GKオビ(12番)のパスを受け損なった神谷(7番)。確かに処理の難しいパスではあるが、それ以上に気になったのは……。(C)Getty Images

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[アジア大会]U-21日本代表0-1U-23ベトナム代表/8月19日/インドネシア

 アジア競技大会グループステージ第3戦、U-21日本代表はU-23ベトナム代表に0-1で敗れ、2位通過に。決勝トーナメント1回戦は、グループEで韓国を破って1位通過を決めた、マレーシアとの対戦となった。
 
 前半は終始、ベトナムのペースだった。日本のビルドアップは、ボランチにボールを預けるか、3バックの左右がドリブルで持ち上がるか、だいたいこのパターン。ところが、いずれも強度の高いベトナムのプレッシングに封じ込められた。ボールを持つだけで、ほとんど中盤を打開できていない。
 
 圧力を受ける中で、日本は前半3分に決定的なミスを犯した。GKオビ・パウエル・オビンナのパスをMF神谷優太がトラップに失敗して奪われ、そのまま流し込まれてしまう。この失点が勝敗を分けた。
 
 このシーンの問題はなんだったのか。寄せられた味方にパスを出したGKオビの判断、あるいはMF神谷の状況認知と技術。それも確かだが、気になったのは、GKオビのポジショニングだ。
 
 最初に原輝綺からバックパスを受けた時、GKオビは右サイド側に開いたDF立田悠悟にボールを預けた。そして逆の左サイド側へ行き、ゴールを挟むように、DF立田から離れてサポートしている。
 
 ところが、立田からリターンパスが出て、再びGKオビがボールを持った時、ベトナムの1トップ、ハー・ジューク・チンが立田への横パスを切りながら、GKオビに寄せてきた。つまり、逆サイド側に広がってサポートしたことで、GKオビは選択肢がワンサイドに追い込まれている。その状況で神谷へのパスを選んだが、狙いを定めたベトナムのプレスの餌食になった。
 
 もちろん、GKオビが立田から離れてサポートしたのは、逆サイドへの展開を考えてのことだろう。しかし別段、ベトナムの守備が右サイドに偏っていたわけではない。サイドを変える効果は薄く、実際にプレスを食らっている。
 近ごろ筆者が構成を担当した『ドイツ式GK技術革新』(著・川原元樹)では、このようなGKの“離れるサポート”は、相手がまったくプレスに来ていない状況以外では、望ましくないものとされている。

 基本的にGKは寄るサポートをするべきで、この場面で言えば、立田との距離を保って数的優位を生かしつつ、サイドへの展開と、FWの間を除いて真ん中へ確実に通すパスを狙う。

 そして最悪、タッチラインを沿うクリアで逃げる道も用意する。このような方法がセオリーとされた。この失点は単なる技術やメンタル云々で片付けず、GKオビのポジショニングを見直す必要があるのではないか。「あ〜蹴っときゃ良かった」という程度の振り返りでは、進歩がない。
 
 また、GKオビの離れるサポートにより、ワンサイドに追い込まれたことで、さらに複数のデメリットが生まれたことも確かだ。
 
 立田へのパスコースを切られたGKオビは、身体を立田へ向けたまま、横殴りのワンタッチパスで中央の神谷へ出した。キックが横殴りであるために、ややボールの下側を叩いてバウンド性のパスになってしまった。さらに横回転もかかり、受け手に優しくない。技術的に神谷を苦しめるボールだった。
 
 もちろん、そんなパスは試合中ならいくらでもある。だが、GKから真ん中のエリアへ出すパスだけは、常に100%でなければならない。
 
 たとえワンサイドに追い込まれたとしても、ファーストコントロールで確実に持ち出し、そこから杉岡大暉と神谷を見つつ、もうひとつ奥へのミドルパスも踏まえ、GKには確実な配球をして欲しいところ。1トップのチンが寄せてきたとはいえ、そのくらいの余裕はあったはず。
 
 さらにもうひとつ、このシーンを難しくしたのは、GKオビと神谷が真っすぐ縦に並んでしまったこと。逆サイド寄りにGKオビが広がったことで、縦のレーンが神谷と同じ位置になってしまった。
 
 結果的に神谷は斜めのボディシェイプを作ることができず、ベトナムのプレスを真後ろで受けることに。相手を視認しづらい状況になり、ボールが転がる間にキョロキョロと首を振ったが、そこにバウンドが跳ねたGKオビのワンタッチパスが来て、トラップに失敗した。
 
 もちろん、より技術のあるMFならば、うまく処理できたかもしれない。だが、返す返すもこのエリアでは、確実なプレーを選択したいところだ。
 
 もし、森保ジャパンがGKからのビルドアップを戦術に組み入れるのなら、ハイプレスに対するポジショニングと判断を、もっと整理しなければならない。決勝トーナメントの最中にどこまで解決できるだろうか。
 
文●清水英斗(サッカーライター)