セネガル戦での本田のゴールを喜ぶ長友。その表情にも闘志が溢れ出る。写真:Getty Images

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 今から4年前、長友佑都はブラジル・ワールドカップのコロンビア戦でノックアウトされた。
 
「ズタズタにされたんでね。お前ら、そんなんじゃ通用しねえよと。ボクシングで言うと、思いっきり鼻にパンチを入れられて、失神して倒れるくらいのレベルの試合だった。だからこそ、借りを返したいし、この4年間どういう気持ちで過ごしてきたかは彼らには分からないと思うから。それを強い気持ちでピッチにぶつけたいですね」
 
 だから、ロシア・ワールドカップに懸ける想いは半端なかった。勝つためならなんでもする。その決意の表れが今にして思えば、金髪だったのかもしれない。スイスに敗れた翌日の6月9日、長友はこんなことを言っていた。
 
「チームの雰囲気もそうですけど、自分自身の気分も変えたいなというところもあって。このワールドカップでやっぱり自分にも世界に対してアピールしたいという気持ちもありますし、いろんな思いがあって(金髪に)しました」
 
 金髪のベテランはここを境にどこかスイッチが入ったようだった。本田圭佑にさえも「ミスを減らしてもらわないと困る」と苦言を呈し、自分に対しても「走る、戦うという根本的な部分ができていない」とダメ出しをする。
 
 彼が仲間にも自分にも厳しく接するのは、8年前のワールドカップで偉大な先輩たちの行動や言動を見てきたからだ。
 
「俊さん(中村俊輔)のあの行動、あの時の闘莉王さんの言動、そのすべてが染み渡るじゃないけど。自分にやれることはサッカー以外でもあるというのは感じているんで。あの時、どういう想いでね、ベテランの選手たちが僕たちに接してくれたのか、今になって痛いほど分かります」
 
 ロシア・ワールドカップが始まると、長友はその想いをプレーにぶつける。とりわけ印象的だったのが、コロンビア戦でのガッツポーズ。18分、ファン・ギジェルモ・クアドラードとの1対1を制すと彼は「どうだ」と言わんばかりに拳を握りしめた。
 
「ちょっと出ていましたね(笑)。クアドラードには絶対に負けたくない、これ以上負けたくないという想いが自分の心にずっとあったので。彼が得意な1対1で勝負してきたので、本能的に(ガッツポーズが)出てしまいました。1プレーでガッツポーズをすることはあまりないので、言われて気付くというか確かにやったなという感じです」
 
 そうしたアクションでチームに闘争心を注入する姿はまさに“闘将”。10年大会の闘莉王が乗り移ったような印象さえあった。
 
 続くセネガル戦で乾貴士のゴールをアシストすると、ポーランド戦でも安定したパフォーマンスを披露。ただ、そのプレー以上に目を見張ったのが、仲間への叱咤激励だ。

 ポーランド戦、批判にさらされる川島永嗣がビッグセーブをすれば駆け寄って声をかけ、宇佐美貴史が自陣エリア内でボールを外にクリアすれば彼の背中をポンポンと叩く。そうしたアクションからもチームを引っ張る姿勢が見て取れた。川島についてはこうもコメントしている。
 
「これだけ日本代表を支えてきていて、彼に救われた試合は本当に多い。ゴールキーパーは凄い難しいポジションで、すごいセーブをしていても、ひとつのミスで批判されたりする。僕もずっと一緒にプレーしてきましたが、助けてきてもらったので、その批判は自分のように悔しかった。ゴリラの兄貴なので、やっぱり思い入れがあるというか、一つひとつのプレーに飛んで行って称賛したいような気持で行動をしていました」
 
 なぜここまで頑張れるのか。そこには「批判上等」という精神がある。「僕自身は批判に慣れているし、イタリアで戦ってきて、批判というものをエネルギーにできることを分かっている」から、決してめげることはなかった。