データセンター脇のコンビニ駐車場に避難してきた職人たちは、不安そうに現場を見つめていた(記者撮影)

白昼の住宅街を、黒煙が包み込んだ。

昔ながらの平屋が並び、公園で子どもたちが遊んでいた閑静な住宅街を抜けた先に、サイレンを回した消防車や救急車が10台以上立ち並んでいた。緊急車両が取り囲むのは、防音シートがところどころ破け、煤けたような建物。現場には規制線が貼られ、交差点では複数の警官が車を誘導する姿も見えるなど、物々しい雰囲気に包まれていた。

7月26日14時頃、東京都多摩市唐木田の建築現場で火災が発生した。NHKの報道によれば工事関係者ら40人近くがけがをし、このうち男性4人が亡くなったという。

建物は三井不動産のSPCが所有していた

現場は南多摩特定目的会社が開発していた「(仮称)多摩テクノロジービルディング計画」。地上3階、地下3階建ての建物だ。火災による煙の勢いは激しく、周辺の店舗の中にいても異臭を感じたほどだったという。

工事を担当していたのは準大手ゼネコンの安藤ハザマ。2016年10月17日に工事が始まり、予定では今年10月末にも竣工するはずだった。

火災当日は鉄骨の組み立てが行われていた一方、足場の解体や内装など、仕上げ工事に入りつつある段階だった。

火災原因や被害状況については「現在調査中」(安藤ハザマ)としているものの、現場の職人からは「火災に気がつかず、発見が遅れた」という声も上がっている。


このデータセンターは10月末には竣工する予定だった(記者撮影)

「今後の見通しについては未定」

安藤ハザマは現在、福島県の除染工事をめぐり元従業員2名が詐欺罪で刑事処分を受けたことにより、東北地方で営業停止処分の期間中で、さらなる対応に追われそうだ。

現場から避難してきた数十人ほどの職人は、付近のコンビニの駐車場で不安そうな表情を浮かべていた。

このビルの開発をしていた南多摩特定目的会社は三井不動産が100%出資する特定目的会社(SPC)。三井不動産は大部分をデータセンターに、一部を事務所とする計画だった。

三井不動産は「今後の見通しについては未定」としている。建物の被害状況によっては復旧に時間がかかりそうだ。