「スカルプD メディカルミノキ5」のテレビCMのワンシーン。草磲剛さんと香取慎吾さんが「ミノキ兄弟」として登場する(画像:アンファー)

19年ぶりの新規参入――。化粧品やシャンプーなどの企画・開発、販売を行うアンファー(東京都千代田区)は8月8日、発毛剤「スカルプD メディカルミノキ5」を発売した。大正製薬の「リアップ」と同じ発毛成分「ミノキシジル」が5%配合されている。1999年のリアップ発売以降、初めての後発品だ。

発売前の5日には、元SMAPの草磲剛さんと香取慎吾さんが、インターネットテレビ「アベマTV」の番組内で“緊急記者会見”を開催。新製品とテレビCMをサプライズ発表した。

「ミノキなら、生える」。CMでは草磲さんと香取さんが、薄毛・抜け毛に悩む「ミノキ兄弟」として登場する。CMは全国で放送されているが、最初の発表をネットテレビで行うのは異例。さらに今回のCM制作は、大手広告代理店・電通と博報堂以外の代理店が手掛けている。

アンファーはなぜこうした手法を使ったのか。

20〜30代の若い世代を狙う

同社は自社サイトを中心に、アマゾンや楽天市場などネットでミノキ5を販売する。同製品は薬剤師からの情報提供が必要な第1類医薬品だが、同社が自社サイトで第1類医薬品を扱うのは初めてだ。

リアル店舗では、ドラッグストア大手のマツモトキヨシで買うことができるが、当面は薬剤師や管理栄養士が常駐する「マツキヨ ラボ」の11店のみでの販売になる。アンファーは初年度での売上高20億円を目標にする。

発毛剤の中心購入層は40代以上だが、アンファーは20〜30代の若い世代を狙う。「薄毛治療を行うクリニックへの問い合わせの7〜8割が20代からというデータもある。若い世代には潜在的なニーズがある」(同社)。

ネットで若い世代に訴求する戦略は、まずは当たったようだ。5日夜に草磲さんと香取さんが製品を発表した後、翌朝7時までの半日で「スカルプD」のツイート数は4741件に上った。ミノキ5を男性用の薬用シャンプーとして知名度の高いスカルプDシリーズで発売したのも、若い世代を意識してのことだ。


「スカルプD」を強調して、若者層に訴求する(テレビCMのシーンから抜粋、画像:アンファー)

ネットシフトに加えて、ミノキ5にはもう1つ特徴がある。60ミリリットルで税込み7800円と、大正のリアップより190円高く価格を設定したことだ。4本セットを購入した場合、使用後に提携クリニックで初診を無料で受けられるサービスがつくとはいえ、後発品が先発品より価格を高くするのはまさに異例だ。

アンファーのこうした戦略には伏線があった。実はアンファーは昨年10月に発毛剤を投入する手はずだった。当時もネット販売を主軸にしていたが、マツキヨが全面的に取り扱う計画で、同社とのタイアップの要素が強かった。発売に合わせて、マツキヨの営業担当幹部も同席し、都内ホテルで大々的に記者会見を開いたほどだった。

ところがその後発薬は発売からわずか2日で”幻”になる。添付文書に販売承認時と異なる効能説明のイラストがあることが判明。それを指摘したのは大正だった。商品は自主回収され、販売停止状態になった。アンファーは添付文書を作り直し、容器などに改良を加えたうえで、ようやく今回の発売にこぎ着けた。

大正製薬は余裕の構えだが…

迎え撃つ大正側は「これで市場が拡大してくれればいい」(梅岡久・大正製薬マーケティング本部長)と余裕の構え。安全性や効き目などを正しく伝えて、顧客や取引先などへのサポート、製品改善を繰り返すという。

ただその言葉は額面どおりには受け止められない側面がある。リアップの前2018年3月期の売上高は165億円。発売から19年が経ち、市場の成熟化や医療用医薬品の拡大などで、その額はピーク時のほぼ半分にとどまる。

今期は160億円を計画するが、出足の4〜6月で34億円(前年同期37億円)と冴えない。「前期末の在庫消化に少し時間がかかっている」(会社側)。これまで高単価のリアップは大正に高い収益をもたらしてきたが、その勢いには完全にブレーキがかかっている。


大正の主販路は言わずと知れたドラッグストアだ。今回はアンファーがネットシフトを鮮明にしたことで”正面衝突”は避けられそうだが、一件落着とはなりそうにない。今後さらに後続会社の参入が予想されるからだ。

ミノキ5はアンファーが販売元で、実際の製造は後発薬メーカーの東亜薬品(富山県富山市)が担当する。実はそれ以外にも、昨年12月にロート製薬が、4月には大興製薬(埼玉県川越市)など3社が、リアップ後発薬の製造販売承認を取得している。

主戦場はやはりドラッグストア?

ロートは取材に対し、発毛剤の後発薬について「発売時期などは実際に決定するまでは言えない」と答えるのみだった。また、ロート以外の3社はみな後発薬・製造受託メーカーであり、東亜薬品同様にどこかほかの販売先とタイアップする可能性が大だ。

アンファーはもともとネットでの販売比率が高く、むしろ例外。あるOTC医薬品(一般用医薬品)流通卸の関係者は「リアップの後発品を販売しないか、という話はドラッグストアにもきている」と打ち明ける。今後、大手ドラッグストアが後発薬を自社の専用品として取り扱うことも考えられる。

そのうえ、ロートが参入するとなれば、やはり大正の牙城であるドラッグストアが主戦場となりそうだ。

その場合、アンファー以外の後発薬での参入組はリアップよりも価格を大きく下げる可能性がある。「他社が入ってきて市場が拡大するかって?数量は伸びても金額ベースでは伸びない」と、前出のOTC医薬品流通卸関係者は予想する。

発毛剤が普及するアメリカでは、すでに後発薬による価格破壊が起きている。日本のリアップに相当するアメリカの先発薬「ロゲイン」でも3500円程度で手に入るようになっている。日本の半額以下だ。

つまり、アンファー参入はその1段目のロケットにほかならない。発毛剤市場の変動はこれからが本番。号砲はまだ鳴ったばかりだ。