トルシエ氏は、ベルギー戦の逆転負けを「あまりに繊細すぎた」と持論を展開している【写真:Getty Images】

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元日本代表監督がロシアW杯を総括、優勝した母国フランスではムバッペを絶賛

 ロシア・ワールドカップ(W杯)は現地時間15日の決勝でフランスが4-2とクロアチアを下し、20年ぶり2度目の優勝を果たして幕を閉じた。

 元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏は中国メディア「新浪体育」の取材に応じ、ベルギー戦で2-0と一時リードしながらも2-3と逆転負けを喫した日本について「あまりに繊細すぎた」と持論を展開している。

 1998年フランスW杯以来となる母国のW杯優勝を受けて、トルシエ氏は「フランスは戦術を上手く駆使していたし、デシャン監督が選手個々の個性を最大限に生かしていた」と分析。ディディエ・デシャン監督は、ブラジルのマリオ・ザガロ氏、ドイツのフランツ・ベッケンバウアー氏に次ぎ、選手と指揮官の両方でW杯制覇を成し遂げた史上3人目の人物となった。トルシエ氏もチームをまとめ上げたデシャン監督の手腕を手放しで称賛している。

 そのなかで同氏は「特筆すべきはムバッペだ」と言及し、決勝でも1ゴールを挙げるなど、大会4ゴールと活躍した19歳FWキリアン・ムバッペの存在感が大きかったと指摘した。

「もしムバッペがいなければ、フランスがW杯で優勝していたかどうか分からない。ムバッペはスピードを駆使して攻撃のスペースを作り、フランスの攻撃はとても効果的に機能していた」

 その一方で、2002年日韓W杯大会で日本代表を率いて史上初のベスト16進出に導いたトルシエ氏は、日本代表についても口を開き、決勝トーナメント1回戦のベルギー戦について「あの試合は理解できなかった」と切り出すと、次のように続けている。


「日本はベルギーよりも良いプレーをしていた」

「日本はとても賢かったが、とても繊細だった。終盤はゲームをコントロールできていなかったし、今のところその原因を誰も説明できていない」

 日本は後半早々にMF原口元気、MF乾貴士の連続ゴールで2-0とリード。ところが後半途中から徐々に主導権を握られ、連続失点で2-2と追いつかれると、アディショナルタイムに高速カウンターから被弾し、最終的に2-3と痛恨の逆転負けを喫した。

「2点のリード後、ゲームをコントロールすることに経験を生かすべきだった。日本はベスト8に進出することができたはずだ」

 2点リード後にゲームをコントロールできていなかったと指摘。経験豊富な選手が多くいながらも、3連続失点で逆転された展開に驚きを隠せなかったようだ。

「多くの選手は経験が豊富で、欧州でもプレーしている。それでも、あんな未熟な形で敗れた。私の監督時代には見たことがない。あまりに繊細すぎた」

 かつて率いた日本代表の逆転負けをそう分析したトルシエ氏。「日本はベルギーよりも良いプレーをしていた」と評価しているだけに、2点リード後の展開に思うところがあったようだ。


フランス優勝で「現代サッカーが新しい時代に突入したのかもしれない」

 トルシエ氏はロシアW杯を総括し、現代サッカーの潮流についても言及。母国フランスの“効率的なスタイル”がサッカー界に一石を投じるとしている。

「1000本以上のパスを通しても、なかなか得点につながらずに敗れたチームもある。フランスは効率的なカウンター戦術を駆使して勝者となった。現代サッカーが新しい時代に突入したのかもしれない」

 フランスはかつて華麗なパス回しがシャンパンの泡にたとえられ、スペクタクルな「シャンパンサッカー」と称された。しかし、今大会はカウンター主体でW杯を制しており、トルシエ氏は新時代の胎動を感じているようだ。


(Football ZONE web編集部)