右サイドハーフでの先発が予想される原口。相手の弱みである左サイドの裏のスペースを持ち前のドリブルで突いていきたい。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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「赤い悪魔」と聞いてもどうもピンと来ないのは、ベルギーとは過去5試合を戦って一度も叩きのめされたことがないからだ。
 
 2000年と09年の対戦はキリンカップだったが、02年6月には日韓ワールドカップで対戦して2-2のドロー。ザックジャパン時代の13年11月、ブリュージュでの対戦は3-2の逆転勝利を収めている。負けたのは昨年11月、0-1で終わったブルージュでの対戦だけ。その試合も途中までエースのロメロ・ルカクを封じ込めていた。
 
 もっとも、今回ばかりはそんな相性の良さは、通用しないだろう。
 
 エデン・アザール、ケビン・デ・ブルイネ、アクセル・ヴィツェル、マルアン・フェライニ、ドリース・メルテンスら“黄金世代”が選手として最も脂の乗った年齢で迎える今大会で彼らは世界王者をその視界に捉えている。レギュラー陣だけでなく、サブにもアドナン・ヤヌザイ、ミチ・バチュアイ、トルガン・アザールら好タレントが控え、選手層も充実している。
 
 ところが、そんな強敵に対して本田圭佑は「弱点はいくつかピックアップしている」ときっぱりと言い切った。さらに「それを選手と共有し始めています」とも。
 
 果たしてその弱点とは何なのか。本田はそれについて明らかにしていないが、ベルギーが左サイドに弱みを抱えていることは確かだろう。
 
 左ウイングバックを務めるヤニック・カラスコは本来、ドリブルでの局面打開を得意とするアタッカー。代表チームでは左ウイングバックで新境地を開拓したが、それでもやはり左ウイングのようなプレーを見せる。
 
 パナマとの初戦では守備におけるポジショニングの悪さを覗かせていた。チュニジアとの2戦目は改善されたが、もともとプレーに波があるタイプ。日本戦でもポジショニングが甘い可能性がある。
 
 一方、3バックの左を務めるヤン・ヴェルトンゲンはパワー勝負に秀でた左利きのストッパー。左サイドバックを務めることもあるが、スピードやアジリティには問題がある。
 
 それゆえ、ヴィツェルを左ボランチとして起用してカバーしているのかもしれないが、ヴェルトンゲンの裏や中央のデドリック・ボヤタとの間のスペースはどうか――。ここに日本の金脈がある。
 
 ベルギーの左サイドとは、すなわち日本の右サイド。つまり、原口元気の持ち場である。日本代表ではハードワークや献身的なプレーが評価されているが、本来は推進力に溢れた突破力こそが武器。ベルギー戦こそ、本来の魅力を輝かせるゲームだろう。
 
 もちろん、原口自身は「普通にやっても勝てない相手。より規律良く、全員で、特別な試合をしたいと思う。個としての力というより、チームとしての力を出す試合。11人じゃなくて23人でそれを出せるようにしないと勝てないと思います」と語るように、単独突破だけにこだわる必要はない。酒井宏樹、香川真司と絡んで執拗に相手の左サイドを攻め続けたい。
 
 幸い原口はグループステージ最終戦のポーランド戦で休養を得てコンディションは万全だ。ベルギー攻略のキーマンとして、「日本の赤い悪魔」の血を引くアタッカーを挙げたい。
 
取材・文●飯尾篤史(サッカーライター)