アップル、鉛フリーはんだの特許侵害?米オハイオ州にて訴訟提起
アップルが「鉛フリーはんだ」(鉛を含まないはんだ)の特許を侵害したとして、米オハイオ州にて訴訟を提起されていることが明らかとなりました。

原告側は、シンガポールに拠点を置くSingapore Asahi Chemical & Solder Industries Pte Ltd(以下シンガポールアサヒ)。同社はアップルが、5種類のiPhoneを含むいくつかの製品製造において同社の特許を侵害しているとして、損害賠償の支払いなどを求めています。シンガポールアサヒが2001年に取得した本特許は、「有効量のすず、銅、銀と蒼鉛を含む、物理的および化学的に改善された性質を持つはんだ合金」に適用されるものです。

同社は本訴訟において、アップルが「当該技術を組み込んだ特定の家電製品を販売している」と主張。具体的にはiPhone 7、iPhone 7 Plus、iPhone 8およびiPhone 8 PlusとiPhone Xが特許を侵害していると指定されています。

シンガポールアサヒは、陪審裁判と損害の査定、三倍賠償(実際に被った損害賠償額の3倍、米国特許法284条に基づく)と弁護士費用の支払いを請求。訴状には、具体的な請求金額の記述はありません。

この特許訴訟の背景には、国際的に「鉛が人体や自然環境に有害である」との認識が定着し、世界各国で電子・電気機器への鉛の使用が法律で禁止、ないし自主規制の動きが広まった事情があります。

電子部品の搭載のため大量に使用されてきた従来のはんだは鉛と錫の合金であり、テレビやパソコンにも事実上、使用できなくなりました。そのため鉛を含まない「鉛フリーはんだ」の開発が進められ、iPhoneやスマートフォンなどにも必須の技術になったわけです。

原告のシンガポールアサヒは鉛フリーはんだ特許を開発した上で、20年近くも製造と販売をしてきた実績もあります。そうした周辺事情を考えると、裁判に訴えるだけの確かな根拠があるのかもしれません。

今のところ、アップルのコメントは発表されていません。同社はCPU特許侵害で敗訴した過去もあるため、今後の推移を見守りたいところです。