「日本代表に勝機はあり!ベルギー攻略のための重要点を5分でおさらい」

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ここから本当の意味でのワールドカップが始まる。

強者がひしめく決勝トーナメントと勝ち抜けに主眼に置いたグループリーグとではその熱量は全く異なるものであり、ここまで試合をご覧になった方であれば、その「次元の違い」を既に感じているはずだ。

そして、日本代表が決勝トーナメント一回戦(ベスト16)で戦うのはベルギーである。

監督西野明も「世界のトップ3」と警戒を強めるように、彼らが強豪国の中の強豪国であることは言うまでもなく、今大会におけるタレント力は「参加国の中でも一、二を争うレベル」と断言しても差し支えないだろう。

とは言え、どの相手であっても必ず勝機は存在するものだ。

上述の指揮官は「ベルギーには弱点がたくさんある」と試合前の記者会見で語っていたが、何も威勢を張るための発言ではないだろう。間違いなくベルギーには明確な弱点が存在するチームであるからだ。

今稿では、彼らの特徴を復習した上で、日本代表が突くべきポイントを簡単にまとめたいと思う。

コロンビア戦、セネガル戦と筆者が指摘したポイントからゴールが生まれたということもあり、ここまで好評を頂けているようだが、今回も「運命の一戦」のお共として楽しんで頂けると幸いだ。

ベルギーの基本戦術とは?

まずはベルギーのシステム的な特徴を簡単に触れていこくとにしよう。

基本的なフォーメーションは「3-4-2-1」で、ベルギー不動の陣形である。

ロベルト・マルティネス監督は「大会前まで4バックも用意してくるのではないか」という話もあったが、(一昨年に行われた)ワールドカップ予選のボスニア・ヘルツェゴビナとの一戦で採用して以降、オプションにすらしていない。彼がここで「奇襲」を仕掛ける可能性は極めて低く、日本戦も限りなく100%の確率でこの「3-4-2-1」を敷くだろう。

なお、この「3-4-2-1」は豊富なタレント陣を持て余さないように考えられたフォーメーションという印象が強い。

ロメル・ルカク、エデン・アザール、ドリース・メルテンス、ケヴィン・デ・ブライネはもちろんのこと、サイドにも右のトマ・ムニエ(or ナセル・シャドリ)、左のヤニック・カラスコ(or トルガン・アザール)と実力者を置いている点も忘れてはならないポイントだ。

そのため、この両ウィングバックが攻撃に関与するケースも非常に多く、攻撃時には「3-1-3-3(3-1-1-5)」とも表しても過言ではないほど「前掛り」な陣形になることも少なくない。

しかし、その一方の守備では、前線の守備力があまり計算できない(守備に労力を割かせたくない)ため、相手のビルドアップに対して積極的にボールを奪うような戦術はほとんど見られない。

なるべく「敵陣での試合を進めること」を理想としており、守勢に回った際には潔く引く点も特徴の一つと言えるだろう。

つまり、相手にボールを奪われた際のルールとして、.ウンタープレスを行い、ショートカウンターを防ぐ(可能であれば複数で囲い、再び自分たちのボールにする)▲棔璽襯曠襯澄爾帽圓選手以外は帰陣できる準備を行い、ボールを取り損ねた場合は、両ウィングバックが下がり「5-4-1」の形を取るという共通理解をチーム全体で持っているわけだ。

よって、試合前の事前情報としては、以下のことを頭に入れておくのがよいだろう。

ベルギーの攻撃時(日本代表が守勢に回る際)

前線に人数をかけた「3-1-3-3」のような陣形を取り、デ・ブライネは自由に移動。アザールも左サイドから中央に積極的に顔を出し、ハーフスペースやセンターエリアでもボールを触る。

ベルギーの守備時(日本がボールを持った際)

引く位置で守備ブロックを敷いた「5-4-1」に。5バックの前に4人のMFを置いてのブロックを敷くが、左のアザールはカウンター要員としてそこまで下がらない。

※カウンタープレス・・・相手陣地でボールを奪われた際に、近くの選手がボールを奪った選手に対して奪い返しに行き、相手チームが簡単にカウンターを行わないようにする戦術。スペイン、ドイツ代表などがその代表格。

破壊力抜群の攻撃陣だが…

続いてその攻撃面に焦点を当てたい。

ベルギーは上述のように「豪華なタレント陣を可能な限り配置した」システムのチームであるが故に、「再現性のあるグループ戦術で相手守備陣を攻略するというケース」がほとんどない。今大会で言えば、誰が出てもポジションが変わろうとも同じような攻撃を見せる、スウェーデン、アイスランド、オーストラリアなどとは真逆に位置するチームコンセプトだ。

ここまでの彼らの戦い方を見るに「ビルドアップ時に、3バックの両サイドが開いてウィングバックは高い位置を取る」、「シャドーの選手が大外に開いた時には、ウィングバックはハーフスペースのポジションを取り、トライアングルを作る」という決めごとは垣間見れるが、いずれもシンプルな戦術であり、現代サッカーにおいては基礎中の基礎である。

肝心の「崩し」の場面については、個々の能力が爆発した時、もしくは、選手間が即興で同じ絵を描けた時にのみ成功するチームと評しても間違いではないだろう。

しかし、それでも個々のタレント力が傑出しているため、たとえ試合の流れが悪い時でも「どうにかしてしまう」ということは念頭に置く必要がある。

その「どうにかしてしまう」という筆頭格が、「3-4-2-1」の「2」で起用されるエデン・アザール。そして、「3-4-2-1」の「4」の中央に位置するケヴィン・デ・ブライネの二人である。

ちなみに、ロメル・ルカクの存在も極めて重要だが、彼はあくまでもフィニッシャーとして脅威を与え得られる選手。アザールやデ・ブライネのように「組み立て」、「崩し」、「仕上げ」の三役で活躍できるわけではなく、チームへの影響度に限定すれば、「彼らよりも少し落ちる」と筆者は見ている。

話を戻してアザールについてだが、アザールはニュートラルの状態から瞬間的にトップギアに上げる「爆速ドリブル」が最大の長所で、トップスピード時でも足からボールが離れることはほとんどない。そのため、彼が「自分の形」に入ってしまうと、多くの守備者は無抵抗状態となり、グループリーグで彼と対峙したパナマやチュニジアも「ファールでしか止められない」という悪夢のような状態に何度も陥っていた。

さらに、このドリブルはゴールに向かっての最短距離で仕掛ける点、引く位置からの長距離ドリブルも得意としている点も特徴的だ。日本からみると、ディフェンシブサードにおいても警戒を緩めてはならないポイントである。

セットプレーでの高さ勝負では日本は不利になるため、無駄なファールは行いたくないところだが、「アザールのドリブルはミドルサードのところでも最悪ファールで潰す」という考えは皆が持つ必要はあるだろう。

次にデ・ブライネだが、彼の主な役割は「リズムチェンジャ―」である。

本来は一列前のポジションでプレーする選手であるが、彼がセントラルミッドフィルダーで起用されることにより、ベルギーは攻撃のスイッチを簡単に入れられるようになり、オールレンジでの攻撃が可能となった。

自陣の低い位置からの長短のパスを織り交ぜたゲームメイクはお手の物で、世界最高レベルのキックの質と視野で予期せぬタイミングからキラーパスは彼の真骨頂。さらに恐ろしいのは、シューターとしての才も非凡でシュートレンジもかなり広い。ここまではまだノーゴールであるが、初得点が日本戦になる可能性は十分ある。

つまり、彼もアザールと同様に「組み立て」、「崩し」、「仕上げ」の三役をこなせる選手というわけである。日本は「彼らに自由を与えない」対策が不可避であり、特にアザールとデ・ブライネのラインも可能な限り分断するべきだ。

課題山積の守備

次に守備面に話を移すが、こちらは攻撃面と比べるとそこまで「脅威」には感じないだろう。

基本的なルールは前述の通りだが、「困った時は一度引く」という点が徹底されており、日本にとってはピンチを招く可能性の高い「前からのプレッシング」は行ってこない。

仮に筆者がベルギーの監督の立場であれば、ドリース・メルテンスではなくマルアヌ・フェライニを起用して前線の守備意識とボール奪取力を強化。そして、「オールコートプレス」を仕掛け、早めに試合を決めてしまう展開に持ち込むが、おそらく、ロベルト・マルティネスはそのような奇策には出ないだろう。

フェライニは、ベルギーでも屈指の空中戦の強さとボールキープ力、そしてリーチの長いタックルがあり、彼が起用された際には日本にとって最も厄介な存在になり得るのだが…。

また、守備の特徴としては「アザールの攻め残り」も触れておくべきだろう。

アザールは「5-4-1」守備陣形の「4」の左サイドにポジションを取るが、彼が守備時に与えられている仕事はボールを奪うことではなく、カウンターの機会を狙うことにある。

そのため、相手サイドバックがオーバーラップした際のチェックもほぼカラスコに任せ、自身が行うのはパスコースの間(いわゆる中間ポジション)に立つぐらいで、自身深くまでマークに奔走することはない。

つまり、その貢献度の低さから、ベルギーの左サイドは守備時に数的不利になることが多い。

右サイドのムニエよりもボールに対して近い距離で守備をしたがるヤニック・カラスコのマーキング能力、セントラルミッドフィルダーのアクセル・ヴィツェルのカバーリング能力、左センターバックのヤン・ヴェルトンゲンの危機察知能力などでなんとか誤魔化しているシーンが散見されるが実状だ。

以上のことから、日本は(カウンターの起点となるアザールに対しては長谷部誠が付くことでリスクマネージメントできれば)、酒井宏樹と原口元気の縦関係、さらにそこにトップ下の香川真司も絡む形で、右サイドからの攻撃がキーになるのではないだろうか。

付け入るスキは十分

また、他のポジションに目を移しても、守備面には明確な課題がいくつも見て取れる。

言及すべき一つはセントラルミッドフィルダーの所だ。

ここはデ・ブライネとヴィツェルの二人で構成されるが、彼らは共に低い位置に引いてバイタルエリアのスペースを埋める守備を好まない。

逆にボールサイドに対して前向きのポジションを取るケースが多く、その結果として、3バックとの間に大きなスペースを空けるというシチュエーションも散見されるのだ。それ故に、日本の攻撃としては、デ・ブライネ、ヴィツェルの前でボールを触り、彼らのポジションを前に引き出し、その裏のスペースを他の選手が使うという形が有効的だろう。

同様に大きな問題を抱えているのが、3バック(5バック)である。

両ウィングバックの選手は基本的に「人につく」のではなく「コースを消す」ポジションを取ることが多い。欧州のチームがほとんどが採用している守備戦術のため珍しいものではないが、特に右サイドのムニエについてはこの傾向が強く、ポジショニングが曖昧なシーンが目立つ。ベルギーが劣勢に陥る際、右ウィングバックの裏を起点にされた攻撃を受けている場合が多いが、これも決して偶然ではないだろう。

左サイドバックの長友佑都や左サイドハーフ乾貴士は、味方がボールを持った際、ピッチの大外やDFラインの裏に抜け出してボールを受ける動きの質が高いが、彼らの特性はこのベルギー戦でも有効打となるはずだ。

セネガル戦でもこの攻撃が非常に効果的に機能していたので、柴崎やDFラインからの斜めのパスを左に打ち込み、そこで勝負。または、左を起点にしてそこから斜めのパスや動きでバイタルエリアを突く、ペナルティエリアで仕掛けるという戦法も面白いだろう。

そして、DFラインが抱える弱点はこれだけではない。

ヴァンサン・コンパニがこの試合から3バックの先発に復帰しそうな気配があり、これまでよりも安定感は増すだろうが、センターバックの両端とウィングバックの間が「一瞬の緩みを見せてしまう」という悪い癖まではすぐには拭えないはずだ。

ヤン・ヴェルトンゲン、トビー・アルデルヴァイレルトは共に優秀なセンターバックであるが、一人で複数を見るような芸当はそう容易くできない。つまり、守備時にはある程度両ウィングバックのサポートが必要になるわけだが、この二人は決して守備を得意としている選手ではないため、自身の裏を突かれた際の対応には脆さが見られる。

そこで、頭の回る彼らセンターバック陣がそこを埋めようとするわけだが、当然そうなれば彼らは大きく持ち場を離れることとなり、守備ブロックは崩壊状態。いわゆるセンターバックがペナルティエリア外に吊りだされた状態で、ベルギーの失点パターンの一つである。

ベルギーDF陣は対人戦も得意としているため、単独突破はやや困難かもしれないが、意識的にセンターバックとウィングバックの間を牽制する動き、サイドからそのスペースに入れる「斜め前のパス」を多用し、突くべき箇所であることは間違いない。諦めずに続ければ、きっとどこかで綻びが現れると筆者は踏んでいる。

最後に

詳細を触れなかった点も含め、日本が対ベルギーで狙うべき最重要ポイントを箇条書きにして記した。

.▲供璽襪旅兇畛弔蠅紡个靴討歪甲部が対応する

▲▲供璽襪低い位置からのドリブルに対しても警戒し、必要ならばファールでも止める

デ・ブライネとアザールのラインは特に注意し、可能な限り、パスコースを切るポジションを取る

ぅΕングバック裏を積極的に突き、サイドからの崩しを狙う

ゥ札鵐肇薀襯潺奪疋侫ルダーの二人をつり出し、DFラインの間を空け、そこに選手が顔を出す

Δ△┐謄▲供璽襪離汽ぅ匹嚢況發鯀箸瀘てて数的優位に、そこから斜めの動きとパスでバイタルエリア攻略を行う

Д札鵐拭璽丱奪とウィングバックの間で意識的に攻撃を仕掛け、ポジションをずらさせる

さあ、日本代表がベスト8という「未開の地」を切り開けるか否かの一戦はもうすぐだ。改めて言う。勝機は十分にある。