15位に低迷していた横浜Fマリノスは、日曜日の神戸戦に従来とは異なる布陣で臨んだ。4-3-3から3-4-2-1へ。まさに大転換を図った。

 横浜Fマリノスと言えば、今季、元オーストラリア代表監督アンジェ・ポステコグルーを招き、開幕からここまで攻撃的サッカーを全面に打ち出して戦ってきた。

 両サイドバックをやや内側に構えさせ、両ウイングの内側に走り込ませるかつてのドイツ代表っぽいスタイルを取るなど、見どころの多い華のあるサッカーを展開してきた。後ろでボールを奪う機会が目立った前任監督エリック・モンバエルツのサッカーより見栄えは断然よかった。しかし成績はサッパリ上がらなかった。降格圏すれすれの所を推移していた。

 Jリーグ発足以来、鹿島アントラーズとともに一度も降格したことがない名門だ。降格を回避しようとすれば、何らかの手段を講じる時を迎えていた。選手を補強するか監督を交代させるか。そのどちらかと思っていたところ、答えはそのどちらでもなく、4-3-3から3-4-2-1への布陣変更だった。

 攻撃的サッカーから守備的サッカーへ。一言でいえばそうなる。開幕当初から掲げてきた看板を降ろしたことになる。

 ボール支配率を比べてみれば一目瞭然。4-3-3で戦った最後の試合(鹿島戦=0-1)は、62.5%対37.5%だったのに対し、3-4-2-1に変更した神戸戦(2-1)では39.5%対60.5%。見事なまでに変化している。

 同じ監督が全く別のコンセプトのサッカーを、シーズン途中からやり始めたわけだ。高い位置から奪いに行くサッカーから、5バックで守るサッカーに転じることは、以前にはイエスだったものがノーになることを意味する。

 カラーを一変させたわけだ。それでチームはまとまるのか。監督に信頼感は抱けるのか。監督交代した方が話はスッキリする。だが、横浜Fマリノスはポステコグルーを続投させた。

 もっとも、ポステコグルーに対する印象は攻撃的ではなかった。オーストラリア代表監督時代に日本代表と戦った際の印象に基づけば守備的だった。したがって、横浜Fマリノスの試合を今季始めてみたとき、この監督、こんなサッカーする人だったんだと、驚かずにはいられなかった。

 あるいは神戸戦のサッカーこそが、彼本来のサッカーなのだとすれば、これまでは何だったのかという話になるが、いずれにしても横浜Fマリノスのサッカーがいま、大転換したことは間違いない。

 事件と言ってもいいレベルだが、世の中の反応は鈍い。突っ込みを入れるメディアはない。試合は2-0の勝利で、久保建英がJ1初ゴールを決めたことも影響しているのかもしれないが、このメディアの沈黙はポステコグルーにとっては幸いだろう。

 後ろめたさは少なからずあったハズだ。覚悟の上での変更だったと思われるが、叩かれることはなかった。ポステコグルーより反応が悪い日本のメディアの方が心配になる。

 同種の変更は日本代表でも起きていた。西野ジャパン以前の日本サッカーは、4-3-3か4-2-3-1だった。それが森保新監督誕生とともに3-4-2-1に変化。日本は監督交代を機にカラーを変えた。哲学を変えたといっても言い過ぎではない。

 だが、変更した理由についての説明は、関塚隆技術委員長からも、田嶋幸三会長からもなかった。そしてそれについて突っ込まれることもほぼなかった。批判精神の欠如というより、それがどれほど大きな意味を持つか認識していないからだろう。

 森保監督が「相手に対して柔軟に対応する」と述べれば、例えばアナウンサーは「柔軟」をキャッチフレーズであるかのように伝えようとする。具体的にそれは何を意味するのか。咀嚼することなく。柔軟の中身は何か、本当にそのサッカーは柔軟なのか。その日本語をサッカーに落とし込んだとき、ピッチ上に落とし込んだとき、具体的に何を指すのか。カラーや哲学は柔軟に変えるべきものなのか。世の中に成功例はどれほどあるのか。疑おうとしない。

 解説者も、選手にはダメ出しをしたり、苦言を呈したりするが、監督采配には、ほぼ一切、触れようとしない。不自然極まりないとはこのことだ。

 横浜Fマリノスは、日本代表は、いかなる理由で布陣を3-4-2-1に変えたのか。いまメディアが報じるべきはこの点だ。それぞれの従来のサッカーを攻撃的とするなら、現在のサッカーは守備的だ。

 変えるなら堂々と、その理由をもっと明快に、もっと丁寧に説明せよと言いたい。こそこそする理由は自信がないからだと思う。柔軟の一言で誤魔化されては、なによりファンのサッカー学が向上しない。

 広島時代、森保監督は記者会見の席上で「これからは3バックが流行るでしょう」と述べたことがある。言葉は穏やかだったが、柔軟同様それ以上の説明はなし。乱暴に言い放ったも同然だった。

 自分のサッカー哲学を、メディアを通してなぜファンに伝えようとしないのか。

 それをせずに次に進むことが許されている日本。ポステコグルーはその緩い現実を見て、これなら突っ込まれることはないと安心したのではないか。舐められてしまったという印象だ。

 こんなことがまかり通る日本。サッカー後進国だと思う。