雨天時に屋外に出ると、湿った土のような匂いを感じるとがあります。なぜ雨が降ったときに独特の匂いが辺りを漂うのか、BBCが解説しています。

Petrichor: why does rain smell so good? - BBC News

https://www.bbc.com/news/science-environment-44904298

1964年にオーストラリア連邦化学産業研究機構(CSIRO)のイザベル・ジョイ・ベア氏とリチャード・トーマス氏が、「乾燥した地面に雨が降ることで立ち上がってくる香り」を「ペトリコール(Petrichor)」と名付けました。ペトリコールはギリシャ語で石を意味するペトロ(petro)と、「神々の静脈を流れる液体」を意味するイコール(ichor)を組み合わせた造語です。

ペトリコールには、雷が空気を切り裂いた時に発生するオゾンの臭いも含まれますが、主成分となるのは「ゲオスミン」と呼ばれる物質です。ゲオスミンは、健康な土壌中に多く生息するストレプトマイセス属の細菌によって生み出されます。雨が降って、地面に雨粒が当たると、「エアロゾル」と呼ばれる微小な水の粒子が発生します。本来土壌中に含まれるゲオスミンが空気中に放出されるのは、このエアロゾルが大きく関係しています。

地面に落ちた水滴からエアロゾルが飛び散る様子を、マサチューセッツ工科大学が250分の1というスロームービーで撮影しています。

Rainfall can release aerosols, high-speed video shows - YouTube

左がアルミ板、右が乾いた土に水滴を落とす様子です。



水滴が地面にぶつかり、形が大きくひしゃげます。よく見ると、落下地点の上にエアロゾルが見えます。



風を当てるとエアロゾルが流れていく様子がよく分かります。



エアロゾルは土壌中のゲオスミンを含んだ状態で雨滴から空気中に飛び散ります。ゲオスミンを含んだエアロゾルを嗅覚でキャッチすることで、私たちは雨が降った後の独特の匂いを感じるというわけです。

また近年では、植物や昆虫が産生する生体物質「テルペン」が、空気中のゲオスミン含有量に関連している可能性も科学者から指摘されています。何日も日照りが続くと、植物の代謝が遅くなりますが、雨が降ることで代謝も早くなり、それと共に植物からテルペンが放たれるそうです。テルペンは他の物質と化学反応を起こし、ゲオスミンに変化する場合があります。イギリスのキュー王立植物園で主任研究員を務めるフィリップ・スティーブンソン教授は「植物の葉にある毛が水滴によって傷つけられて、植物内で生成されているテルペンが放出されることがあります」と語っています。



ゲオスミンは無毒ではありますが、ミネラルウォーターやワインにわずかでも含まれると異臭と判断され、捨てられてしまいます。オールボー大学のイェッペ・ニールセン教授によると、人間はこのゲオスミンに対して非常に敏感で、たとえ10億分の1に希釈しても検出することが可能だとのことですが、なぜ人間がゲオスミンの臭いに対して敏感であり、マイナスに感じてしまうのかは分かっていないそうです。

なお、ベア氏とトーマス氏は、1960年代にインドで販売されていた香水にゲオスミンが主成分となっているものを発見し、50年経った今ではゲオスミンが香水に含まれるのは一般的になっています。調香師のマリーナ・バルセニラ氏によると、ゲオスミンはまさに「雨が降った後のコンクリートのような香り」がするとのことです。