ウートピ世代の女性たちからよく聞く「そろそろ子どもを作りたいけれど、パートナーと温度差を感じる……」という悩み。

妊活と聞くと、なんとなく「女性が頑張るもの」というイメージがありますが、パートナーも一緒に頑張ってほしいのが本音です。

そもそも男性の妊活はどのようなことをするのか、お互い「ラク」な気持ちで妊活するにはどうすればいいか。安全で機能的かつ衛生的な「セクシャルウェルネス商品」を開発するTENGAから、2016年に社内ベンチャーとして立ち上がったTENGAヘルスケアの代表・鈴木雅則さんと、3回にわたって考えていきます。

妊活って何をしたらいいかわからない

--妊活中の女性から、パートナーがなかなか協力してくれないという悩みをよく聞きます。そういった悩みを聞くと、いつも「男性が妊活に当事者意識を持てないのはなぜだろう?」と疑問を感じるんですよね。妊活に対する男性の本音を知りたいと思い、男性向けの妊活アイテムを開発している御社にお話を聞きに来ました。

鈴木雅則さん(以下、鈴木):「男性が当事者意識を持てない」という話、耳が痛いですね……(苦笑)。私は離婚経験があって、その原因はなかなか子どもができなかったことでした。「妊活は奥さんだけの問題」と考えて任せてしまい、次第にセックスレスになって、会話もなくなって……という感じだったんです。

--踏み込んだ話をして恐縮ですが、妊活を奥さん任せにしてしまったのはなぜですか?

鈴木:妊活は女性が頑張るものだと思い込んでいたんです。当時の私のように、妊活が自分に関係あると思っていない男性はまだ多いと思います。

--その温度差はどこから来るのでしょうか。男性は、子どもをそれほど望んでいない?

鈴木:子どもが欲しい男性は多いと思います。私もそうでしたが、妊活をどのように進めたらいいか知らない人が多いんです。実際、TENGAヘルスケアで妊活セミナーを開催すると、男性の参加者から「意識が変わった」という声を聞くことが多いですし。「女性ってこんなことをしなければいけないんだ」とか「男性はまず精液検査をすればいいんだ」とか。

弊社の女性スタッフからも、知識を得た旦那さんの態度がガラリと変わったという話を聞きました。それまでは妊活に協力的じゃなかったけど、一緒にセミナーに行ったあとは「サプリメントを買おうか」「栄養は大丈夫?」って気にしてくれるようになったそうです。

性機能に不安を感じている男性は多い

--妊活セミナーではどんなことを学べるんですか?

鈴木:いいドクターとの出会い方や、セカンドオピニオンを受けるメリット、人工授精に取り組む場合の費用についてなど、妊活にまつわるさまざまなテーマに対して、産婦人科医の先生がリアルなところをお話しします。

--どのテーマも気になる……。妊活については学校で習いませんし、自ら情報を取りにいかなければわかりませんよね。

鈴木:そうなんです。小中学校では性教育の授業を受けますが、男女の体の“詳しい仕組み”って習いませんよね。女性も、男性の体の仕組みや性の悩みについては、あまり知らないと思います。TENGAヘルスケアのミッションは「性を楽しむこと」ではなく「性にまつわる諸問題を解決すること」なので、これからも性にまつわる正しい情報を広める事業に力を入れたいと思っています。

--ちなみに、男性の性の悩みには、どのようなものがあるんですか?

鈴木:TENGAヘルスケアで282人の男性にアンケートを行ったことがあります。その中で、150人以上の男性が「悩んでいる」と回答したのがED(勃起障害)と遅漏でした。早漏に悩んでいる人も100人を超えていて、性機能に不安を感じている男性が多いことが浮き彫りになりました。

--性機能に不安があると、女性と関係を持つのが怖くなってしまいそうですね。

鈴木:そうですね。「性欲減退」と回答した人も1割ほどいました。妊活中の男性の中には、プレッシャーを感じて、性欲が減退してしまう人も多いようです。私も、前の奥さんと妊活していたときに「この日にセックスしなきゃいけない」というプレッシャーでうまくいかなかった経験があります。

妊活をしていなくても、パートナーとの性生活をプレッシャーに感じている男性は案外多いです。そうやってプレッシャーを感じ続けていると、パートナーとだけうまくセックスできなくなってしまうこともあるんですよ。男性が、セックスに対してプレッシャーを感じている場合もあるというのは、女性にも知っておいてほしいところです。

腟内射精障害はトレーニングできる

--なるほど……。ほかには、どのような性の悩みがありますか?

鈴木:2014年に、獨協医科大学埼玉医療センターが、男性不妊外来の受診者データを公表しました。それを見ると、不妊に悩む射精障害患者さんの2人に1人が腟内射精障害であることがわかります。

--腟内射精障害って?

鈴木:女性の腟内で射精できない症状のことです。さまざまな原因がありますが、その一つは、マスターベーションの際に、セックスとは違う動きで射精してしまうこと。例えば、ペニスを強く握って、女性の腟内より強い刺激を与えることが癖になっているとか、ピストン運動ではなく床にペニスを押し付けて射精してしまうとかですね。

--自己流のマスターベーションが影響してしまうんですね。

鈴木:そうですね。そこで、TENGAヘルスケアでは「メンズトレーニングカップ」という、トレーニング用の商品を出しています。このカップを使うことで、強く握るのを防止したり、ピストン運動に慣れたりすることができるんですよ。その結果として、腟内でもイケる状態を目指すものです。

メンズトレーニングカップ

--どうやって使うのでしょう?

鈴木:メンズトレーニングカップには「ハードタイプ」から「ソフトタイプ」まで、刺激レベルが5段階あります。強い刺激に慣れてしまっている人は、ミディアムハードタイプから使い始め、次第に刺激レベルを下げていきます。No.5の「ソフトタイプ」が、女性の腟内と同じくらいの強さですね。

--射精をトレーニングできると知っている人も、まだまだ少ないかもしれませんね。先ほど、腟内射精障害にはさまざまな原因があると仰っていましたが、不適切なマスターベーションが原因ではない場合もあるんでしょうか?

鈴木:最近では、セックスにプレッシャーを感じることで、腟内射精障害になってしまう人も増えています。精神的な部分は、女性が悩みを理解してくれることで肩の力を抜けるようになる人も多いようです。

--理解というのは具体的に?

鈴木:例えば、男性が腟内射精障害で悩んでいたら、「大丈夫だよ」と声を掛けてあげるなど、それ以上プレッシャーを与えないことが大切です。1回射精ができないと、けっこう焦りますから。「パートナーがイカないのは、自分に魅力がないからだ」と考えてしまう女性も多いと聞きますが、決してそうではありません。

コミュニケーションとしてのセックスなら、射精がゴールではないと考えるといいのかもしれませんね。「一緒にいられるだけでいいよね」という姿勢が、男性のプレッシャーを解くことにつながるはずです。

(取材・文:東谷好依、写真:大澤妹)