戦争時代ものは時代考証がデタラメなので期待しないで見たら、案外よくできていて感心した。昭和10年頃の少年たちの丸坊主、昭和19年の軍港・呉の完璧な灯火管制、女たちのゾロリとした着物姿。みんなちゃんと描けている。心配した松本穂香の主演ぶりもなかなかいい。スタッフの「いいものを作る」という気迫が伺える。

子供の頃、遠いお使いに行った帰り、河原で絵を描いていて人攫いにさらわれそうになった浦野すず(子役。松本穂香)は、人攫いの荷台の中で、もう1人連れ去られていた男の子にキャラメルをやる。男の子はすずの手を引いて逃げ出しに成功する。後年、海軍の勤め人になっていた北条周作(松坂桃李)は、絶対にすずを自分の嫁にしたいと浦野家に申し込みに来て、2人は結婚するのだが。

周作には気難しい小姑の姉・径子(尾野真千子)や足の悪い母親(伊藤蘭)らがいて、のんびり育ったすずは頼りなげだが、祖母の森田イト(宮本信子)が初夜のことを教えてくれた通り、傘を夫に差し出すと、閨のことではなく、周作はその傘で柿を取ってきてくれたのだ。岡田惠和の脚本は機微を細やかに描く。唯一違和感があるのは上背のある松坂桃李で、第2次大戦中のニッポン海軍周辺の男子には見えない21世紀体型。ま、それは本人の責任ではない。有名なマンガ原作でも、この時代のディテールを真摯に描いて後世に残す意義は大きい。銀行や医者ばかりでない日曜劇場も歓迎である。(放送2018年7月15日21時〜)

(黄蘭)