2002年東京五輪。暑さ対策として、マラソン、競歩、ゴルフ、トライアスロンの競技の開始時間が早まったというニュースが報じられた。マラソンは7時半スタートが7時に、30分前倒しになったという。

 男子の優勝者が2時間10分で走れば、そのゴール時刻は9時10分。

 これをもって暑さ対策だと言われ、「7時に変更になりました」と、そのままニュースとして流すメディアの感覚が、僕にはさっぱり分からない。

 マラソンのスタート時刻はかねてから注目されていた問題だ。何時に変更されるか。早まるのは当然。ニュースとしての価値は、変更されるか否かではなく、どれほど早まるかにあった。それがわずか30分に終わったのだ。変わったことより、そちらの方が問題なのに「7時に変更になりました」と、腑抜けのような台詞を吐かれると、感覚は確かかと、開いた口が塞がらなくなる。

 一方、日本は連日、猛暑に見舞われている。アナウンサーは対策をしきりに訴えている。「本日も命に関わる危険な暑さ。日中の外出は極力避けるように。運動は原則、禁止レベルです」と。マラソンの開始時間が30分しか前倒しにならなかったニュースとの関連性については一切、触れようとせずに、だ。見て見ぬ振りを決め込んでいるのか。本当に鈍感なのか。いずれにしても大問題だが、それではとばかり、新国立競技場界隈を早朝、歩いてみることにした。

 6時半ぐらいから暑さを感じ始め、7時が近づくと真夏の強い陽射しが、首筋付近に痛みを伴いながら差し込んでくる。7時がゴールタイムならなんとか理解できるが、これから42.195キロ走るとなると厳しい。汗を何リットルかくことのなるのか。リタイア続出だろう。

 ネットにはしばらくすると、「7時スタートでは厳しい」という記事が専門家や元選手の声として掲載されるに違いない。「○○氏、語る」と。これがいつものパターンだ。少しでもネガティブな話は、知名度のある第3者に委ねられる傾向がある。

 最近見た新国立競技場建設工事のニュースについても似たことが言える。「4割が完成した」とのことだが、少なくともサッカー好きが注目しているのは、新スタジアムのどの部分かと言えば、スタンドの傾斜角だ。ピッチへの視角が急であるほど歓迎される。展開を俯瞰しやすいか否か。分かれ目はそこになる。

 建設中の新国立競技場の内部を見学し、そこで関係者から説明を受けたのなら、傾斜角は実際に確認することができたはずだ。

 五輪ではトラック付きのスタジアムとして使用されるが、五輪後はトラックが取り払われ、球技場に生まれ変わる。その4コースのあたりまで、客席の1階席部分がせり出してくる。

 前号での述べたとおり、1階席の傾斜角は現状20度。球技場にリニューアルされれば10度台まで下がる。その座席数は15000席から34000席に増える。収容人数は80000人になるので、スタンドが満員になった場合でも、観衆の40%以上が10度台の視角で試合を観戦することになる。まさに、サッカー観戦(ラグビー観戦もそうだろうが)に不適格なスタジアムが完成しそうになっている。

 これはひとつの事件。大問題に他ならないが、この件について、誰も騒ごうとしないのはどういうわけか。ネットでも話題になっているようには見えない。

 取材した記者は、せっかく現場まで出向きながら、その緩い客席を見て何も思わなかったのか。抱いた感想はなかったのか。

 マラソンのスタート時刻がわずか30分しか前倒しにならなくても、新国立競技場の緩い傾斜角を目の当たりにしても、特段反応を示さない。とすれば、記者の資質を疑いたくなる。

 日本代表の新監督に、森保一氏が就任しそうだとのニュースが、ここ2、3日のうちに一気に広まっている。それを受けて、森保氏の前向きなコメントも報じられている。だが、報道はそこ止まりだ。