インドネシアのジャングルにあるグリーンスクール(筆者撮影)

現代の日本の子どもたちは、たいへんです。英語教育改革による小学校からの英語科目の導入やその後の入試改革など、まさに激動の変化の中を生きることになります。

ただ、海外に目を向けてみますと、日本と同じく子どもの教育は最も重要なテーマの1つとなっています。特に教育におカネをかける余裕がある富裕層は情報収集に余念がありません。

今回は、そんな富裕層の子どもたちが世界中から集まるユニークな教育機関や、日本のインターナショナルスクールの面白い取り組みもご紹介します。

ジャングルの中にある究極のエコ学校

近年、海外のインターナショナルスクールといえば、イギリスの伝統校でマレーシアのジョホール・バルに分校があるマルボロ・カレッジなどが有名です。

このような名門校の教育を受けるために親子で海外移住をする日本人富裕層も珍しくはありません。

実は同じアジアでもインドネシアのジャングルに、マルボロ・カレッジにも引けを取らない世界の富裕層から注目を集める究極のエコ学校があるのをご存じでしょうか。

意外にもその学校は、リゾートの印象が強いバリ島の観光地ウブドからタクシーで30分ほどの場所に位置しています。学校の名前は「グリーンスクール」といいます。


学校名も竹で作られていた(筆者撮影)

この学校が一躍世界で有名になったのは、設立者のジョン・ハーディ氏が行ったTEDでのプレゼンテーションからでした。彼のメッセージはとてもインパクトがありました。

「不確実な世界を生きる子どもたちに、必要とされるであろうすべての能力を伸ばす教育を与えたい」

2008年の開校以来、最先端のエコ教育が人気を呼び、当初は90人ほどだった学生も、現在は3歳から18歳まで日本人も含め30カ国以上の国から400人以上の学生が学んでいます。

筆者も仕事柄、世界の教育機関の視察は多いのですが、2017年に当校を訪問した際は、正直驚きました。教育機関の建物のスタイルはいわゆるキャンパス型とビル型に分かれます。ですが、グリーンスクールはアウトドア型とでも言える興味深いスタイルで、竹の見事な建築にも圧倒されました。

空調の効いた教室での学習がしみついている身としては、落ち着いて座学に集中できるか心配もありましたが、子どもたちは敷地内でのびのびとディスカッションをする姿もみられました。

多感な年代の彼らが、環境問題や社会のさまざまな問題の解決方法を学ぶのには最適な環境なのかもしれません。

近年、欧米の学校でも中国人を中心としたアジア系の学生の比率が高まる傾向にあるのですが、筆者がグリーンスクールで見たかぎり、欧米の学生が多いことに驚きました。学校の外では、保護者がイタリア語、英語、日本語などさまざまな母国語で話している様子がまさしく多国籍で興味深いものでした。

この学校の価値観は「iRespect」と言われていて、どことなく国連のSDGs(持続可能な開発目標)を彷彿とさせます。


学校の価値観を示した看板(筆者撮影)

Integrity(誠実性)、Responsibility(責任感)、Empathy(共感)、Sustainability(持続可能性)、Peace(平和)、Equality(対等)、Community(共同社会)、Trust(信頼)。

この共通の理念の下にグローバルリーダー育成を目指しているのです。

世界を生き抜くためのヒントがここにはあった

世界中からさまざまな宗教やバックグラウンドを持った子どもが集まって来ているため、核となる価値観が重要になってくるのです。この不安定な世界を生き抜くために必要な教育のヒントがここにある気がしました。


大自然の中で学ぶ究極のエコ学校だった(筆者撮影)

ここで学んだ学生たちは、将来母国に帰ってからも学校のネットワークが財産になるのはもちろんのこと、実は一緒にバリ島にきている富裕層の親同士のネットワークも魅力だといわれています。

親同士のビジネスチャンスにもつながるというわけです。

この学校もIB(インターナショナル・バカロレア)の基準を満たしているので、海外の高等教育機関への進学も可能となっています。

学校では見学ツアーも随時行っており、バリ島観光の際についでに足を伸ばすこともできます。

次に、日本のインターナショナルスクールでは、より短期間で費用も抑えた独自の海外研修を行う動きもあるようです。

フィリピンのセブ島は今や欧米に迫る語学留学ブームの地となっていますが、新しい動きとして「旅育(TABIIKU)」という親子留学スタイルがあります。


短期の海外研修プログラムの旅育を運営するのはグレースインターナショナル(写真:グレースインターナショナル)

これは、世界に展開するインターナショナルスクール、イートンハウス東京の創設者がプロデュースする短期の6日間の親子サマーキャンプです。

イートンハウスは、レッジョ・エミリア・アプローチという教育法を取り入れているのですが、これは子どもの個性を尊重し潜在能力を養うことを目的とした教育手法です。 

アメリカのディズニーやグーグル本社の社内保育園にも導入されている手法とのこと。

このセブ島での海外研修プログラムも、子どもの創造性を養うことを目的とした五感を使うようなカリキュラム、たとえばアート&クラフトやコミュニティ体験などが用意されています。五感を駆使する教育法は前述のグリーンスクールにも共通するところです。


アート&クラフトの活動もプログラムに入っている(写真:グレースインターナショナル)

短期間研修であればパパも参加できる

保護者の感想として、「幼少期に知的好奇心を刺激するプログラムに参加させることができて良かった」(A.Kさん 4歳の息子と参加)と、定期的に参加させたいという参加者からの意見が多いようです。

もちろん、母親だけでなく父親の姿もあり、女性の保護者からは、「参加したお父さんたちは“イクメンパパ”で、こんなにも子どもと向き合ってくれるお父さんもいるんだなぁと感じました」(M.Oさん 4歳の息子と参加)という感想もあり、親としての学びもあるというのが印象的でした。


働くパパと一緒に海の上での活動も(写真:グレースインターナショナル)

働き方改革が進み、イクメンパパが珍しくなくなってきた中でも、長期間海外に同行することは難しいかもしれません。

短期間でパパも参加できるという点も男性保護者の参加につながっているようです。

子どもと親の日中の過ごし方は別になっており、親は英語のマンツーマンレッスンやスパを体験することができるので、親子ともに現地を満喫することが可能ということです。

子どものグローバル教育はこれからさらに競争が激化していくと思われます。日本の学校も「アクティブラーニング」が盛り上がっていますが、より早期から異文化を経験させることが飛躍のカギを握っている気がしてなりません。