カジノを含む統合型リゾート施設整備(IR)法、いわゆるカジノ実施法が20日、参院本会議で可決、成立した。時事通信の世論調査では62%が反対しているというが、野党が激しく反発する中で、強行採決に至った結果だ。

これに異を唱える識者は多い。7月23日放送の「バラいろダンディ」(TOKYO MX)では、経済評論家の勝間和代さんが「カジノ解禁」に対して「政策として完全におかしい」と批判する場面があった。(文:okei)

「ギャンブル依存症の問題を解決せずにつくる」ことに批判

番組では、「IR法成立で全国の自治体が誘致合戦」という東京スポーツの記事を紹介。大阪や東京など、全国10か所以上が手を挙げているという。

意見を求められた勝間さんは、「日本人にとって大事な話」と前置きしつつ、こう指摘した。

「日本ではギャンブル依存症が4.8%という数字が出ています。これは海外の3倍から4倍です。なので、もともとすごく多いんですよ。『20人に1人がギャンブル依存症の人』なんてないんです、先進国では。その問題をまったく解決せずに、新しいギャンブル依存症を増やす場所をつくるというのは、政策として完全におかしいんですよ」

ギャンブル依存症4.8%というのは、2013年に厚生労働省が全国4000人に実施した面談調査のデータである。推計で約536万人がギャンブル依存症という結果だった。

調査はパチンコやスロットも含まれており、田村憲久厚生労働大臣(当時)が「パチンコ、スロットがこんなにある国は日本しかない」(だから数値的に多くなる)」と当時の閣議後の会見でコメントしたほどだ。田村氏はパチンコ、スロットが海外においてギャンブルにあたるかどうか、だから「世界に比べて一概に多いとは言えない」としていた。しかし、パチスロで身を持ち崩す人が一番多い状況からみて、要因として無視できるものではないはずだ。

なお、2017年の調査では「生涯で依存症が疑われる状態になった」ことのある人は3.6%(前年度比0.9ポイント増)、約320万人にのぼると推計された。一見減ったかにみえるが、調査を行なった研究班は、「調査方法が違い増減は評価できない」としている。

「利益は外資に行っちゃって、街にはペンペン草も生えない」

依存症対策に疑問が残る中、それでもカジノを含んだリゾート施設を誘致したい自治体は多い。だが脳科学者の苫米地英人さんは、「地元や一般庶民に経済効果はない」と否定的だった。

実際は、カジノ内での飲食はタダ同然で宿泊費も驚くほど安く、カジノの中でしか消費しないので、地元の街は潤わないという。

「ラスベガスに行ってみると、カジノの中はものすごい立派ですけど、ラスベガス市内に行ってみると、売春と麻薬しかない、貧乏な、ペンペン草も生えない状態なんですよ」

カジノ自体は、トランプ大統領に献金しているような世界の超巨大企業が運営するので、日本で色々手を挙げても歯が立たないという。

「ホントに経済効果があるかというと、外資以外では経済効果はないというのが本音なんで、各自治体の方はよく考えた方がいいです」

と苫米地さんは警鐘を鳴らしていた。利益は外資に取られ、地元は草も生えずに新たなギャンブル依存症が増えるのでは目も当てられない。新たな法案の成立に不安しか残らないのは何度目だろう。