛美(ノジマステラ)を初めて左サイドバックで起用して驚かせてくれた。
 
 決勝ではフィジカルに長けた中国を相手にあえて前線を小柄な選手の機敏さに賭けて“つなぐ”サッカーを貫こうとした。その賭けも、後半に菅澤優衣香(浦和レッズL)というポスト力のある長身FWという計算できるカードを持っているからできることでもあった。指摘され続けている決定力不足を払拭するにはまだ課題は少なくないが、それでもここぞの一発が出始めてはいる。
 
 ワンチャンスを決めて優勝を引き寄せる。こうした戦い方は、かつてのなでしこジャパンの十八番でもあった。「先代のなでしこジャパンの粘り強さが受け継がれてきた」と高倉監督も認めるところ。それは守備にも通じている。
 この粘りを生み出したのが選手間のミーティングだ。もともとなでしこたちはあらゆる局面をミーティングによって乗り越えてきた。今回は猛暑の中で18名という限界ギリギリの戦力での連戦だ。そこへピッチコンディションの悪さから疲労もかさんだ。
 
 出場機会の有無で選手のモチベーションが大きく異なるのは当然だ。今大会は海外組のほか、怪我などで主力選手が不参加となった。出場の可能性が高くなるのが、当落ライン上にいる選手たちだ。今大会ではコンディションを完璧に整えることも重要なファクター。さらに新たなポジションなどにも挑戦が促されることもある。出場メンバーは当日まで明かされないため、自分に出場の可能性のあるポジションはすべて戦術や動きを把握しておきたいという向上心につながった。
 
「お客様感がなかった。今がチャンスだ! って分かっているし、何があるか分からないって想いで準備してくれているのもすごく分かる」と目を細めるのは鮫島。優勝を決める決勝弾を決めた時にピッチに負けないほど喜びを爆発させたベンチ選手の表情にもその想いを見ることができる。“国内組”と表現するのは違うのかもしれない。この“18人”だからこそ、勝ち得た優勝だったのではないだろうか。
 
取材・文●早草紀子