知らない人同士でも楽しめるゴルフの「1人予約」が広がりはじめているようです(写真:Fast&Slow / PIXTA)

殺人的な猛暑が続いている。「こんな時期のゴルフに行くのは自殺行為だぞ」と言われながらも、ゴルフ場に行っている方も多いだろう。くれぐれも熱中症に気を付けたい。

ただ、ゴルフをやりたくても自分の他に仲間がいなければ行けない。ゴルフ場の会員権を持っていれば、フラッと行って空いている組に入ったり、1人で来た会員同士で回ったりということもできる。ゴルフ場のメンバーの権利でもある。

いま、徐々に人気が高まっているのが、会員権を持たなくても1人でゴルフ場に行って、知らない人同士で回る「1人予約」。ご存知の方もいるだろう。

インターネットで検索していたら、日本最大級のゴルフ場運営会社、パシフィックゴルフマネージメント(株)(以下PGM)が8月1日から9月30日まで1人予約でプレーした人にTポイント60万ポイント(8、9月1カ月ごと)を山分けするという特典があった。1人予約に力をいれているようだ。

いつもの仲間の都合がつかなくてもプレー可能

1人予約とは、ゴルフをやりたいが仲間の都合がつかないがゆえに人が集まらなくても、行きたいゴルフ場で1人予約を受け付けていれば予約できる。人数が集まれば組が成立し、1人予約者同士でプレーするのだ。

このやり方を始めたのは、バリューゴルフが最初で、今ではゴルフ予約サイトの楽天GORAやGDOなどでも1人予約ができる。PGMは自社が運営している130コース超を対象に2017年9月からこのサービスを始めた。

PGM営業推進部の門伝正広副部長によると、今では月間来場者の約2%が1人予約での来場者で、8〜9%に達しているゴルフ場もあるという。「1人1人の積み上げが集客に有効になってきています」という。

ゴルフ業界の課題は、再三このコラムでも取り上げているように、ゴルフ人口の減少や高齢化への対策、若い層や女性層の発掘など、ゴルフをする人を増やす、続けてもらうことなのだが、この1人予約が新たな顧客発掘に効果を上げ始めているようだ。

ゴルフ場は通常予約の場合、少なくとも3人、できれば4人集まらなければ組が成立しない。そのあたりが「ゴルフは面倒くさい」と思われる理由の1つにもなっている。筆者も経験があるが、仲間内でゴルフをやろうとしても、日にちを合わせるのに一苦労する。

ようやく決まっても、急病や仕事でドタキャン、なんていうことも多い。ドタキャンした方も残念だが、ドタキャンされたゴルフ場はもっと気の毒だ。

料金面でも、4人いればいいが、3人だと割増料金が必要なゴルフ場もある。2人プレー可能なゴルフ場もあるが、どちらかというとカップル用だろうし、割高になるケースも多い。

1人予約の料金を見ると、4人組の通常予約と1人あたりの値段は変わらないコースも多い。人数が集まらないと組が成立しないので、逆に言えば少ない人数で回ることはないから割増料金も発生しない。

ゴルファーの受け皿になる可能性も

ゴルフの敷居の高さの中に、「人数が集まらないとできない」ということをよく指摘される。若い層でも周りにゴルフをする仲間が少ない、高齢者はだんだん仲間がゴルフをやめていくため、人を集めにくくなってくる。「高齢者のゴルフの機会継続や、せっかくゴルフを始めた人をつなぎとめる受け皿になる可能性があります」と門伝氏は言う。

先述したように、ゴルフ場へ1人で行ってプレーできるのは、これまでは会員、メンバーにしか与えられていなかった。そこで会員同士が一緒に回って仲間の輪が広がっていくのがクラブライフの楽しみの1つともいわれてきた。

いわゆる名門コースは別として、今は会員でも1人でゴルフ場に行ってプレーできないというゴルフ場も増えてきているという。

PGMでは、「メンバーが1人予約を使っていることも多い。ぶらっときてあまり意に沿わない組に入れられて回るよりも、1人予約では一緒に回る人のある程度のプロフィールがわかるようになっている」(門伝氏)という。

1人予約をするには1人予約用の会員登録をして、年代やニックネーム、ゴルフの腕前、自己紹介など簡単なプロフィールを書き込む。あとは1人予約を受け付けているゴルフ場のスタート時間に予約を入れるだけ。

自分が予約したスタート時間の組に、ほかの人が予約を入れてきて規定の人数がそろえば成立する。すでに予約が入っている組でよければ、そこに予約を入れると組が成立しやすくもなる。一緒に回る人のプロフィールも見ることができるので(正しく書かれていればだが)安心感もある。

女性にとっては、うれしい特典もある。コースや時間帯によっては、1人予約の女性1人目が無料というサービスも出ている。

「つながり機能というのがあって、一度一緒に1人予約でゴルフをした人には本人の了承の上で過去の同伴者に予約情報をお知らせします。人気者も出てきて、その方が予約を入れると一緒にやりたい人がそこに集まるということもあります」(門伝氏)という。こうして新たなゴルフコミュニティーが生まれ、かつてゴルフ場会員のクラブライフのような経験もできるかもしれない。

新しい人間関係が生まれるチャンスに

知らない人同士で回るのでトラブルはないのだろうか。「日本人の特性なのでしょうか、大きなトラブルはありません。むしろ、会社がらみではないとか、いつもの友人同士じゃないというところが楽しいという方もいるということです」という。

いつもと違う人と回る気遣いはあるだろう。エチケットやマナーを見られるかもしれない。ミスを連発して迷惑をかけるかもしれない心配もあるだろう。とはいえ、新たな人間関係が生まれるチャンスでもある。

今後は1人予約を行っているサイト相互の連携をして、より多くの人に利用してもらえるようにしていく。「組の成立率を上げていくことで、さらに1人予約が広がって行けばと考えています」(門伝氏)という。プレー人口が足踏みしているゴルフ場としても、集客を上げるチャンスにもなる。

一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会の調べによると、1990年代前半は5万人台だった1ゴルフ場当たりの利用者数は、ここ数年3万7000人台で推移している。

気軽にゴルフを楽しめれば、プレー人口減少の歯止めに効果があるかもしれない。少なくとも、ゴルフをやりたいと思った時の人数集めの苦労からは解放される。