高速道路の自然渋滞は基本25km/h程度で流れている

 これは、渋滞研究家として、つねに問いかけられてきた定番の質問。そのたびに私はこう答えてきた。

「渋滞しているからと言って、高速を降りて下道を走っても、そちらの方が早く着く可能性は1割程度と考えてください。とくに、下道ルートについて事前の研究もなく、衝動的に高速を降りると、かえって大変な目に遭う可能性が高いです」。

 私の研究によれば、高速道路が渋滞しているときは、並行する一般道もたいてい渋滞する。高速道路の自然渋滞は、近年は平均して25km/h程度で流れるが、一般道の渋滞はもっと速度が低くなる。たとえば都内の幹線道路の平日平均速度は20km/h程度。一般道が大渋滞すると、平均速度は簡単に10km/h前後にまで低下してしまう。よって、高速を降りて下道を走るのは、非常にリスキーなのである。

 首都圏の高速道路のなかで、大渋滞時の平均速度がもっとも遅くなるのは中央道だ。それは、中央道の特殊性に原因がある。

 ほかの高速道路は、都心から約50km圏内は片側3車線に広がる。ところが中央道の場合、片側3車線なのは大月ー上野原間だけで、上野原より都心寄りは片側2車線だ。これが原因で、小仏トンネルを先頭とした渋滞が上野原インターより長くなると、そこから上流側は3車線から2車線への合流により、平均速度が10km/h程度に下がってしまうのだ。

 高速の流れがこれほど遅くなると、下道にも勝機が出てくるのだが、しかし実際に並行する国道20号線に逃げてみても、がんばってせいぜい同タイムで、負ける確率も高い。ほかの高速道路ならほぼ確実に負ける。それが現実だ。

 ところが! 今年のGW中の5月4日。A氏は富士スピードウェイでのスーパーGTを取材し、夕方東京へ向けて帰路につくことになった。渋滞がなければ2時間の道のりだが、当然のように東名も中央道も大渋滞である。

 スタッフを乗せるロケバスの運転手さんが選んだのは、中央道ルート。しかしA氏は国道413号線をひらすら走って圏央道相模原インターを目指す「道志みち」ルートを選び、ロケバス隊と同時に出発した。

 結果は、道志みちルートの大勝利だった。中央道ルートを行ったロケバスは6時間半かかったが、道志みちルートは4時間半で東京に到着できたのである。

 かくいう私は30年ほど前、やはりGW中、富士スピードウェイからの帰路、道志みちを行って大渋滞にはまり、死ぬような目に遭ったことがある。ところが今年の道志みちは、渋滞は皆無だったという!

 私は30年前の経験以来、「道志みちへの迂回は鬼門」という固定観念ができていたが、一般道の混雑具合も、月日の流れによって変化して当然だ。じつは、圏央道が開通する以前の道志みちは、津久井湖付近から八王子インターに出るのがまた大変な苦行だったのだが、圏央道が開通した現在は、相模原インターに逃げられるという、大きな状況変化があったことも見逃せない。

 高速道路が渋滞のピーク時には、下道に降りるというバクチを打ってみるのも、一興かもしれない。もちろん、グーグルマップにお伺いを立ててみるなど、事前の予習は欠かせないが。