毎回、衝撃的ないじめの実態や呆れた学校側の対応などを配信してくださる、メルマガ『伝説の探偵』の著者で現役探偵でもある阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。今回は、被害者サイドからの訴えに耳を貸そうとしない呆れた校長の言い訳、そして「被害者のその後」について紹介しています。

仕組みがあっても穴だらけ、いじめ関連法は校長の一声で否定される

経緯

中学1年生のA君は、小学4年生の時から継続的に同級生のB君、C君から暴力的ないじめに遭っていた。小学6年生の夏休み、プール学習で学校のプールで泳ぎを習っている時に、水着を剥ぎ取られ、これをプール脇の水飲み場に捨てられてから小学校を卒業するまで、学校には行かなかった。

中学は越境して別の学区の中学校に行くつもりであったが、B君、C君は私立中学を受験するということや教育委員会が越境には消極的であまり勧めてもらえなかったこともあり、学区の中学校に進学することになった。

しかし、B君は受験に失敗し、学区の中学校に進学してきた。また、小学校からの申し伝えで、いじめの被害者と加害者についての配慮があったはずだが、なぜか同じクラスになっていた。

A君と保護者は中学校に抗議をしたが、一度決定したクラスは変更することはできないとのことで、担任教員がよく注意して対応するという妥協策の提示に応じざるを得なかった。

案の定、学校は対応せず、入学4月からA君はB君と新たな取り巻きによって、激しいいじめのターゲットにされた。5月に相談があり、いじめの内容を聞くと…

4月初めは、「ねぇねぇパンチ」といういじめが流行った。それはB君がA君の背後から肩を軽く「ねぇねぇ」と叩き、それに反応してA君が振り返ると、頬と顎の間あたりと、スナップの効いたグーパンチをするというもので、面白がった男子生徒はほぼ全員が、これに加わったようだが、その中の数名は表面上面白がっているだけで、内面ではこうした行為を嫌っていた。

そのため、この行為が担任の先生に報告され、B君らはそうした行為の中止を指導され、一方的に教員に叱られた。腹を立てたB君らはその日の放課後、A君の机を蹴ったり引っくり返したりした。

その後、この「ねぇねぇパンチ」は止んだが、新たないじめが始まった。5〜7名ほどですれ違いざまに、様々な箇所をつねるといういじめで複数箇所を赤紫色の痣があった。身体の傷を見る限り、一度や二度ではない傷痕であった。A君に話を聞くと、日に4、5回多い日には十数回やられていたそうで、この積み重ねが強いストレスになり、一度担任の先生に報告をしたが、「つねるのは暴力とは言わないし、やめろと強く言えばいい」と言われ、放置された。

もはや、これでは身も心ももたないと思ったA君は、母親に事情を打ち明けた。母親はすぐに傷を見て、数十カ所痣があるのを確認して、担任の先生に対応を願い出たが、担任の先生の対応は、「Aのお母さんから電話があって、お前らがAをつねるのをやめて欲しいそうだ」という軽い注意であった。

B君らはA君に傷を見せろと迫り、衣類を剥ぎ取ろうとした。クラス内の女子生徒らのグループが、「ここでやるな、巻き込むな」とB君らに苦言を呈したことで、行為は中止されたが、A君は具合が悪くなり、この日のその後すぐに、保健室に行き、早退した。

ここまでは、私がその後に聞き取った内容を含んでいる。

学校側の主張

学校側は、

「頬を軽くはたく」というイタズラやからかいがあり、A君が精神的に辛くなってしまったことは、指導が行く渡らなくて申し訳ないと思っているが、B君らは悪気があったわけではなく、A君がいつも元気がなかったから、盛り上げてあげようという「配慮に欠く」対応をしてしまった。B君らは、とても反省をしており、A君には直接謝りたいと言っている。

と、この件につき保護者に口頭で報告している。

それより、A君はいつ登校するんですか?

体調不良といっても、数日で回復するでしょう?

あまり休むと、勉強についていけなくなったり、今度はズル休みをしていると、いじめの対象になってしまいます。

迎えに行きますよ。

もっと強くならなければ、大人にだって色々嫌なこともありますから。

高校に進学できなくなりますよ。進級を認めるのも、このまま休み続けるなら、考えなければなりませんよ。

学校側の保護者への電話の大半は上の言葉で占められていた。

保護者から、「頬を軽くはたく」のレベルではなくて、「殴るのレベルです」と言っても、みんな、軽くはたいただけと言っていますと言い、それ以上は、学校は言及はしなかった。

また、「つねる」は暴力とまでは言わないとして、いじめについては完全に否定した。そして、これを暴力だとしていじめだというならば、A君には何らかの障害があるだろうから、検査を受けるように強く勧めてきたのだ。調査

この状況を受け、私はA君の小学校時代の同級生とその保護者の中で協力を受けることが可能な人物をA君の保護者に依頼し、承諾が得られた順に話を聞いて回った。

そのうちの一人、D君は、B君に「殴れ」と強く言われて、A君を殴ってしまったそうだ。ただ、一発目は軽く叩き、それではダメだと、B君に「もっと強くやれ!」と脅されて、思いっきり殴ってしまった。

実はD君も、その日から3日間ほど、学校を休んでいた。理由は思いっきり殴ってしまった罪悪感からであった。また、彼は先生からの聞き取りは受けていなかったし、実際のところ、担任の先生が聞き取りをしたのは、B君とその取り巻き3人ほどであった。

女子生徒E子さんは、A君がつねられる様子を見ていた。廊下をA君が歩いていると、B君ら5〜6人が廊下の左右に別れ、A君を追いかけるようにして左右から何度もつねり、A君がうずくまっていたということであった。

また、最寄りの整形外科で診察してもらったところ、脇腹や二の腕、お腹、臀部、太腿などには、内出血があったという診断書をもらった。

A君と私でA君が思い出せる限りで、集団で確実につねられた回数を数えたところ、124回あり、最低でも4度、4カ所はつねられているから、最低でも496回もつねられたことになる。

学校と交渉

これらを報告書にして、私は保護者とともに学校を訪問した。

写真や医師の見解、継続的な行為による精神的、肉体的なダメージについて説明すると、学校はあっさりといじめを認めた。

また、いじめの定義について、私から説明を行い、当然知っていますよね? と聞いてみると、学校長らは、知っていますともと言い放った、そこで、いじめの定義を聞いて見た。すると、

「弱いものを一方的に攻撃するなどの行為のことだ」

それは昭和61年の旧定義であり、現代定義とは大きく異なる。これをさらに指摘すると、学校長は、「#me too」問題と同じだと言い張り、故意でないかぎり、いじめの認定はしないと言い放った。「言い得、言われた損は許さない」「#me too運動は、まるで痴漢冤罪と同じだ」と吐き捨てるように言った。

まるで話にならないため、後日、管轄の教育委員会の指導主事にも参加してもらえるように、その場で校長に連絡を入れてもらった。

後日、指導主事が入っての話し合いにおいては、話し合いのはじめ、校長がムクれ面で、いきなり頭を下げた。

● 校長の言い訳「#me too」の件は、興奮してしまい、失言してしまったので、取り消したい。いじめの定義については、ついつい失念してしまって古い定義を言ってしまった。訂正したい。ただし、学校として認めているのは、軽くはたくこと、つねるのは軽度であるので、軽微ないじめと判定している。担任は被害側保護者が言うような発言したことを認めていないが、そう受け取られるような何かを言ったかもしれないと言うことだったので、発言にはよく注意するように指導した。

同席していた被害者であるA君の父親は拳を強く握りしめていた。

● 教育委員会

指導主事は、「保護者のお怒りはごもっとも」と言いつつも、いじめはいじめという認定の中で、加害生徒への指導を含めて対応して行くので、登校を促してほしいという要望を出した。

● 保護者

保護者は、失言だと認めたのはいいが、政治家ではあるまいし、発言を訂正したいと言っても、不信感は増すばかりである。つねる1回の行動は軽度かもしれないが、それが合計で400回を超えるほどのことを1ヶ月にも満たない間にやられれば、それ全体は軽度とは言い難いはずだ。それを軽度、軽微とされては、納得がいかない。

特に加害生徒については特定されているのに、何らの指導もされていないときく。簡単な口頭の注意ではなく、生活指導からしっかりと行うべきであるし、特にBについては、小学生時代からいじめを継続させているのだから、少なからず、クラス替えをするなど今すぐ、安全の確保をしてくれなければ、安心して学校へ行かせるわけにはいかないし、本人も行こうという気にはならない。

この3者の話し合いは平行線であり、校長や教育委員会指導主事は、「仰る事はごもっとも」と言いつつ、登校指導をしてくれと言い張った。

ちなみに、A君本人は、およそ20日間ほど休み、学習を再開し始めていた。それは、A君本人に色々なフリースクールに顔を出してもらい、そこで、色々な同年代の子たちと話をしたり、交流をする事で、徐々に回復し、「くだらない奴らに人生までも壊されてたまるか!」と勉強を始めたのだ。

そこで、私からは、最近成立した「教育機会確保法」に基づく、フリースクールでの学習を出席扱いにしてもらえないかの打診をした。

ところが、学校長によれば、それは教育センターなど区などが設けている施設への登校についてであり、民間のフリースクールについては、校長が認めなければ、それはできないという事で、校長としては、この程度のいじめにおいては認められない、という事であった。

もしも、学校に来ないのであれば、A君を「出席停止処分」にして、出席しなくて良いことにすると言い始めた。

この学校長は元教育委員会の職員であり、談話では成績のことしか言わない人物であり、成績優秀者やスポーツや合唱などでコンクールなどに出場することしか話さない人物である。

一人のいじめの被害者、その保護者、巷のNPOなど、アリンコ程度にか見えないかもしれない。保護者は席を立ってしまったが、私は5分くれと願い出て、1つの条件を提案した。

学校には、生徒らが登校し終わる9時台に保健室にのみ一度顔を出す。だが、学校には滞在せず、彼(A君)は、民間のフリースクールに行く。という流れで、保健室にタッチしたということを評価して、出席扱いにしてほしい。2年生になるときには、必ずクラス替えをしてもらって、Bを含めて、特に加害行為に加担した生徒らとはクラスを分けてもらう約束をしてほしい。

これについては、指導主事が、何かを言おうとした校長を遮って、「検討します」と答えた。

その日の夜、学校から保護者のところに電話があり、保健室タッチで登校を認めるので、それをすることから始めましょうと、提案を呑んだという知らせが来たということであった。

何としてもスッキリとしない結果であったが、教育機会確保法などを出しても、それを許可するのが校長だとこられてしまえば、この法律はもはや使い物にならない。仮に、学校長の判断に誤りがあったりしても、学校としては相当な抵抗ができるのだろう。

確かに法令には、フリースクールなど民間との連携を図るようにとはあるが、民間の施設へ行くことで単位を認めるとか出席扱いにするなどは、読み取れない。とりあえずできた、足がかりになる法なのだろう。それが、穴だらけのザル法であれば、結果、都合の良いように使われるだけだ。

校長の意識も低ければ、教員の意識も低くなりやすい。なぜなら、上司に逆らって正しいことをしようとしても、上司が否定してしまえば、一般の教員はそれ以上のことをする事は許されないのだ。

出席停止の発動も加害者ではなく被害者に使われるケースの方が多いのではないかと聞くことがある。それは違和感しかないだろう。

A君は今回の結果を「仕方ないよ」と受け入れて、校門前で待っている嘱託の先生と一緒に保健室に行き、判子を押してもらって、その足でフリースクールか自宅に戻るという生活をしている。

夕方過ぎになると、母親が運転する車で、県境をわざわざ超えて、予備校(大手の塾)で勉強をしている。

その原動力は、「負けてたまるかっ!」「今に見てろよ、お前(B君)よりいい高校に行って、良い大学に行ってやる!」という気持ちである。

彼のガッツをサポートしたいと思う。

image by: Flickr

MAG2 NEWS