長時間労働による被害・過労死はどうやって防ぐ?労災認定基準も解説

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2016過労死・過労自殺は年間191件。労災認定されていない実数はもっとある

大手居酒屋チェーンで仕事中に死亡した男性店長(被災者)の遺族が、被災者のスマートフォンの位置情報の記録をもとにして労災申請をし、労働基準監督署が労災として認定した、という報道がありました(なお、本件では代理人弁護士による報告では、労基署の認定ではスマートフォンの情報は証拠として認められず、その他の証拠から労災を認定したとのことです)。

厚生労働省の2017年版「過労死等防止対策白書」では、2016年に認定された過労死・過労自殺(未遂含む)の件数は191件となっています。また、労働基準監督署で労災認定されていないが過労死であると考えられるケースを含めると実数はさらに増えると考えられ、過労死や過労による労災は社会問題といえるほどになっています。


「過労による労災」の認定基準とは

「過労による労災」とは、大きく分けて

1.長時間労働により脳・心臓疾患を発症した事案2.長時間労働やストレス等により精神疾患を発症した事案

の2つに分けられ、それぞれについて厚生労働省が詳細な認定基準を策定しています。

このうち、脳・心臓疾患については「発症前1か月間におおむね100時間、又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働」などが認定基準として示されています。また、精神疾患の認定基準についても長時間労働を労災認定の判断要素としています。

過労が心身にあたえる悪影響は現在では一般的に認識されていますが、労災認定の場面では「長時間労働の証明がない」ということで労災認定がなされないケースもあり、労災の判断が訴訟において争われることも少なくありません。

過労による労災を避けるには長時間の時間外労働をしないのが一番だが…

本稿において、全ての労災基準を網羅することは紙面の都合上できませんので、長時間労働の点に絞って、過労から自分の身を守るために何が必要なのか解説します。長時間の時間外労働をしない

まず、言うまでもありませんが長時間の時間外労働をしないことが一番です。今般成立した「働き方改革法」では、月の時間外労働が100時間を超えた場合に罰則を設けるとしています。しかし、月の時間外労働が100時間ということは、1か月の勤務日が22日(週休2日)としたら、平均の残業時間は毎日4.5時間強ということになります。

これは、9時〜18時勤務の場合、毎日22時30分まで残業している、ということを意味します。「過労死ライン」と言われる月80時間の時間外労働でも、1日平均にすると約3.7時間になります。「100時間(または80時間)までは時間外労働しても良い」というわけではない

なお、過労死ライン未満の時間外労働であってもそのほかに心理的負荷となる事情の有無や、長時間労働が一時的かどうかなど、種々の事情を考慮して労災の判断がなされます。過労死ラインは「100時間(または80時間)までは時間外で働かせて良い」ということを意味しませんので、注意が必要です。

もし自分の仕事が過労死ラインを超えている場合、あるいは恒常的な長時間労働がある場合には、直ぐに弁護士に相談されるべきです。

長時間労働の立証は困難な場合がある

仮に長時間労働で体調を崩した、あるいは不幸な結果が生じた場合、まずは労災認定がなされるかが問題となりますが、長時間労働の立証において困難を極めることがあります。タイムカードとは別に自分の勤務時間を記録しておくことが重要

長時間労働の立証は通常はタイムカードや出勤簿で行いますが、タイムカード上は残業時間がないように見せかけている場合も少なくありません。この場合には、労働者自らが勤務時間を記録しておくことが重要になります。冒頭の事例では、スマートフォンの位置情報が話題になりましたが、実際の認定では「会社にいたことは分かるが、その間仕事していたかどうか不明である」とされ、それだけでは証拠とはならなかったと聞いています。業務内容・時間を事細かに記録しておく

例えば「何時から何時まで、どのような仕事をした」というメモや、自分宛に会社からその日の仕事の内容を送ったメール、出退勤時刻が分かる写真、あるいは同僚の証言などから労働時間を認定していくことも有効と言われていますので、まずは仕事の時間と内容を事細かに記録していくことが重要だと思われます。

「仕事に殺されない」ためにはまず労働者自らが身を守ることが必要

「ブラック企業」が社会問題になって久しいですが、長時間労働の問題は改善の兆しがありません。今般成立した「働き方改革法」では「長時間労働の是正」が謳われていますが、その規定の内容からは、残念ながら長時間労働による過労死や過労被害を防ぐことはできないと思われます。「仕事に殺される」被害に遭わないためには、当面は労働者自らが自分の身を守っていく必要があると言わざるを得ません。

もし「自分の会社がおかしい」と思った場合、まずは自分の命を一番に考えてください。そのうえで、弁護士などの専門家に相談して、最善の対策をされることをお勧めします。

【半田 望:弁護士】

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