後半立ち上がりの猛攻をしのぐと、徐々に試合は日本ペースに傾いた。写真:徳丸篤史

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 アジア大会・準々決勝、U-21日本代表はU-21サウジアラビア代表に2-1で勝利を収めた。準決勝は中1日で29日、U-23UAE代表と対戦する。

 中東のチームとの試合は、90分を意識しながら粘り強く戦うことが、勝利を手繰り寄せる。なぜなら後半、相手が先に崩れ始めるからだ。

 この試合も同様だった。1-1で迎えた後半キックオフ後の10分間は、まさにサウジアラビアの猛攻。1トップの9番ハルーン・カマラを起点に、左ウイングのアブドゥルラフマン・ガリーブ、右ウイングのアイマン・アルクライフを含めたアタッカー3人が、前半よりも距離を近くし、ワンツー・コンビネーション、あるいはセカンドボールを拾った2次攻撃からチャンスを量産した。

 この時間帯、日本も奪ったボールを運び切れず、回収されてしまい、サウジアラビアの分厚い攻撃を許すシーンが続いた。それによって、日本の空いた中盤に、相手が良い距離感で仕掛けてくる。ガリーブ、アルクライフに正面からシュートを打たれた場面は、特に危なかった。
 
 しかし、このピンチを乗り切った日本は57分、長沼洋一に代えて、遠藤渓太を右ウイングハーフに投入する。この采配が流れを変えた。日本は推進力を上げ、サウジアラビアを押し返すことに成功。ゲームコントロールを取り戻せば、こっちのものだ。1トップのカマラに対しては、大南拓磨と立田悠悟がしっかりと対応できている。単発のロングカウンターを食らっても、大きな危険はない。押し込まれた状況を脱することが肝心だった。
 
 すると逆に、サウジアラビアに異変が見えてきた。攻め疲れした両ウイングが、戻って来ない。前半は4-5-1で両ウイングが中盤に下がり、スペースを消してカウンターを狙っていたが、その守備に綻びが生じた。結果として日本はサイドから攻めやすくなり、遠藤を投入した効果が、より大きくなった。
 
 さらに日本は60分、旗手怜央に代えて三好康児を投入している。この選手は日本が押し込まれた時間帯では相手のフィジカルの前に埋没しがちだが、日本がゲームコントロールを握っていれば、重要なプレーができるタイプ。狭いスペースに侵入し、仕掛けのアクションを起こせる三好は、遠藤に続く交代としてなお、効果的だった。
 
 その後、サウジアラビアは右ウイング、10番のアルクライフを前線に残し、維持不可能になった4-5-1を4-4-2に変更。しかし、この修正を日本は苦にしなかった。相手サイドハーフを、両ボランチや板倉滉が引きつけ、遠藤と杉岡大暉の両ウイングハーフをフリーにする。サイド起点の攻撃は止まらなかった。反面、2トップ化したサウジアラビアのカウンターも脅威といえば脅威だが、押し込まれるよりはマシ。
 
 主導権を取り戻した日本は73分、遠藤が高い位置でインターセプトし、サイドチェンジしてスペースを突く。前田大然がドリブルで仕掛け、最後は岩崎悠人が決勝点となる2点目のゴールを挙げた。
 
 アジアのレベルではあるが、試合巧者と評価できるサウジアラビア戦だったのではないか。このU-21日本代表は、試合ごとに成長してきた。グループリーグのチームとは、すでに別物に見える。
 
 しかし、彼らが東京五輪やA代表を目指す選手の集まりであるなら、ここで満足はできないだろう。
 
 スピードに乗ったドリブル突破を見せつけ、大きなインパクトを残した前田や岩崎だが、彼らの突破力が生きたのは、この試合だからだ。うかつに突っ込んでくるサウジアラビアの守備だからこそ、一瞬のキレやスピードが、面白いように生きた。
 
 だが、守備戦術の巧みなチームが相手なら、このようなイージーな突破はあり得ない。戦術的に優れたDFは、相手のスピードを殺す守備がうまいからだ。たとえば、世界へ渡る以前の長友佑都など、キレとスピードで勝負するタイプが、世界レベルの対戦になると間合いを完璧にコントロールされてしまう。抜けないし、クロスを蹴っても全部相手に引っかかる。そんな試合が過去にもあった。アジア大会で通じたプレーが、いつまでも、どの相手にも通じるわけではない。裏を返せば、今は消化不良感のある三好や三笘薫も、そのセンスは違う相手にこそ、生きる可能性もある。
 
 良い試合だった。戦う気持ちがあった。粘り強かった。ゲームコントロールも効いた。しかし、見据える場所は、もっと先。さらなる成長を期待している。
 
文●清水英斗(サッカーライター)