今もっとも熱い動画共有サービス「ティックトック」とは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「ティックトック」という言葉を聞いたことがありますか? ここ最近、テレビやネットの広告が盛んに流れているティックトックは、今もっとも熱い動画共有サービスです。今回は中高生を中心に人気が高まっているティックトックについてお伝えします。

芸能人も中高生もこぞって「ダンス」

テキストでつぶやくことから始まったSNSは、「インスタ映え」の言葉とともに画像の共有がメインになり、現在は動画をシェアする時代が訪れています。動画といっても、かつてのような長い尺の作品や記録ムービーではありません。「ショートムービー」と呼ばれる、数十秒の動画をスマホで手軽に撮影してシェアするサービスが人気を集めています。


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ショートムービーという言葉にピンとこない人でも、インスタグラムやフェイスブックに登場したストーリー機能はご覧になったことがあるかもしれません。あるいは、6秒の動画が無限にループされる「Vine」を思い起こすとイメージが湧くでしょうか。短い動画であること、ループすること、ひと目でコンテンツが伝わることなどが特徴です。

そのショートムービーのなかで飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているサービスが、「Tik Tok(ティックトック)」です。ティックトックは、2017年12月にiOS無料アプリランキングで1位に輝いた動画サービスで、2018年7月時点でグローバルでの月間アクティブユーザー数は2億人に上ります。運営会社は中国でソーシャルメディア大手「Toutiao(今日頭条)」を運営するBytedance(バイトダンス)で、2016年にティックトックを開始。2017年11月には同ジャンルの動画サービスで先んじていた「musical.ly(ミュージカリー)」を買収し、2018年8月1日(米国時間)に2つのサービスを統合したばかりです。

【2018年8月13日13時50分追記】本記事初出時、ティックトックがミュージカリーを統合した日付を2017年8月2日と記載していましたが、正しくは2018年8月1日(米国時間)でした。

CMでは、きゃりーぱみゅぱみゅやピコ太郎、野性爆弾くっきーなど、人気の芸能人がスマホサイズの縦長動画で踊っています。芸能人はCMだけでなく個人アカウントでも投稿し始めています。スマホネイティブの中高生や独身の女性、若いママまで、ティックトックにはさまざまな人が動画を投稿しています。いったいティックトックにはどんな魅力があるのでしょうか。

LINE、ツイッター、インスタグラムに次ぐ人気

ユーザーに広がりを見せているティックトックですが、やはりはまっているのは中高生です。GMOメディアが2018年5月に発表した「女子中高生と動画サービスに関する調査」によると、「動画を視聴したことのあるSNS」では、LINEのタイムライン、ツイッター、インスタグラムに次いで、4位にティックトックがランクインしています。


きゃりーぱみゅぱみゅは個人アカウントでも投稿(写真:本人のティックトックより)

つまり、中高生の3大SNSに次ぐ人気だということです。ティックトックを視聴したことがあると答えた中学生は46.8%、高校生は25.5%と、中学生の比率が高いことも特徴です。私が聞いた話では、女子小学生も夢中でティックトックを見ているとか。幼い頃から当たり前のようにYouTubeで動画を見ていた世代の心をがっちりつかんでいるのでしょう。

投稿されている動画は、音楽に合わせてダンスや手振りなどをしているものが多く、ティックトックで人気の曲や動きを真似て投稿しているパターンが目に付きます。それぞれハッシュタグを付けているので、これは何の動画かが瞬間的にわかります。さらに、再生された動画の画面を上に軽くフリックするだけで次の動画にスキップするため、片手で次々に動画を視聴し続けることができます。「この動画つまらない」と感じたら、即フリックで飛ばせるのです。このスピード感はインスタグラムのストーリーと同様で、ある女子高生は「もう画面をスライドして見るのはウザいから、インスタグラムでも投稿は見ない」と言っていました。スマホネイティブはどんどん情報を処理するスピードが上がっていることを感じます。

ティックトックで気に入った動画はいいねをしたり、投稿者をフォローすることができます。取材した中学生にフォローしているユーザーを聞いたところ、同じ中学生のかわいい女子を数人挙げてくれました。ティックトックで人気の投稿者は「Tik Toker(ティックトッカー)」と呼ばれ、ティックトックでのフォロワー数が多いことはもちろん、MixChannelやLINE LIVEなど他の動画配信サービスにも投稿しており、それぞれのサービスでフォロワーを集めています。ティックトッカーは、黒髪のボブや垂れ目風のメイク、真っ赤なリップなどオルチャンメイク風の人が多く、少し困り顔でダンスやキメ顔を繰り返す動画を配信しています。ティックトックには美顔効果もあり、目を大きく、アゴをほっそりさせる加工が施せるので、自撮りアプリ「SNOW」で撮影したような顔の女性も多く見かけます。

前述したようにティックトックにはダンスの投稿が多いのですが、本格的なダンスを踊れる人はもちろん少なく、ほとんどは身振り手振りで簡単に踊っています。「#だれでもダンス」は片腕を体の前で横にし、もう一方の手で前に出している腕の上下に拳を突き出す振り付けから始まります。少し試すだけですぐ覚えられる振り付けで、しかも時間も短いため、すぐ真似ができます。最近人気の曲のひとつに、倖田來未がカバーした1980年代のヒット曲「め組のひと」があるのですが、これも目の横でVサインをするポーズが真似しやすいからでしょう。また、「#全力○○」というシリーズも人気で、「全力笑顔」「全力変顔」といった曲の歌詞に合わせて顔を作ります。

ティックトックを見ると、人物の動きに少し違和感を感じるかと思います。これはスローモーションで撮影し、再生時には通常の速さにすることで早送りのような効果を狙っているのです。また、楽曲も早送りでキーが高くなっているものが人気です。早送りの動画は数年前から人気が高く、かつては動画加工アプリ「VivaVideo」で加工してMixChannelへ投稿されていましたが、ティックトックでは非常に簡単に早送り動画が作れるようにアプリが設計されています。指定した箇所で画面を揺らしたり、ノイズを入れたりといった特殊効果も長押しするだけで加えられます。

投稿せずに「見る専」でいる理由

かわいい女子がキメ顔を繰り返すティックトックの動画は、「ウザい」と評判にもなりました。投稿者は実際にかわいい人が多いため、それほどでもない人やダンスがうまくない人が反対に目立ってしまうのかもしれません。


人気投稿者「ひかりんちょ」は中学生(写真:本人のティックトックより)

ある女子中学生は、「同級生が投稿している動画を偶然見ちゃったんだけど、こっちがマジ恥ずかしいって感じで。自分がかわいいと思ってるんだーって裏のLINEグループでスクショが回った」と話していました。友人と楽しく踊っている動画ならいざ知らず、キメ顔を繰り返す動画にしてしまうと周囲の女子から反感を買うのでしょう。

とはいえ、ティックトックで動画を撮影するのは楽しいため、恥ずかしいと感じている人は動画をシェアせず、スマホに保存したり、友人だけでシェアしたりしています。また、自撮りではなく、イラストを何枚か組み合わせてはやりの動きを真似する動画や、犬やネコ、おもしろ動画の投稿も増えています。

フリックで次々と動画が見られるティックトックはある種の中毒性があり、はまっている人は何時間でも見ています。しかし、ユーザーがティックトックに2時間以上滞在するとアラートが出るデジタルウェルビーイング機能も実装されました。デジタルウェルビーイングとは、Googleが2018年5月に「Google I/O」で唱えた、スマホの使いすぎを解消しようという取り組みです。スマホを使っていると、子どもも大人もつい時を忘れてしまうものですが、ティックトックはスマホの使いすぎに保護者が頭を悩ませることがないサービスになるのかもしれません。