オーストラリア戦で途中出場した岩渕だが、不発に終わった。写真:早草紀子

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 アメリカで開催されていたトーナメント・オブ・ネーションズで、なでしこジャパンはアメリカ、ブラジル、オーストラリアに3連敗、最下位で大会を終えた。
 
 大会前から懸念材料はあった。チーム発足から4月の女子アジアカップ優勝時まで高倉麻子監督自ら「心臓部」と呼び、絶大の信頼を得ていた阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)が右ひざ前十字靭帯損傷と内側半月板損傷で長期離脱、今大会は国際Aマッチデーではないため、キャプテンの熊谷紗季(オリンピック・リヨン)も招集できず、メンバー招集後もケガなどで辞退者が出た。
 
 最大の懸念は最終ライン。熊谷をはじめ、市瀬菜々(ベガルタ仙台)、宇津木瑠美(シアトル・レイン)と、計算が立つ経験者が軒並み不参加。そこで高倉監督が考え出したのが攻撃型の阪口萌乃(アルビレックス新潟)の左サイドバックへのコンバートだった。ほぼぶっつけ本番で臨んだアメリカ戦の最終ラインは右から清水梨紗(日テレ・ベレーザ)、三宅史織、鮫島彩(ともにINAC神戸)、阪口萌。鮫島以外、世界トップレベルとの対戦経験はほぼゼロだ。頼みの鮫島とてセンターバックは本職ではない。
 
 その中で、阪口萌は相手アタッカーとのマッチアップ時にはスピードを封じ、前半は自サイドを抑え込んだ。何もかもが初めてでありながらゴールまで決める活躍。「常に新鮮でした」(阪口萌)と、一つひとつを確かめるようにプレーしていた。まだ最終ラインの守備を学んで数時間ながら、そのパフォーマンスで今大会最大の可能性を示したと言える。
 
 大会を通じて8失点はいただけないが、相手が相手だけに日本の現状を考えれば妥当な数字だろう。だが、紐解いていけば、アメリカ戦以外の4失点はミス絡み。十分に改善の余地はある。
 
 アメリカ、ブラジル戦では攻撃の形も高倉監督が求めているものの片鱗は感じ取ることができた。だが、今大会の集大成として臨んだ最終戦のオーストラリア戦では、守備面でプレスをハメることには成功するが、攻撃面ではハーフタイム後に頼みの岩渕真奈(INAC神戸)らを投入するも不発。特に後半は噛み合うことなく時間は経過した。
 
「これが自分たちの現在地。判断ミスが多く、若い選手の一つひとつのプレーの責任、怖さ、そういった自覚があるのか」――試合後の高倉監督は手厳しかった。
 
 もちろん攻撃面における阪口夢の不在は大きい。が、高倉監督は“阪口夢のようなプレー”を求めているわけではない。これまでも個々の特長を尊重してきたはずだ。攻撃陣は今年に入ってからも招集されるメンバーはほぼ固定されており、1年前には皆無だったコンビネーションも今大会では見られるようになってきた。それでも高まらない決定力。それこそが、今大会で見せつけられた世界との決定的な差だった。
 
 主軸の不在を憂うことは簡単だ。だが、目前に迫るアジア競技大会は、国内メンバーで戦い抜かなければならない。メンバーを固定すれば、ある程度攻守ともに向上はするだろう。ただ、メンバーを固定せずに全体的な底上げを図ることは高倉監督が貫いてきているスタイルだ。この全敗を受けて、アジア競技大会をどう戦うのか、指揮官の選択に注目したい。
 
取材・文●早草紀子