40代女性は"不倫とバツイチ"に悩みがち

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40代の男女は恋愛についてどんな悩みを抱えているのか。博報堂生活総研がQ&Aサイト「OKWAVE(オウケイウェイヴ)」に投稿された5万件の「恋の悩み」を世代別・性別で分析したところ、40代女性は「バツイチ」「奥さん」「待つ」、40代男性は「容姿」「不細工」といった言葉が多かったという。背景にはなにがあるのか。博報堂生活総研の酒井崇匡上席研究員が考察する――。(第2回/全3回)

■5万件の投稿から40代の恋を分析する

博報堂生活総合研究所の持つ生活者観察手法(エスノグラフィ)の視点でデジタルデータを分析する「デジノグラフィ」の試み。第1回に引き続き、日本初、最大級のQ&Aサイト『OKWAVE(オウケイウェイヴ)』に集まった恋愛相談、恋の悩みの分析結果をご紹介します。この分析はオウケイウェイヴ開発本部の齊藤学シニアエンジニアのご協力のもとで実施しました。

第1回では20代男女の恋の悩みについて掘り下げましたが、第2回では40代男女の恋について見ていきます。オウケイウェイヴの恋愛カテゴリーに寄せられた直近5年間の質問約9万件のうち、40代男女の質問投稿数は約8000件と1割弱を占めています。

齊藤さんによると、40代は恋愛カテゴリーでは質問者というより回答者として投稿される方も多いそうですが、彼ら自身が投稿した質問内容を分析してみると、年代の近い私としても身につまされる結果が出てきました。20代の分析と同様に、質問文中の頻出ワードについて男女それぞれにどのようなものが特徴的に出てくるのか見てみましょう。

■容姿の悩みは男性のほうが根深い

まず驚かされるのは、男性のみに出てくるワードの上位のほとんどが「外見の悩み」であることです。具体的な質問内容では、たとえば「ハゲはダメか」という見た目のこと、ほかには「彼女ができない容姿とは?」「髪型や清潔感、ファッションに気をつけているけど彼女ができないのはなぜ?」といった質問が投稿されていました。

20代でも、「イケメン」など容姿に関するワードは男性のみに頻出していましたが、その傾向は40代でさらに顕著になっています。この背景として、40代になると容姿の悩みが年齢とともに新たに出てくるということと、もともとあった容姿の悩みがさらに深くなるということの二つが考えられます。

この点については、分析にご協力いただいたオウケイウェイヴの齊藤さんによると、「40代の未婚男性は、『恋人ができない原因はこの容姿しかないんじゃないか』というふうに思ってしまうことが多いようです。20〜30代で仕事にうち込んで、趣味も頑張ってみたけどダメだったとすれば、最後は容姿を考えてしまうのかもしれません」とのことでした。いずれにしても、男性のほうが容姿の悩みが深く、なかば卑屈になっているような面があるのは気にかかりました。

その一方で、女性では容姿に関するワードは上位の中に含まれていません。念のため、今回の分析では頻出ワードを各年代の男女それぞれで1000語ほど抽出したのですが、その中でさえ、例えば「美人」とか「ブサイク」、「容姿」というようなワードは含まれていませんでした。どうも女性はこと恋愛に限っていえば、男性のように「美人じゃないと」とか、「容姿のせいで」とは、あまり悩まないようです。

これは女性が全く容姿を気にしない、ということではもちろんありません。むしろ女性にとって容姿は化粧などであまりにも日常的に気にするものになっており、異性よりも同性の評価のほうが厳しい場合もあるため、恋愛というくくりで考えるものではなくなっている、と見たほうが良いでしょう。

■「何故」という疑問をぶつける40代男たち

「何故」というキーワードも男性に偏って出現しています。具体的な質問としては、「なぜ結婚できたの?」と既婚者に質問するものや、「なぜ異性と全く出会えないのか」、「もうこの国では恋愛困難ではないのか?」というような声もありました。

このような一人ひとりの声をマクロデータで検証するのも重要です。厚生労働省の人口動態調査や出生動向基本調査から推計すると、恋愛結婚の数は実は1970年代からそれほど変わっていません。見合い結婚や職場結婚が大きく減少した分、未婚化が進んでいるところが大きいのです。そもそも恋愛結婚する人はどの時代も一定で、そこに入らなかった人が未婚化しているからこそ、婚活サービスには社会的な意味もあるのでしょう。

一方で、「なぜ不細工な男と付き合ってしまうのか」という質問も見つかりました。これについては女性の回答者から「不細工は浮気の心配がない」という意見も寄せられていたのですが、この分析をサポートしてくれていた女性スタッフは「そんなことないですよ。不細工、ナメちゃいけないですよ。浮気しますよ!」と訴えていました。なんとも言いにくいですが、そこはまぁ人によるんでしょうね。

■複雑な事情が増える40代女性

40代女性の頻出ワードも見てみると、女性に偏って頻出しているものの中に、「遠距離」、「連絡」、「待つ」というワードが出てきています。具体的には、「婚活で遠距離はむずかしい?」や、「連絡を待ってしまうのは未練がある証拠ですか?」、「忙しくて会えないという彼から連絡を待っている状態なんだけど、これはどうしたらいいのか」といった質問が投稿されています。

このような悩み自体は40代女性だけに限ったものではないでしょうが、40代は20代に比べて悩みの背景により複雑な事情を抱えていることが多い、ということはあるようです。

例えば、女性にのみ出現しているワードの1位が「奥さん」であることからも分かる通り、この世代では不倫についての相談も多く見られます。また、「30代」というワードも女性に偏って頻出していますが、これは「30代の同僚が気になる」、「30代独身男性に聞きたい」といったように、年下への恋に関連した相談で出てくるワードです。

■「バツイチ」が頻出する理由

あるいは、「バツイチ」というワードも女性に偏って出現していますが、こちらは「婚活中の人が、バツイチかどうかメールなどで最初に聞いていいか」だったり、「バツイチ子持ちの人と恋愛を進めていいか」、「離婚して新しく彼女ができたら元妻と比較するか」といったように、相手の男性の結婚歴を気にする相談が多いためです。厚生労働省の人口動態統計年報の再婚に関する統計でも「男性が再婚で女性が初婚」というパターンのほうが「男性が初婚で女性が再婚」というパターンより多いため、女性のほうが相手の離婚歴を気にする機会が多いのでしょう。

このように、年代が上がることで女性の悩みは20代に比べて多様化しているようですが、容姿に悩んで悶々としている男性に比べ、女性のほうが次のアクションにつながりやすい能動的な相談が多い、というのも傾向として見えてきました

次回はさらに上の年代、60代男女がどんな恋の悩みを抱えているのかご紹介していきます。また今回の一連の分析から、デジノグラフィが持つ今後の可能性について考えてみたいと思います。

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酒井 崇匡(さかい・たかまさ)
博報堂 生活総合研究所 上席研究員
2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、教育、通信、外食、自動車、エンターテインメントなど諸分野でのブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。2012年より博報堂生活総合研究所に所属し、日本およびアジア圏における生活者のライフスタイル、価値観変化の研究に従事。専門分野はバイタルデータや遺伝情報など生体情報の可視化が生活者に与える変化の研究。著書に『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。

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(博報堂 生活総合研究所 上席研究員 酒井 崇匡 写真=iStock.com)