左サイドで存在感を見せた遠藤。積極的に高い位置を取り、与えられたタスクをまっとうした。(C)Getty Images

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[アジア大会]U-21日本代表 1-0 U-23UAE代表/8月29日/インドネシア

 29日にインドネシアのボゴールで行われたアジア大会男子サッカー準決勝。日本は西アジアの強豪UAEと対峙していた。中1日のタフな連戦となるなかで、日本の翼が逞しく羽ばたいていた。横浜のMF遠藤渓太だ。
 
「皆よりも試合に出る時間も少なかったし、最初のマッチアップで相手の守備、自分行けるなと思ったところから自分主体に攻められた」
 
 そう胸を張って遠藤が振り返ったとおり、前半からドリブルで勝負して相手を出し抜くシーンが相次ぐ展開となった。元より“森保式戦術”の肝はウイングバックに“個”の勝負を挑ませるシチュエーションを作り出すこと。そこで勝負できない選手がこの攻撃戦術で機能するのは厳しいが、この日の遠藤はまさにそのタスクで輝き続け、サイドの主導権を牛耳った。
 
「ハーフタイムに監督からも(コーチの)横内さんにも攻撃で相手のウイングが下がってきているから、自分が高い位置取れている、攻撃で相手のラインを押し下げろと言われた」
 
 高い位置へ張り出すウイングバックに対して1対1で勝てないのであれば、守備側が採れる解決策のひとつは数的優位を作ること。ただ、これがそもそも難しいのだが(1トップ+2シャドー、さらに逆サイドのウイングバックも前に張っているためだ)、前にいるウイングの選手を戻してヘルプさせるという考え方はある。ただ、これは当然ながら疲れるタスクであり、当該選手の攻撃力を削ぐことにも繋がる。まさに遠藤が1対1で勝つことによって、相手のストロングポイントをも削り落とす効果を生み出していた。
 
 もともと2試合連続の延長戦を勝ち抜いてきたUAEにはチーム全体として疲労感があった。「回復するには十分でなかった」とスコルジャ監督が認めたように、あるいは日本選手たちが「相手は疲れていた」と口々に指摘したように、足が重い。何とか試合をスローテンポに持ち込もうという意思も感じたられた。
 
 だが、そこに快足を飛ばしてドリブルで仕掛けて打開しまくる男がスタートから向かって来たのだから、厄介極まりなかったはずだ。最後の決勝点も、深く押し込んだ状態から遠藤がパス交換で左サイドを切り崩すシーンから生まれている。
 猛烈なプレーを貫徹したこの日の遠藤のバックボーンとしては「なかなか試合に出られなかった悔しさをぶつける」という明確な意志もあった。そして、試合に出られない悔しさを味わっているからこそ、今もベンチに座るメンバーたちの分までという思いもある。
 
「アジアで優勝したU-19の時も、ベンチの人を含めてチーム一丸となって、出ている選手とかを支えていた。(先発からベンチなど)逆の立場になった時に、出なくなった選手がしっかりと出ている選手を支える。そういう部分でチームがひとつになっていた。そのためにはやっぱり試合に出た選手が、しっかりと責任を持ったプレーをすること。それでチームが良い流れになる。そういうのって口で言うよりも空気感で分かるので」
 
 そして、次はいよいよ韓国との決勝戦である。
 
「燃える相手だし、相手に何が懸かっているかとかは自分らには関係ないと思う。自分らも決勝に賭ける思いはあるし、みんな人生を懸けている」
 
 先発にしても、後から出てくるにしても、このウイングプレーヤーが決勝のキーになるのは間違いない。「金メダルを獲るためにやるだけ」という遠藤が、決勝の大舞台でも、力強く羽ばたく。

取材・文●川端暁彦(フリーライター)