鬼丸昌也・小川真吾著『ぼくは13歳 職業、兵士。』

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「目はうつろで、顔の表情はまるでロウ人形のように硬直している」。

 NGO(非政府組織)で元子ども兵士を支援する2人の著者は、調査活動で初めてウガンダを訪れたとき、恐怖を感じたままの表情をしている元子ども兵士が、あまりにたくさんいる現実に驚いた。

ウガンダでは、誘拐した子どもを兵士にするために、母親殺しを命じたり、腕を切り落とさせたりするなど、残虐行為を強制することが日常化しているという。残虐行為を地元でさせることで、子どもは逃げ場をなくす。残虐な行為をさせ、子どもの頭が真っ白になったところで洗脳し、何も恐れない兵士を作る。

 子どもは中世から戦争に参加している。武器の手入れや身の回りの世話など、戦闘以外を任されてきた歴史がある。しかし、その役目は変わった。

自動小銃、携帯対空砲、地雷など、軽くて、小さくて、操作が簡単な小型武器が大量に出回るようになった現代、子どもも戦闘要員として捉えられるようになった。兵士を“調達”するために、紛争地で子どもの誘拐が頻繁に起こっている。地雷原を突き進み、残虐行為をするのは、子どもの“仕事”だ。大人にはできない“仕事”を円滑に進ませるため、麻薬漬けにされる例も多い。

 子ども兵士を支援する著者らは、根本的な原因である小型武器廃絶を訴えている。大国が小型武器のほとんどを生産し、利益を得ている一方で、貧困対策以上のお金を費やして、武器を購入している途上国がある。

 小型武器の犠牲者は、年間50万人。驚くべきことに、そのうち20万人は、先進国を含む、紛争地以外での犠牲者だ。子ども兵を作り出している小型武器は、紛争地以外にも犠牲者を増やし続けている。著者は「犠牲者の数からいえば、小型武器は事実上の大量破壊兵器」という、国連のアナン事務総長の発言も引用している。小型武器は、うつろな目をした子どもと、先進国にいる我々に、共通の問題を投げかけている。

 著者は、武器をなくすなど「夢のまた夢」と言う専門家の存在を認めつつ、同じく夢と言われていた対人地雷が禁止された過程を例に、一歩でも進むことの重要性と、伝えることの必要性を訴えている。(合同出版、2005年11月、1365円)【了】

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