いやあ驚いた。あの硬派の良識の塊みたいな役で主演ばかりしている西島秀俊が、いともあっさりと2人も殺してしまうトンデモドラマなんて、超びっくり仰天だ。真夏の夜にはお化けドラマが定番なのに、今回はひとひねりして米澤穂信のミステリー短編集から、3篇のドラマ化。演出には映画監督の萩生田宏治があたった。

東南アジアの資源開発に突っ走ってきた商社マンの伊丹(西島秀俊)は、天然ガス資源が眠る現地の反対派の長(おさ)に金をちらつかせて権利を買おうとする。もう1人、ライバル会社の森下(近藤公園)と共に説得に向かうが頓挫する。一方、現地民の長老は賛成派で金も欲しい。対面した伊丹と森下に平気な顔で「長を殺せ」という。普通はここで「殺すなんてとんでもない」となるのだが、「埋蔵資源という名の神が自分を突き動かしている」「日本の夜をこの資源で輝かせたい」と凝り固まっている伊丹は長を轢き殺す。

挙句の果てに弱気になった森下までレンタカーの中で絞殺するのである。つまり、企業戦士の中の「仕事を成就させたい」狂気が、一見まともに見える紳士風の商社マンの頭の中からムクムクと湧き出てきて、殺人まで突っ走る怖さ。スコールや熱風や、日本とは違う食い物など、あらゆる条件が苛酷な、出先での人間に与える影響を暗に指摘しているように見える成り行きである。普通人の殺人者という観点から見ると一概に「ウッソー」とも言えない気がする。(放送2018年8月14日22時〜)

(黄蘭)