「1週間、この試合に向けて取り組んだものが何ひとつできなかった」

 試合後の記者会見で、ヘタフェのホセ・ボルダラス監督は、2-0のスコア以上に力の差を見せつけられた、レアル・マドリードとの一戦を振り返った。

 レアルはチャンピオンズ・リーグ(CL)3連覇を達成したカリスマ監督ジネディーヌ・ジダンと、現代を代表するカリスマストライカー、クリスティアーノ・ロナウドが退団(イタリアのユベントスへ移籍)。その影響が注目されていた。

 だが、終わってみればシュート数の10対5こそそれほど大きな差ではなかったものの、ポゼッションが78%対22%、成功パス数は724対145と、数字を見ただけでも、どちらが試合を牛耳っていたかは明らかだった。


レアル・マドリード戦に先発フル出場を果たした柴崎岳(ヘタフェ)

 この試合で、日本代表MF柴崎岳は先発フル出場を飾った。だが、そのパフォーマンスは、低調に終わったチームにシンクロするかのような出来で、ヘタフェサポーターや日本のファンを満足させるものではなかった。

 柴崎はマルセロ、イスコ、マルコ・アセンシオを中心としたレアルの攻撃の前に後手に回る時間が長く、後半、しかも終盤になるまで枠内シュートを1本も打つことができなかった。柴崎は試合後のミックスゾーンに姿を見せることはなかった。

 地元紙の予想ではサブスタートだったが、蓋を開けてみれば、昨シーズンの開幕戦に続いて予想外の先発出場となった柴崎。しかし、「チームの思惑は違うところにあった」と、ヘタフェの番記者は語る。

 柴崎はこの夏、CL出場権を持つクラブへのステップアップを求めている。一方、ヘタフェも、チーム事情から選手を放出して金に換えることを必要としている。

 放出の一番の候補だったのはDFデコナン・ジェネだが、噂されたプレミアリーグのクラブへの移籍がなくなった。それ以外にジェネに興味を示しているのはセビージャだけだが、3000万ユーロ(約39億円)といわれる違約金を払うことができないため、ヘタフェ残留が濃厚になっている。

 そんなときに白羽の矢が立ったのが、ロシアW杯で好パフォーマンスを見せた日本人MFだった。これまでにポルトが興味を示し、獲得の打診があったとのことだが、ヘタフェは2000万ユーロ(約26億円)の違約金を柴崎譲渡の条件として設定した。もちろん、これは駆け引きのための金額であり、1500万ユーロ(約19億5000万円)を手にすることができれば、満足して放出するつもりでいたといわれる。

 だが、レギュラーでもなく、言葉もわからない日本人選手を獲得するために、1000万ユーロを超える金額を払うチームはそうはない。ドイツのクラブも柴崎獲得に興味を示しているが、どのチームも財布の紐は固い。

 だからこそ、移籍市場が開いている間の試合となったリーガ開幕戦で、クラブは柴崎がチームの勝利の力になることを示したかった。できるだけ高い金額で獲得してもらえるように品定めしてもらうためにも、先発で出場する可能性が高まったというのが、現地の記者の説明だ。

 サンティアゴ・ベルナベウで行なわれたレアル・マドリード対ヘタフェ。レアルは、ロナウドがいなくなったことで、絶対的エースの存在という怖さが消えてしまったのは確かだった。観客動員にしても、ロナウドが加入する前に戻ったかのような4万人台という平凡な数字で、満員が当たり前だったスタジアムにはチラホラと空席が目立った。それでも、レアルは十分な強さを見せてくれた。

 ヘタフェにとっては次節のエイバル戦こそ、本当の開幕戦といえるものになるだろう。現時点では、柴崎が退団に動くのか、残留するのかはわからない。ただ、移籍を実現させるためには、少なくともホームでのエイバル戦で、ゴールに絡むような高いパフォーマンスを見せる必要がありそうだ。