病で四肢切断を強いられたアレックスさん(左)(画像は『Metro 2018年7月2日付「Dad who thought he had ‘man flu’ says losing his legs was ‘best year of his life’」(Picture: The Townsend/Lewis Family)』のスクリーンショット)

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風邪だと思っていた症状が命を奪いかねない深刻な病に陥り、顔の一部を失い四肢切断を余儀なくされた男性。悪夢のような出来事から4年余り経った現在、男性が遂げた強靭な回復の背景には懸命に支えてくれた家族の存在があった。英メディア『Metro』などが伝えている。

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英ハンプシャー州の小さな村オーバーワロップでパートナーのルーシー・タウンセンドさん(44歳)とともにパブを経営していたアレックス・ルイスさん(38歳)の人生は、2013年11月17日を境に大きく変わることとなった。

アレックスさんは、その2週間前から風邪のような症状で頭痛が酷く体中に痛みがあったが、2〜3日休めば良くなるだろうと思っていた。ところが11月13日の夜中にトイレで血尿を出し、ルーシーさんはアレックスさんの体が紫色に変わっていることに気付いてすぐに救急車を呼んだ。

ウィンチェスター病院へ緊急搬送されたアレックスさんは、検査の結果A群連鎖球菌によって引き起こされるレンサ球菌毒素性ショック症候群を起こしていることがわかった。加えて敗血症と壊死性筋膜炎になっており、臓器が機能停止寸前であったことから、生存率はわずか3%と告知を受けた。入院してわずか数日後には生命維持装置を外す以外の選択肢はないと思われたアレックスさんだったが、もう1日様子を見ようと医師らが下した決断が、結果的にはアレックスさんの命を救った。その後ソールズベリー病院のICU(集中治療室)へ転院したアレックスさんは、しばらくして医師から「感染症の影響で顔の一部を失うことと四肢の切断は避けられない」と伝えられた。医師らはアレックスさんの右腕の回復を最後まで望んでいたが、命を救うために結局右腕も肘から下を切断せざるを得なかった。その後、失ってしまった口の周りの皮膚を再建するために肩の皮膚を上下唇に移植する世界初とされる手術が行われた。

およそ6か月半の入院と18回もの手術をしたアレックスさんにとって最も辛かったことは、当時3歳だった息子サム君との関係がぎくしゃくしてしまったことだった。これまで父子の強い絆を育んできたにもかかわらず、やはり幼いサム君にとって、すっかり変わってしまった父親の姿を受け入れることなど到底できず、目を合わせたがらずキスやハグも敬遠するようになった。アレックスさんは、度重なる手術や辛いリハビリ治療の合間にひとり病室で涙を流す日も少なくなかったようだ。

しかしそんなアレックスさんをひたすら支え続けたのは、パートナーのルーシーさんだった。多忙なパブ経営の傍ら頻繁にサム君を伴って病院を訪れ、アレックスさんが退院した時にも献身的にサポートし、励まし続けた。そして何よりアレックスさん自身が障害に負けたくない気持ちを持っており、自立できるよう並々ならぬ努力を重ねた。最近ではアレックスさんのことを知ったコスメティックアーティストであり世界的に有名な医療タトゥーイストのカレン・ベイツさんが無料で施術をオファーし、アレックスさんは口の周りに移植した皮膚に唇のタトゥーを彫ってもらった。

想像を絶する自身の努力や家族らの懸命なサポートのおかげで、アレックスさんはほとんどを自分でこなせるようにまで回復した。そして時間の経過とともにサム君のアレックスさんへの接し方も元通りになり、今ではこれまでにないほど息子と強い絆を築いているようだ。アレックスさんは、この4年余りを振り返ると同時に現在の心境をこのように話している。

「自分の身に起こったことが信じられず、悪夢を見ているようでした。でも動けなくなった体は事実で、本当に辛い時期もありました。ですがこの4年間、これまで生きてきた33年間よりも充実した人生を過ごしていると実感しています。自分がこんなふうになってから、やはり家族の存在がどれほど大切かということにも気付かされました。」

「四肢があった時にもっとしておけば良かったと思うことは山ほどあります。でもそんな後悔を今後はしないように、四肢がなくてもいろんなことにチャレンジしたい。自分は、手脚を失っても変わらないのだということを証明したいのです。今では息子は私の姿に慣れてくれました。息子にも、障害を抱えているからといって何もできないような自分を見せたくありませんでした。誰でもみな、障害を乗り越えていける道を見つけなければならないと思います。息子は今の自分を見て元気いっぱいだと感じているのではないでしょうか。息子がもっと成長して、これが今の父の姿なんだと受け入れてくれる日が来ればいいなと思っています。」

アレックスさんをこれまで診てきた医師は「これほど深刻な症状から生存できるというのはそうそうないことであり、奇跡です」と語っている。四肢を失ってからスカイダイビングやカヤックなど様々なアクティビティにチャレンジし、各地で講演会を行い、更に自立した人生を目指してより良い義肢を手に入るために自ら基金サイト「Alex Lewis Trust」を立ち上げたアレックスさんは、来年エチオピアで最も高い山でハンドサイクリングをする予定だという。

このニュースを知った人からは「アレックスさんの強さと勇気には感動する。これからも良い人生を送ってほしい」「家族の支えがあってこそ、というところもあるだろうね」「想像もできないほどの辛さや困難を乗り越えてここまで来ることができたんだろうな。すごいな」「素敵な家族とこれからも幸せでありますように」といった声があがっている。

画像は『Metro 2018年7月2日付「Dad who thought he had ‘man flu’ says losing his legs was ‘best year of his life’」(Picture: The Townsend/Lewis Family)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)