ファーウェイ3兄弟スマホ真ん中の優等生「P20」は、出来が良すぎる「兄」と「弟」の板挟みで損している?

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現在のスマートフォン市場は、
通信大手の割引施策によって格安で購入できるアップルの「iPhone 8 64GB」
ファーウェイのSIMフリースマートフォン「HUAWEI P20 lite」
など、比較的低価格なモデルがトップ10にランクインしている状況だ。

特にSIMフリースマートフォンで検討しているP20 liteは、3万円前後という価格ながら、ダブルレンズカメラや約5.84インチの縦長のワイド画面など機能とデザインのすべてで、価格を上回る性能と完成度を持つモデルだ。

ファーウェイは2018年夏モデルのフラッグシップとして、
・ハイスペックなSIMフリースマートフォン「HUAWEI P20」
・NTTドコモの「HUAWEI P20 Pro」
この2つを押し出している。


「HUAWEI P20 Pro」は、しっかりと日本仕様のおサイフケータイに対応しているのも魅力である


フラグシップモデルのP20 Proは、ファーウェイでも唯一のトリプルカメラ搭載モデル。
イメージセンサーも独自仕様のまさに“ライカカメラスマホ”である。
約6.1インチのワイドディスプレイを搭載しながら、前面のベゼルギリギリに指紋センサーを搭載しPシリーズの使い勝手の良さも継承している。

機種代金は103,680円と高価であるものの、ドコモの割賦払いや月々サポートで機種変更でも実質57,024円で契約可能である。

ファーウェイのフラグシップモデルがこの値段で購入できる。
当然、売れ筋ランキングでも上位なのでは?
と思うのだが、実はそうでもない。




P20 Proは、ドコモオンラインショップの2018年7月 月間売れ筋ランキングでトップ10にもランクインしていない状況だ。
1位は、割引施策が大きい昨年モデルのソニーモバイルコミュニケーションズ製「Xperia XZ1」2位は、発売して間もない「Xperia XZ2 Premium」
3位は、docomo with対応で月々の利用料もお得な富士通コネクテッドテクノロジーズ製「arrows Be」
Xperia XZ2 Premiumを除いては比較的割引施策が大きい“お買い得”モデルが売れている。

こうした現象は今に始まった話しではない。
高価なハイエンドモデルは初動が良いが長続きしないのだ。
そのため今回のように、ある程度の時間が経った時点のデータ集計を見るとコンスタントに売れている低価格モデルがランキングを占めるという状況となる。

しかしながら、ハイエンドモデルが売れていないわけではない。

2018年夏モデルである
・ソニーモバイル製「Xperia XZ2」
・サムスン電子製「Galaxy S9+」
・シャープ製「AQUOS R2」
これらは、しっかりとトップ10入りしている。

実はP20 Proは、こうした人気ブランドモデルに埋もれてしまっている可能性は考えられる。




一方、SIMフリースマートフォンであるP20は、家電量販店の店頭価格で7万円台前半の値付けがされている。購入条件があるとはいえ、ドコモ版P20 Proの実質価格よりも高いという逆転現象が起きている。

そんな状況ではあるものの、決して売れていないと言うわけでもなさそうである。
P20はハイエンドスマートフォンらしいスペックを持ち、価格とのバランスが取れているスマートフォンなのである。

両面ガラスとメタルフレームで構成された美しいデザイン。三辺狭額縁の約5.8インチ アスペクト比18.7:9のFED+(1080×2244ドット)のTFTディスプレイがこれまでのファーウェイ製スマートフォンになかった“P20”シリーズの顔として印象的である。

しかしながら、このデザインは画面上部にノッチ(切り欠き)を持つアップルの「iPhone X」のデザインに近い。誰が見ても上質でまとまっていると感じるのはiPhoneに似ているからとも感じられる。
P20のデザインが秀逸だから選ぶというよりは、完成されたデザインであるため選びやすいと言ったところなのではないだろう。




カメラ機能はP10シリーズ同様に1200万画素カラーセンサーと2000万画素モノクロセンサーを搭載し、構成は似ているもののレンズのF値が2.2から1.6へ明るくなるなど、センサーを含めて新しくなっている。

そしてハードウェアだけではなく、AIによるシーン認識や夜景撮影に最適なAIによる手ぶれ補正などオート化が大きく進化し、誰でも綺麗な写真撮影が楽しめるよう作り込まれている。




このAIを高速で処理するのが、ハイエンドのプロセッサである「Kirin 970」である。
ベンチマークテストを見る限りQualcommのSnapdragon 800番台に性能は近いが、3D性能が若干劣るという結果が出ている。
タイミングがシビアな3Dゲームを遊ぶとなれば、苦労することもあるかと思うが、一般的な使用であればP20の動作が重いと感じることはないだろう。

実際手にした感想は、これまでのファーウェイ製スマートフォンにはない質感がある。
また前面の指紋認証も快適に操作できた。アプリの切り替えもサクサクと動作し、大画面でWebサイトやSNSを閲覧できるのも便利であった。




カメラ機能は、シーン認識された場合は印象的な発色となる。
場合によっては派手に感じることもあるが、夕焼けなど効果がハマるととてもオートで取ったとは思えない写真に仕上がった。

スマートフォンとして特に不満な点がなく、Pシリーズとしての完成度が高まった実に良い製品というのが印象だ。
このP20にあわせた下位モデルP20 liteの完成度も高い。
P20 liteは、一般的な用途であれば十分すぎる性能であり、デザインもP20に決して負けていない。

最上位モデルのP20 Proは。P20などよりもさらにカメラ機能が強化され、ドコモの手厚い割引施策でお買い得なモデルと言える。




P20は、P20シリーズの中で、P20 ProとP20liteの板挟みとなった格好だ。
どこにその魅力を感じて購入に至るのか、そうしたフックが弱い気がしてならない。
逆にSIMフリーのP20と比較してドコモ版のP20 Proを選ぶ、もしくはP20 liteを選ぶということもないであろう。

P20 ProがSIMフリーモデルであれば、また違った棲み分けがなされていたかもしれない。
P20は、ハイエンドモデルながら微妙な立ち位置となっているのだ。

SIMフリー版のPシリーズに惚れ込んだファン以外のニーズを果たして掘り起こすことができるのか。
販売戦略などを含め今後も注目していきたい。


執筆  mi2_303