真夏の名物重賞として知られるGIIIアイビスサマーダッシュ(7月29日/新潟・芝1000m)。日本唯一の直線競馬の重賞で、わずか50数秒で決着がつく究極のスピード勝負は、ほんの少しのことで目まぐるしく着順が入れ替わるスリリングなレースだ。

 そのため、人気薄馬の台頭もおおいに考えられる。実際、過去10年の勝ち馬を見てみると、2010年には8番人気のケイティラブ、2012年には7番人気のパドトロワ、2017年には8番人気のラインミーティアと、伏兵馬が何度か金星を挙げている。

 そこで、今回も過去10年の結果を参考にして、一発の可能性を秘める”穴馬”を探し出してみたい。

 このレースで何よりも重要なのは、新潟の直線1000mでの実績があること。たとえ条件馬であっても、過去に同舞台で結果を出していれば、ここでも十分に勝ち負けできる。現に、先述のケイティラブは当時1600万条件の馬だったが、前年に新潟の直線競馬で500万下、1000万下と連勝しており、このレースにおける舞台適性の重要性を示した。

 昨年の勝ち馬ラインミーティアも、同じく1600万条件の馬だった。しかし、過去にこの舞台での勝利実績があり、コースとの相性のよさを生かして、格下馬ながら重賞制覇を果たした。

 とすれば、重要視するのは「新潟・芝1000mの実績」だ。

 その視点で見ると、最初に食指が動くのは、アペルトゥーラ(牡7歳)である。

 何より、この舞台での適性がピカイチ。昨年の8月から10月にかけて、1000万下、1600万下、オープン特別と、直線レースで3連勝を飾っているのだ。

 ただ、その後はコーナーのあるレースに戻って、オープン特別でも15着、13着と立て続けに惨敗。久々の直線競馬となった前走、オープン特別の韋駄天S(5月20日/新潟・芝1000m)では巻き返しが期待されたが、そこでも6着と屈した。

 おかげで今回は人気落ちが予想されるが、同馬はこの春に約4カ月の休養を挟んで、今回は走りごろとなる叩き3戦目。得意舞台で完全復活を遂げてもおかしくない。

 続いて注目したいのは、ステップレース。近年の結果を見ると、取り立ててこの重賞につながる”前哨戦”がある。例年、5月下旬に行なわれるオープン特別の韋駄天Sだ。

 2014年から施行されているレースで、過去2年は同レースで上位争いを演じて(掲示板圏内)ここに向かってきた馬が、3着以内に2頭ずつ入っている(2016年=2着ネロ、3着プリンセスムーン、2017年=1着ラインミーティア、2着フィドゥーシア)。

 同じ条件で、それも2カ月ほど前に行なわれているのだから、相関性が高くなるのも自然なこと。であれば、韋駄天Sで好走している馬の中から穴候補を探したい。

 面白そうなのは、ノットフォーマル(牝6歳)だ。

 同馬は、昨夏からふた桁着順の大敗を4度続けていたが、韋駄天Sでは12番人気ながら2着と善戦。初めての直線コースで、確かな適性を見せた。

 しかしその後、GIII函館スプリントS(6月17日/函館・芝1200m)で10着、オープン特別のバーデンバーデンC(7月15日/福島・芝1200m)でも7着と敗戦。その結果を受けて、おそらく今回も人気は上がらないだろうが、過去の韋駄天S組の好走例を鑑(かんが)みれば、軽視できない存在だ。

 しかもアイビスサマーダッシュは、牝馬の奮闘ぶりが目立つレース。過去10年で3着以内に入った30頭のうち、およそ半分の14頭が牝馬なのだ。

 好相性の「韋駄天S組」で、さらにこのレースに強い牝馬となれば、俄然ノットフォーマルに追い風が吹く。同馬の一発にかけてみるのも悪くない。

 最後に目を向けたいのは、近走のオープン以上のレースでまずまずの走りを見せていながら、人気薄だった馬の激走パターンだ。

 冒頭で触れた2012年の勝ち馬パドトロワは、前年のGIスプリンターズS(中山・芝1200m)で2着に入ったのち、人気を裏切る競馬がずっと続いていた。それでも、前走の函館スプリントSでは4着に入って、わずかながら復調の兆しを見せていた。

 2011年に11番人気で3着となったアポロフェニックスも、前年の函館スプリントSで3着と奮闘して以降、掲示板にさえ載れない不甲斐ないレースが続いていた。しかし、前走のバーデンバーデンCでは4着となって、上昇気配を見せていた。

 今回、これらに似た過程を踏んできている馬がいる。ラインスピリット(牡7歳)である。


勝てないまでも重賞戦線で健闘しているラインスピリット

 同馬は、年明けのオープン特別・淀短距離S(1月13日/京都・芝1200m)を快勝するも、続くGIIIオーシャンS(3月3日/中山・芝1200m)で8着、GI高松宮記念(3月25日/中京・芝1200m)では15着と馬群に沈んできた。

 それでも、2走前のGII京王杯スプリングC(5月12日/東京・芝1400)、前走の函館スプリントSと、結果は5着、6着に終わったものの、勝ち馬と差のないレースを見せてきた。馬券圏内(3着以内)に入っていない分、思いのほか評価は低いが、対戦したメンバー的に見ても過去2戦の結果は胸を張れるもの。今回はまさに人気の盲点ともいえる存在で、思い切って狙いたい1頭だ。

 このラインスピリットも、2年前の直線競馬でオープン特別を勝利。舞台適性があり、激走の条件は十二分にそろっている。 とんでもない猛暑が続く日本列島。夏の新潟の風物詩である”電撃戦”において、この鬱陶しい暑さを吹き飛ばし、快適なバカンスを楽しむ”軍資金”をもたらしてくれる馬が、この3頭に中にいることを期待したい。

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