豪雨災害への備えになる気象絵本『せきらんうんのいっしょう』 SNSが生む防災意識の芽生え

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全国で被害が起きた「平成30年7月豪雨」をはじめ、近年さまざまな気象災害が発生している。

こうした気象災害を、「天災」「想定外の災害」と片付けてはいけない。
大人だけでなく、子どもたちも、気象への関心や防災意識を持つことが必要だ。

そんなきっかけとなるかもしれないのが、7月20日に発売される気象絵本『せきらんうんのいっしょう』(作・荒木健太郎/絵・小沢かな/発行・ジャムハウス)だ。

局地的な大雨で被害を生む豪雨の原因となるのが積乱雲だ。
積乱雲の発生と発達から衰退の期間は約30分から1時間という極めて短時間であるという。

この絵本『せきらんうんのいっしょう』では、その積乱雲のライフサイクルを雲の目線から描いている。


せきらんうんのいっしょう表紙の画像


●子どもから大人まで気象への関心と防災意識を芽生えさせる
この絵本の作者である荒木健太郎氏は、雲研究者として知られる気象庁気象研究所の研究官。
2016年11月24日に関東で季節外れの雪が降った際、スマートフォンで撮影した雪結晶の写真に、ハッシュタグをつけTwitterへの投稿の呼びかけを行い、5,200枚以上の画像を集めた「#関東雪結晶プロジェクト」でも注目された。
積極的にSNSを活用する研究者のひとりである。
この市民参加型の気象研究による観測事例の蓄積は、関東の降雪予測の精度向上に繋がっている。

●SNSでの注目から生まれた気象絵本
気象絵本『せきらんうんのいっしょう』は、ある日、荒木氏が行き詰まった時に書いた落書きがきっかけで生まれたという。
この手描きの絵は、Twitter上で2万を越えるリツイートがされ、拡散とともに大きな話題となった。


せきらんうんのいっしょう手描きイラストの画像


『せきらんうんのいっしょう』の絵を描くのは、大学のグライダー部を舞台としたコミック『ブルーサーマル-青凪大学体育会航空部』(新潮社バンチコミックス)等を手がけ、空や雲の描写に定評のある小沢かな氏。

積乱雲の心を感じ、夏の空を楽しめるようになる『せきらんうんのいっしょう』は、親しみやすさだけでなく、気象学的にも実に丁寧で正確な描写をしているのも特徴となっている。


せきらんうんのいっしょう本文の画像


●積乱雲を含む豪雨対策での気象情報利用について
巻末には、積乱雲の観天望気や気象情報利用についての解説があり、ぜひ親子でいっしょに読みたいページだ。

この中で紹介されている、
・「雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト)」
・「今後の雨(降水短時間予報)」
は、スマートフォンからでも気軽に見ることができる。
普段から使い慣れて、急な大雨や災害の危険から身を守る備えとしたいツールだ。


せきらんうんのいっしょう解説ページの画像


気象絵本『せきらんうんのいっしょう』は、小学校低学年から大人まで、気象への好奇心や、防災意識の芽生えとボトムアップに役立つ絵本なのである。

気象絵本「せきらんうんのいっしょう」