スルガ銀行を舞台にして横行した不適切融資や、それを許したガバナンスの不全に関して、外部弁護士が構成する第三者委員会が進めている調査の報告書が、8月末にまとめられる。金融庁はこの第三者委員会の報告書や、現在行われている立ち入り検査の結果を総合して、スルガ銀行に対する行政処分を出すことになる。

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 9日付の日本経済新聞では、女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」に関わる融資の不適切な取扱いについて、スルガ銀行の行員が融資の審査基準を販売業者に事前に伝えていたと報じられている。販売業者は審査基準に適うように、借入希望者の年収証明や預貯金の口座残高を改ざんしていた。試験の解答を事前に教えてもらって試験に臨む受験生のようなものだ。

 “合格”確実だが、借入希望者はいい面の皮だ。シェアハウスなんて聞いたことのない業態で、自分の属性に不相応な多額の借金をすることが可能なのかと、販売担当者に乗せられるがままに半信半疑で借入の申し込みをしたところ、銀行が“承認”してくれた。銀行が承認したということは、事業計画に何ら問題がなく将来性充分で、購入物件の担保価値にも懸念がないんだと、早飲み込みしても責められない。本当に自分なんかが1億円も借りられるのだろうか?という疑問は、毎月何万円かの余剰があってそれを小遣いしてもいいというささやきの前に消滅した。こんな感じで、現在は悲嘆に暮れている債務者は少なくないだろう。

 自己責任と云う指摘にも一定の重みはあるが、銀行と業者がグルになって犠牲者を量産した面は否定できない。

 スルガ銀行では、当該融資案件への疑念を口にする審査担当者を、営業担当者が恫喝していたとも伝えられている。その営業担当者は、改ざんの上に成立した融資申し込みであることを熟知していたか先導していた、にもかかわらずだ。銀行内でそんな不穏当なやり取りがなされていながら、3年以上もの期間に渡って問題にされることがなかったようだ。ガバナンス不全どころか、ガバナンスとは無縁の銀行だった。

 第三者委員会がどんな報告書をまとめ、金融庁がどんな行政処分を行うのか、スルガ銀行と経営者にとっての運命の日が、刻々と近づいて来た。