鬼門の準決勝を突破したヤングなでしこ。初優勝へ視界は良好だ。(C)Getty Images

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 U-20日本女子代表がフランスで行なわれているU-20女子ワールドカップの準決勝で勝利し、日本女子サッカー史上初めて同大会の決勝に進んだ。
 
「歴史を塗り替える」
 今大会の登録メンバーが発表された後、何人もの選手が話していたことは、ついに現実のものとなった。
 
 過去のU-20女子ワールドカップで、日本は2012年大会と2016年大会で準決勝敗退となり、3位になったことはあるが、決勝の舞台は未体験の領域。鬼門とも言える準決勝を突破し、チームはさらに勢いづいている。
 
 今回のU-20日本女子代表のキーワードを挙げるならば、それは『ハードワーク』だろう。池田太監督が何度も口にする「ハードワーク」を、選手たちはチーム立ち上げから実践し、昨年10月に中国で開催された U-19アジア女子選手権で形にし、今大会も実直に続けている。
 
 池田監督が掲げるハードワークとは、まず前線と中盤の計6人が、相手が動かすボールや相手選手の立ち位置を観察しながら、相手選手の間に立つように細かくポジションを動かす。そして、中盤にパスが入りそうになると、すぐプレッシャーをかけられるよう90分間準備をする。
 
 特にU-20世代は、技術が成熟していないために、世界大会とは言えトラップのズレやパスのズレが生じやすい。日本のプレッシャーが早ければ早いほど、相手のミスの数は増加していくのだが、その相手の少しのズレを見逃さずに1人または2人でボールを奪いに行き、そこを日本の攻撃の第一歩とする。ボールホルダー以外は、すぐさま空いたスペースに飛び出してボールを受けて、素早くゴールを目指していく。
 
 今大会、相手の最終ラインが整っていないうちに日本が得点できているのは、そういった狙いの下でミスを誘い、ボールを奪い、攻撃に移行できているからだろう。
 
 何度も相手のミスを誘うには、常に相手にプレッシャーをかけ続けなければならない。そこで必要になるのがハードワークだ。ボールがどの位置にあっても、互いに指示しながら休みなく細かくポジションを修正し、ベストな立ち位置でボールを奪えるチャンスをうかがう。
 
 これには最終ラインやGKからの指示がなければ成り立たないため、各ポジションの互いの情報共有も、池田監督が重要視しているところだ。
 
 2年前の前回大会を経験したDF宮川麻都(日テレ・ベレーザ)が「今回のメンバーは、前回の(長谷川)唯さんやモミさん(籾木結花)のような選手はいないから、まず全員でハードワークすることが不可欠」と冷静に話せば、キャプテンのDF南萌華(浦和レッズレディース)は「(ボールがない)逆サイドの選手の絞りなど、ボールがどこにあっても全員が集中を切らさないことがハードワークの原点。それが失点の少なさにもつながる」と、チームメイトの高い守備意識を誇らしげに話す。
 
 当然ながら、こういったハードワークはなでしこジャパンが最も得意としてきたところだ。U-20世代から、このような緻密なハードワークで決勝の舞台まで進んだ経験は、なでしこジャパンを目指す若い選手たちにとっても非常に有意義だ。
 
 特にMF長野風花(仁川現代製鉄レッドエンジェルズ/韓国)が今大会で見せている素早い切り替えや、MF林穂之香(セレッソ大阪堺レディース)が持つ危険察知能力は、さらに経験を積めば、なでしこジャパンでも生かせる部分が多い。類まれなテクニックを持つMF宮澤ひなた(日テレ・ベレーザ)という名前を覚えてスタジアムを後にしたフランス人も、多くいるだろう。
 
 フランス時間の2018年8月20日。日本女子サッカーの歴史が塗り替えられた。そしてまた、新しく歴史を塗り替えるチャンスが待っている。決勝は2018年8月24日(日本時間25日)だ。
 
取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)