北朝鮮戦で先制点を決めた岩渕。昨年敗れた相手にリベンジを果たした。写真:早草紀子

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 4月の女子アジアカップに続き、今年ふたつ目のアジアタイトルを狙うなでしこジャパンが挑むアジア大会準々決勝の相手は、前回女王の北朝鮮だった。北朝鮮といえば、どの世代でも必ず女王争いに絡む言わば宿敵。かつてその牙城は揺るぎないものとされ、日本との差は歴然としていた。ここ数年の日本はライバルとして肩を並べる存在になっているとはいえ、昨年のE-1選手権では0-2で完敗し、改めてその実力を見せつけられた。
 
 そのリベンジマッチとなった準々決勝。負ければアジア8強敗退という屈辱を味わうことになる。出来うる限りの想定をして臨んだことで、ある程度は日本のポゼッションサッカーに引き込むことには成功した。
 
 一方、北朝鮮はカウンターに絞り、ゾーンで守備を固める。そこへ切り込んでいくのは岩渕真奈(INAC神戸)だ。初戦のタイ戦では個の力で貴重な先制ゴールを決めた。そして、この山場の一戦でも決めたのはやはりエース岩渕だった。
 
「他国より日本の技術は間違いなく高い。ゴールが欲しい気持ちだってある」
 北朝鮮戦を前に“決定力不足”を最大の課題と挙げられるFWとして忸怩たる想いがあった。“質”という言葉でも表現できない何かがあるのか――「バランスなのかな。気持ちが強すぎてもダメ。決めなきゃではなくて決めたい!っていう気持ちを大きく持つ」(岩渕)。最後に加えなければならないピースが何なのか、「永遠のテーマだ」と言っていた岩渕。
 
 そして、“その時”は40分に訪れた。中島依美(INAC神戸)のCKを田中美南(日テレ・ベレーザ)が折り返し、DFがクリアしようとするところを寸前で岩渕が押し込んだ。練習を重ねてきたそのままの流れでのゴール。セットプレーからの得点が極端に少ない日本にとってこの得点は先制点以上の価値があった。
 
 これまでは北朝鮮のパワーに押され、中盤を支配できず、分かっていてもサイド攻撃に沈むという展開を繰り返してきた。難しいことをするでもなく、シンプルな攻撃であっても、北朝鮮の勢いを止めることは簡単ではない。今回、北朝鮮はかなり組織の構築に力を入れてきていた。パスのつなぎも人数が関わってより緻密になり、そのサッカーには変化が見えた。
 
 ただし、ショートパス主体のスタイルでは日本の方が一枚上手。後半に攻め込まれはしたが、無理に前線へつけたところを収め切れずに逆襲を受けた形が多く、力負けしたわけではなかった。2-1というスコア以上の差を示しながらの勝利だった。
 
「積み上げてきているものはある」とたびたび言葉にするのは高倉麻子監督だ。メンバーを固定せずに底上げを図った2年は、選手たちにとってはその成長が目に見えにくい苦しい期間でもあった。「この試合に勝つことで成長を証明しようと話していた」(岩渕)。国内組で北朝鮮をイメージ通りの攻撃で打破したことは、成長以外の何物でもない。ここで生まれた課題は、すべて期待値だ。
 
 まだ準々決勝。グループ1位で通過したにもかかわらず、トーナメントでは最も過酷な山にあたっている理不尽さは拭えないが、アジアの強国すべてを撃破すれば名実ともにアジアのトップに立つ。目指すべき場所まであとふたつだ。
 
取材・文●早草紀子