「試合前に先発メンバーを確認したとき、私は思わず固まってしまった。もちろん、連戦が続き、選手の疲労などの理由はあったのだろう。決勝トーナメントを見据えた采配だったのかもしれない。それにしても、6人もの先発変更は危険すぎた」

 日本のポーランド戦後、ジョゼップ・グアルディオラも信頼を寄せるスペインの”慧眼(けいがん)”、ミケル・エチャリはそう言って、プランニングの問題を指摘している。

 エチャリは大会前から、ロシアW杯での日本の「サプライズ」を論理的に予想していた。結果はまさにそのとおりになっている。しかし、第3戦目に関しては「命拾い」と厳しく表現した。

 大胆というよりは無謀な選手交代で挑んだ西野ジャパンを、エチャリはどのようにスカウティングしたのだろうか?


ポーランド戦で長谷部誠に代わり先発した山口蛍。日本の中盤は安定を欠いた

「正直、選手のコンディションがわからないので、迂闊(うかつ)なことは言えない。しかし、6人の選手を変更することは、大きなリスクを伴う。西野朗監督としては、『GKを含めたディフェンスラインを維持することで十分』と考えたのかもしれない。

 しかし、私なら制止していた”賭け”だろう。

 システムを4-2-3-1から4-4-2に変更したことにも違和感があった。戦術的観点から、『過去2試合のポーランドが、3バックで両ワイドに強力な選手がいるだけに、2トップでプレスをかけ、ワイドにふたをする』という目論見(もくろみ)があったのは読み取れる。そのために、右サイドには守備的な酒井高徳を起用したのだろう。

 しかしこの日のポーランドは4-4-2だったわけで、その見込みは外れている」

 日本が用意した策が、戦いに挑んだときにはすでに破綻していたことを、エチャリは強調した。

「ポーランドは慎重で受け身の戦いだった。ロベルト・レバンドフスキにはいつものような鋭さがなかった。ラファウ・クルザワの左足だけが日本に脅威を与えていた。

 その結果、日本はボールを持ってプレーすることができていた。しかし、敵中深くまでは切り込めていない。ディフェンスラインの前で回すだけ。前半9分までで3回もボールを失うなど、危険な兆候も出ていた。

 コロンビア戦、セネガル戦はサイドが起点になっていたが、この日はコンビネーションがまったく使えていなかった。宇佐美貴史は攻撃も守備も、ほとんど効果的なプレーができなかった。また、酒井高徳はボールを受けても、失いすぎた。サイドで攻守の起点を作れなかった。

 そして、日本はポーランドにじわじわと攻め寄せられる。前半32分にはGK川島永嗣がカミル・グロシツキのシュートをセービング。ゴールライン上で際どかった。

 日本は攻守が明らかにちぐはぐだった。中盤が安定しなかったことが大きいだろう。長谷部誠の代わりに抜擢された山口蛍は、ボールに対するアクションが早すぎた。目の前のボールにつられてしまい、相手にバックラインの前のスペースを与えていた。我慢強く待ち受け、敵を引き込むべきところで、簡単にラインを突破されるパスを入れられていた。その危険なゾーンでボールを持たれたことで、日本は後手を踏まざるを得なかった」

 前半を終えて0-0というスコアも、「見ていられなかった」とエチャリは振り返る。

「日本の中盤の不安定さは目を覆うばかりで、後半はカウンターの危機を迎えている。川島が好判断で前に出て、事前に防いだが、チームとしてのプレーは破綻していたに近い。

 山口を責めるのは酷だが、ビルドアップでもプレー判断が遅すぎた。結果、何度もボールを失っている。そして背後を突かれ続け、不必要なファウルでFKを与えてしまった。

 59分、クルザワが蹴ったFKに対し、ゴール前でヤン・ベドナレクをフリーにしてしまった。酒井高徳と大迫勇也は棒立ち。必然の失点だった。

 その後も、山口は気持ちばかりが急ぎ、ボールホルダーに食いついては餌食にされている。柴崎岳との距離が遠すぎたり、近すぎたりで、コンビという感覚が見えなかった。セネガル戦とは一転、中盤が火薬庫になっていた。

 その混乱がチーム全体を覆う。終盤、カウンターから長友佑都が背後を取られ、グロシツキからレバンドフスキに絶好のクロスが入っている。吉田麻也は一歩遅れ、失点してもおかしくないシーンだったが、レバンドフスキのシュートはバーの上に外れた。日本はプレーのバランスを著しく欠いていた」

 エチャリはそう嘆いた。しかし日本は82分に長谷部を投入し、4-1-4-1にしたことで、チームは落ち着きを取り戻したという。

「長谷部はバックラインと中盤の間にポジションを取り、味方に落ち着きを与えている。ポーランドもリスクをかけたくない様子で、試合は膠着(こうちゃく)した。ベンチはコロンビア対セネガルの状況を知っていて、スコアをキープする選択を取ったのだろう」

 日本は0-1で敗れたが、ベスト16に勝ち進んだ。ベルギー戦に向けて、エチャリは試合をこう総括している。

「6人の選手変更は最後まで響いた。中盤が安定せず、酒井高徳、宇佐美のサイドも機能しなかった。なにより、チームとして球際での戦いで強度を見せられなかった。その結果、ボールを失い、カウンターも浴び続けた。非常に危ない試合だった。やはり、長谷部、香川真司もしくは本田圭佑、原口元気、乾貴士には代わりがいない。それが明らかになった試合と言えるだろう。

 ただ、グループリーグ突破という結果は賞賛に値する。ベルギー戦には、ポーランド戦に出場しなかった主力が万全の状態で迎えることを祈る。決して悲観的にならず、自信を持って、戦いに挑むことだ」
(ミケル・エチャリの日本代表の全選手の個別評価はこちら>)

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