勝点3を獲得したコロンビア戦後、昌子は「出てみないと味わえない経験ができた」と手応えを語った。(C)Getty Images

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 今回のワールドカップで大きく成長した選手をひとり選ぶなら、このCBだ。大会前のポジション争いでは槙野の後塵を拝し、6月8日の強化試合では控えに回る。しかし、そのスイス戦直後の練習から主力組に入ると、本番初戦のコロンビア戦で先発の座を手に入れた。
 
 初めての大舞台。経験豊富なベテランや海外組に混じり、国内組では唯一の先発だった。入場時こそ緊張した表情を見せていたが、「(緊張が仲間に)伝染したらまずい」と、すぐに切り替えた。集中しており、吉田とも息が合った連係で、ファルカオや途中出場のハメスを抑え込んだ。
 
「いろんな情報を頭の中で整理して、良い対応ができた。本当に気持ち良かった。クラブワールドカップとも雰囲気は違うし、出てみないと味わえない経験ができた。『(ワールドカップは)凄い』とみんなが言う気持ちが分かった」と充実感を覗かせた。
 
 続くセネガル戦も先発を任される。昌子には国際経験が不足しているという情報は、相手にも入っていた。「僕がボールを持てば、スイッチオンのタイミングだった」。昌子がプレスの標的となっていることを早めに察知すると、周囲が機転を利かせ、長友が昌子を飛ばして吉田にパスを送るなど、上手くサポートしてくれた。
 
 セネガル戦では2失点を喫したが、昌子自身のパフォーマンスは及第点がつく。「ヘディングでも止められた。しっかり潰せば相手もリズムが出づらいと思っていたので、良かった」とアフリカ勢との対戦で自信を付けた。
 
 大会直前、日本代表への関心度と期待値の低さを知ると、反骨心を露わにしていた。
 
「ダメだろうと思っている人が、手のひらを返すような結果を残したい。それができるのは僕らで、自分たちを信じている」
 
 ポーランド戦は指揮官の戦略でベンチに温存されたが、日本代表のグループリーグ突破に貢献。良い意味で前評判を覆した有言実行の男は、これからも逞しく成長し続けるに違いない。